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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1010/1101

重なり、ぶれる。⑥

「わあっ……!」


 それから、リアはヴェルジアに案内され、要望通りの景色の良い場所に訪れていた。

 そこは色とりどりの花が咲き乱れる花畑で、王城の庭に負けず劣らずの素晴らしい景色の場所だった。


「リア、こっち。歩き疲れたでしょ、少し座ろう」

「あ……はい!」


 ヴェルジアが軽くリアの手を引き、リアを座らせる。

 そして、自分もその隣に腰掛けると、ゆっくりと息を吐き出す。

 リアがそれを見て、心配そうにヴェルジアを見上げながら首を傾げた。


「ヴェルジア様……? お疲れですか……? や、やっぱり、お忙しい中私のために働かせてしまったんじゃ……」

「ああ、違う違う。そんなんじゃないから……別に疲れてるわけでもないよ。ただ……ちょっと、悩んでてね」

「悩み……ですか? 私で良ければお聞きしますよ……?」

「え、いや……あ〜……」

「? ……私には話しづらいことなのですか……? ……あっ……も、もしかして、私がヴェルジア様のことを困らせてしまっていたり、とか……」

「リアは悪くないから。リアは全く悪くないんだよ、本当に……」


 ヴェルジアが苦い顔をしながらそう言うと、リアが首を傾げてから表情を曇らせた。

 リアが悪いわけではない、とは言われているものの、やはり自分がヴェルジアを悩ませてしまっていることは事実で、申し訳なく思ってしまっているらしい。


「……申し訳なく思わないで。本当にリアは何も悪くないんだから。これは僕の問題だから……」

「それなら……お手伝いできることはありませんか? 私、ヴェルジア様のお役に立ちたいです」

「……無い、かなぁ。……あ、でも、折角の申し出だし……別の悩み事もあるから、ちょっと意見をくれない?」

「もちろんです! それで、その悩み事というのは……?」

「ちょっと……とある国で内乱が起きまくってるんだけど。その規模が、ちょっと流石にね……禁忌にまで手を出しそうな勢いだから、神託とか啓示とかで、少し介入しないといけなさそうなんだけど……どこまで介入するか、どんなことを伝えるか、悩んでて。……如何せん権力に狂って起きてるから……創世神として信仰されている僕でも、ちゃんと話を聞いてくれるかどうか……直接行くのはやりすぎだろうし……」


 ヴェルジアの悩みを聞き、真剣に考え込んでいたリアが最後の一言を聞いてピタッと固まった。

 そして、軽く頬を染めると、おずおずとヴェルジアを見上げて尋ねる。


「……あの……ヴェルジア様。悩み事とは関係が無くて、申し訳ないのですが……」

「うん……?」

「……私のところにいつも直接来てくださるのは……特別、ですか? ……その、お姉さまのことがあるからとは、存じているのですが……」

「特別……ではあるかな。僕は君のために何かを捻じ曲げることはできないけど……それができなくても、友達とか……うーん、違うなぁ。……姪みたいな感じかな……? とにかく、普通に楽しく会話してるからね。僕は人間相手だとあんまりそういうことしないし。というかたぶんリアくらいかな、そういうの。あと一応リル」

「……えへ……ヴェルジア様の、特別……」

「……反応が前と違って未だにやりづらい……っ。これ絶対……」


 手のひらで両頬を包んでてれてれもじもじと身体を揺らしているリアを横目で見ながらヴェルジアが頭を抱えた。

 ディライトの未来視が現実になりつつあるこの現状に、ヴェルジアは頭を悩ませているらしい。

 リアがこうなった原因、つまりリアが恋に落ちた原因はやはり一年前の疲れ果てたリアへの対応だろう。

 ヴェルジアもそれがわかっているので、悪いのは自分でリアは微塵も悪くないのだが――


「こうはならないでほしかった、なぁ」

「えへ……特別……特別……」


 とてもとても悩んでいるので、ヴェルジアは一言だけそう呟くと息を吐いた。

 真横でくねくねしたりわかりやすく照れたりするのに、ヴェルジアに自分の感情はバレていないと思っている辺りは可愛らしいとは思うが、やはりヴェルジアはリアをリルと重ねているので、そんな状態で結婚などはできない。

 リアへの好意が無いとも言えない状態で、それでも断らなければならないかもしれない未来を思い、ヴェルジアが深い溜息を吐きながらぽんとリアの頭を撫でた。


「……はっ。ご、ごめんなさい、えっと、内乱が起きてる国への対処でしたよね……! 誰に神託や啓示を下すかは決まっているのですか?」

「誰も誰の話も聞きそうにないから、直接になるかな」

「となるとやはり、先ずは少しでも冷静な方からですよね。内容は……脅してしまうのはどうでしょう? このまま内乱が続けば、この国ごと滅びる……とか。この場合、愛国心が強い方が望ましいですね」

「愛国心……愛国心かぁ。……いるかな……」

「でしたらいっそ、やめないとこの国を滅ぼすぞ……とか? 信仰心が強ければヴェルジア様がどうするかを指定するというのも可能ですね」

「……ああ、そうか。指定……なるほど……はぁ、もう少しちゃんと調べないといけないなぁ。ありがとう、凄く参考になるよ」

「! ……えへ、嬉しいです」


 頬を染めてはにかむリアに目を細め、ヴェルジアが静かにその頭を撫でた。

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