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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1003/1101

ifストーリー 楽しい学園生活③

 カリカリと、二人がペンをノートに走らせている。

 そして、常に優秀で特に今勉強するべきこともない二人は、ニコニコと淡い笑みを湛えてそれぞれの妹が勉強する様子を眺めていた。


「お、お姉さま……これ、解き方がよくわかりません……」

「……それ? うーん……と、公式が間違っているわね」

「えっ」

「間違えて覚えてしまったのかしら? 正しいのはこうで……計算の仕方は……」

「ふ、ふむふむ……? えっと……あ、できた……?」

「……うん。合っているわ。他に不安なところとか、できていないところは?」


 優しい表情で、リウが尋ねる。

 それにリアは少し考えてから質問をして――ふと顔を上げたレイシェが、じっとそれを眺めていた。

 その少しだけ羨ましそうな表情にレインは優しく髪を撫でてやると、微笑みながら尋ねる。


「レイシェ。不安なところは?」

「あっ、お兄様……えっと、それは……」

「無い? じゃあ……苦手なところとか、どうかな。予習の手伝いでもいいよ? どれがいい?」

「……あ、あの、お兄様。どうして急に……?」

「ん? だって、羨ましそうにしてたから……あんな風に教わりたいんでしょ?」

「……わたくし、隠していたつもりなのですけれど……」

「バレバレだよ。だからほら、早く教わりたいこと言ってごらん。大抵のことは教えられるから」

「……で、では……お兄様がリウをストーカーしなくなる方法を」

「どうにかして僕とリウをくっつけたらやらなくなるんじゃない? 冗談言ってないで、羨ましいなら何か言って。じゃないと適当に習ってないことでも教え始めるよ」

「それはそれで、ありがたくもあるのですけれど。もう、お兄様ったら……少しくらい我慢してくれても……いえ、いいですわ。でしたら……予習の手伝いを。要点を纏めるのが上手なお兄様のご指導があれば、きっと捗りますわ!」


 ひそひそとレイシェがストーカーをやめるよう試しに言ってみたが、全くやめそうにないので諦めてレインに予習の手伝いを頼んだ。

 レイシェは別に成績は落ちていないが、いつも一人でしている予習も、レインに手伝いを頼めばもっと捗る。

 来年には高等部に進学するということでレイシェも甘えづらくなってきていたので、そういう面も含めて今回の勉強会はレイシェにとっても有意義だった。

 純粋に、友人や大好きな人達と勉強をするのは楽しいので、定期的に開催したいと思うほどである。


「……ねぇ、リウ」

「ん……なに?」


 レイシェの予習は順調で、頻繁に口を出す必要もないのでレインがタイミングを見計らってリウに声を掛けた。

 リウはにこやかに微笑み、首を傾げて続く言葉を待つ。

 にこやかだが、見る者が見れば警戒心がたっぷりと籠もった表情にレインは苦笑いしつつ、何気なく尋ねた。


「リウだけ遅れてきたけど、何の用事があったの? 確かに、事前に遅れるとはちゃんと聞いてたけど……それでも珍しいよね」

「……ああ……ええと。……その……」

「リウ? なに、どうしたの」

「……ヴェルジアと、話を……」

「げほっ!?」


 リウの隣でリアが噎せた。

 驚きのあまり身体を丸めて咳き込むリアの背中を擦り、リウが気まずそうに目を逸らす。

 言い淀んだのは、リアがこうなるとわかっていたからである。

 ヴェルジアはリアと付き合っているが、成人した大人。

 そんな人物がまだ中学生のリアと付き合っているとなると、リウとて心配になる。

 というわけで、リウもちょくちょくヴェルジアと会って話をしているのである。

 あちらも少なからず負い目はあるようで、よく会って詳しく話をしてくれるのだ。


「……リアがお付き合いしている方のお話……興味がありますわ。多少は聞いていますけれど」

「あ、ぅ……ど、どうして、お姉さまがヴェルジアさんとお話を……? 安心してもらうためによく話をしていることは知っていますけど……まさか二人きりじゃないですよね……?」

「? 今日はお父様とお母様には用事があるから……」

「ふ、二人きりで会ったんですか!? もうっ、お姉さまはほんっとうに大事なところが抜けてるんですから! ヴェルジアさんにも、二人きりにはならないように言ったのに!」


 どういうことですか、とリアが問い詰めてくるので、リウは慌てながら弁明をしようと口を開きかける。

 と、その時、パッと横から手が伸びてきてリウの手首を掴んだ。

 痛くはないが、咄嗟に振り払えないほどには強い力だったのでリウがビクッと肩を震わせる。


「……男と会ったの? 二人きりで?」

「えっと……? だ、ダメだった……?」

「ダメに決まってるでしょ。どうかしてるの……? 防犯意識どこやったの……」

「で、でも……ヴェルジアはいい人よ? だから、お父様もお母様も、定期的に話を聞かせてもらっているだけでお付き合いに反対したりはしてないし……」

「人は選んでるのかもしれないけど、そういう問題じゃないよ……そもそもご令嬢なんだから、年の離れた異性と二人っきりって特に不味いでしょ。僕なら同級生だからで誤魔化せるかもしれないけど……」

「ご、ごめんなさい……?」

「全然響いてないし。はぁ……」


 レインが深い溜息を吐き、ぺしっと軽く叱るようにリウの頭を叩いた。

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