怨 強制退場
「怨霊とかを自発的に成仏とかは、させらないんですか?」
「ええ、私はまだ修行の身ですから。それに……」
恨めしい
憎らしい
妬ましい
呪わしい
私達は死者だ。
とっくにこの世から退場している。
それなのに、まだ地上に存在していた。
それは、念が強すぎるからだという。
生きているうちにあった出来事が影響して、こうなってしまったのだ。
時折私達の前にやってくる人間は、そんな私達を消そうとする。
だけど、私達はそれに抵抗した。
死んだこともない人間に、死んでも忘れられない思いを、感情を、この恨みつらみを消せると思うな。
同じ目にあって、同じ行動をとってからやってみろ。
のりこえて、たちむかってから説教してみろ。
できないだろう。
思いやりを説くのなら、私達を思いやって行動してみろ。
優しさを説くなら、私達をそっとして放っておいてくれ。
できないだろう。
できやしないだろう。
所詮他人。
家族でも友人でもない人間のためには、できないだろう。
お金のために働いている守銭奴め。
だから私達はこれからも、ここで呪いの言葉を吐き続けるのだ。
この感情を、この胸にとどめ続けるのだ。
ああ。
恨めしい
憎らしい
妬ましい
呪わしい
「言葉を語り掛けても、聞いてはくれない。前提条件を、クリアできないので」
「なら今回も結局無理やり、祓う事になるんですね」