メグではありません
「御館様、無茶が過ぎます。我等が間に合わなければ如何するおつもりで?」
「そう目を三角にして怒るな。噂を流せば必ず間諜が俺の居場所をお前に知らせると確信していた」
レオが見るからに威厳が有って体格の良い中年男性に怒られている。やっぱりレオって本当は余り偉くないんじゃない。
それならそれで全然構わないんだけど。
もしかしたら本当に偉い人なのかと思って心配していた事が、馬鹿みたい。
義勇軍が領主様の軍勢に囲まれて、ドラゴンが降りて来た後、同じ様に人を乗せたドラゴンが次々と降りて来て義勇軍を守る様に囲んだ。
全方向に一斉に吹かれたドラゴンの炎に為す術が無い領主様の軍勢は慌てて城門に引き返そうとするけど、城門の前にもドラゴンが立ち塞がっていた。
逃げ場を失った領主様の軍勢はその後、散り散りに逃げようとしたものの、いつの間にかレオの味方の軍勢に囲まれてて逃げ場は無かった。
領主様は義勇軍を取り囲んだつもりでも、実はその更に外側をレオの味方に囲まれていたのだ。
領主様は呆気なく捕らわれた。
連行されて行く時にレオに命乞いをしていたけど、そんなに偉くないレオに命乞いしても仕方ないのに。
△△△△△
私達はどういう訳か案内されるがままに城門の上に立ち、その大軍勢を見下ろしているけど、凄い人! 何人居るのだろう?
1番後ろの人が何処に居るのかが見えない!
「何人で来た?」
「取り敢えず第1陣として20万です。ここ居りますのは10万で、残りの10万は既に先に進んでおります」
10万人?
この人達ってそんなに居るの?
「ジェームスはどうした?」
「第2陣、10万人を率いて向かっています。今頃はここの領主のジョンソンの城を落としている筈ですので、直に到着するかと」
10万人!
如何に領主様のお城でも、そんな大軍で攻められたら一溜まりも無いだろう。
途轍もない人数だけどこんな話を平気な顔してしていると、今度はレオが本当に偉そうに感じる。
「御館様、先程から気になっていましたが、そちらのご婦人は?」
「よくぞ聞いてくれた。俺の妻になるメグだ!」
「なんと!」
偉そうな中年男性は目を大きくして驚いている。
「俺の命の恩人にして、生まれて初めて心の底から惚れ込んだ女だ」
「左様で!」
目に涙まで浮かべてとても嬉しそうだ。この2人はどういう関係なんだろう?
レオの方が立場は上みたいな話し方だし、でもこの中年男性もオーラって言うのかしら、それなりに偉そうな雰囲気を醸し出している。
「農家の生まれだが、見ての通り美しく気高く清廉な心の持ち主だ。それに舅殿は義勇軍の司令官だ」
「義勇軍の司令官は確か、アプリコット殿と聞いております。アプリコット殿のご息女ですか?」
あの、それはコードネームですけど。
訂正の時間も貰えずにその方は私の前に跪く。
「軍を預かりますアンドリュー・クラプトンにございます。お見知り置き下さい」
もっと荒々しい方かと思ったけど、礼儀正しいわ!
「メグ・アプリコット様。我等家臣一同、メグ様のお輿入れはこの上ない喜びにございます」
彼が最敬礼すれば、果てが見えない大軍勢が一斉に同様の最敬礼をする。
それは正に圧巻!
でも肝心な事が間違っています。
私の名前はマーガレット・ニクソン。
メグ・アプリコットではありません!
ここまでお読み頂きまして、ありがとうございます。
都合により半月程度、休んで立て直します。
26話程度で完結させます。