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目指せ大願成就!  作者: でがらし
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素直ではありません

 義勇軍を募った所で参加する者など誰もいなかった。

 若い殿方は戦に駆り出されているし、若くなくても男手は家族を養う為に今の生活を守る事に精一杯だ。

 辛うじて村で天涯孤独のお爺ちゃんが4人ばかり参加してくれた。

 これで上手く事が運ぶとは到底思えないけど。



「領主様に目を付けられたら如何するんだ?」


 村の皆は異口同音に領主様を怖がっている。

 中には、真正面から私たちを批判するおばさんもいた。

「迷惑だから早く出て行って!」と。


 出発の準備をするレオの表情を伺ってみると、楽しそうに笑っている?


「大事なのはゼロではなかった事だ」


 レオは強がっているけど、本当は不安よね。

 やっぱり行って欲しくないけど、もう後戻りも出来ない。

 

「舅殿、便宜上ニクソンではなくコードネームを名乗ってみては?」


「よく分からんがカッコいいな!何か良い名でも?」


 コードネーム?意外にもお父さんは変な事を切り出されて面白がっている。


「アプリコットは如何で?」


「アプリコット?」


 それって杏よね?

 何故に杏?


「俺はメグの作る杏の菓子が好きだからだ!」


「それが由来なの?」


 しんみりした気持ちで、出発の準備をするレオを見守っていたけど、思わず声が出ちゃった!


「メグの作る菓子は世界一旨い!」


 そんな、褒めすぎよ!

 照れる!

 レオに言われると嬉しいけど。


「そして、それを作るメグが大好きだ!」


 この場を借りて言わないでよ!

 もう、恥ずかしい!



△△△△△



 全員集合した義勇兵を前にレオが方針を伝える。


「最高の戦い方は、戦わずして勝つ事だ!」


 えっ、そうなの?


「して婿殿、本当に上手くいくのか?」


 婿殿だなんてお父さん、さり気なく認めてくれたのね!


「大事なのは情報だ。舅殿以外の4人はそれぞれ東西南北に進み噂を広めてくれ。それぞれコードネームは、ノース、サウス、イースト、ウエストだ」


 コードネームが方向なのね。でもお父さんだけアプリコット。


「噂ってどんな噂だ?」


 コードネームがノースのお爺さんが聞いてきた。それは大事だからね。


「匿われていたイブリーガ軍の総大将が立ち上がった義勇軍と進軍している。義勇兵は数を増して村々を次々と領主の圧政から解放していると」


 それで義勇兵を増やす作戦ね!


「ところでイブリーガ軍の総大将ってあんたか?」

「それって偉いのか?」


 今度はイーストとウエストが疑問をぶつける。

 私もレオの家の事はよく知らない。

 国の8割を収めるなんて冗談ほともかく、それなりの家らしいけどお母さんが早く亡くなって、お父さんと後妻さんの間に弟と妹が居るとは聞いた。


「イブリーガを知らんのか?」


 その場にいたレオと私以外の全員が同時に頷く。

 尤も私も詳しくは知らない。

 仮に本当にその名が轟いていたとしても、こんな農村ではそんな事を知る手立てが無い。


「まあいい、その内に判る」


 私はレオが何者でも付いて行くと決めている。

 これは何があっても揺らぐ事は無い。


「必ず迎えに来る。どうか無事に待っていてくれ!」


 私達は強く抱き合った。

 私が顔を埋めるべきレオの胸にはもう温かい感触は無く、冷たく硬い鎧の感触しか無かった。


「いや」


 つい口から漏れてしまった。


「メグ?」


 レオは優しく私の顔を覗き込んで来るけど、泣きそうな顔なんて見られたくない!


「行かないで」


「メグ」


「じゃなかったら私も連れて行って!足手纏いにはならない!」


 今の私はどんな顔しているのだろう?

 レオにはなるべく綺麗な私を見せたかったのに、泣きながら我が儘を言って困らせる嫌な女になっちゃった。


「これから敵の中に行くんだぞ!」


「私達は何が有ってもずっと一緒でしょ?」


 レオは何かを言いたそうだけど、私は構わずに自分の想いをレオにぶつける。


「レオと離れる事を考えただけで胸が張り裂けそうなの!」


 去り際に本当の気持ちなんか伝えたらレオが困る。そんな事は判っている。

 判っているけど……。

 困る事が判っていて言うなんて、まだ正式じゃないけどこれじゃ奥さん失格だね。


「私を離さないって言ったじゃな」


 言い終わらない内にレオに強く抱きしめられて続きが言えなくなる。


「そうだ!何人たりとも俺とメグを分かつ事など出来るものか!」


 覚悟を決めた様に言い放ってくれたレオの言葉の前に私は声が出なくなっている。頷く事が精一杯。


「ずっと一緒だ!そうだろ?」


 だから、聞かれても声が出ないのよ。


「舅殿、メグも連れて行くぞ。かすり傷一つ付けさせるものか!」


「レオ!」


「死が俺達を分かつ迄、いや死んでも一緒だ。その身は滅びようと生まれ変わってまた結ばれる。俺達は永遠に離れない!」


「そうよ!レオ、直ぐに支度をするわ!」


 私は狭い家の中を小走りで自室に向かい、支度を始めた。

 レオとのこれからを想像しながら。


 レオは隊長っぽいから地位もそれなりね。私で本当に大丈夫かしら?

 私が農家の娘だから、使用人や部下の人にバカにされないかしら?

 不安なのか、嫌な事しか頭に浮かんでこない。


 そうだ、楽しい事を想像しよう!

 子供は5人、少なくても3人は欲しいかな。孫は10人だもんね。

 あっ!でも、子供を産むその前には………。



 まぁそれは置いといて、それにしてもレオったら死ぬまで一緒、死んでも生まれ変わって一緒だなんて。

 生まれ変わり?

 生まれ変わっても?


 どうしたんだろ?

 なんだか気分が変。

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