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感情の毒  作者: 藍乃祐紀
6/6

答え

「どうしたんですか……?」

優は呼びかける。

だが美月は反応しない。



「ふざけてるんですか……?さすがにタチの悪いイタズラですよ……?」

体を揺すってみるがやはり反応はない。



「ねえ‼︎起きてくださいよ‼︎」

段々力が強くなっていく。

だがそれでも、美月は目を閉じたままだ。


「ねえ……美月さん…………」

あのけたたましいアラームが鳴り始めた。



「うるさい‼︎‼︎‼︎」

透き通っていたはずのものが、少しずつ濁っていく。



美月の顔を見つめる。



血は吐いていない。



苦しんでもいなかった。



その表情は静かに眠っているような、安らかな顔をしていた。



『落ち着くんだ、優くん』

突然スピーカーの男の声が聞こえた。



『どうやら、我々は大きな間違いをしていたらしい』

優は黙って聞く。



『君の体から毒が出る条件は、負の感情が高まることではなかった』



『感情が高まることで毒が発生するんだ』




は?




それってつまり……




『つまり、喜びなどといった正の感情でも毒は発生するということだ』




なんだよ、それ




『ただ違うのは、負の感情によって生まれた毒は相手を苦しめて死なせるのに対し、正の感情によって生まれた毒は相手に苦しみを与える事なく死なせるようだ』




ここで初めて、優は男に質問した。

「なんで、そこまで分かってて何も言わなかったんですか……」




『分かっていたんじゃない、今推測したんだ、私達もこんなことになるとは思わなかったんだ』




『なんで、こんなことに……どうして……」




また、優の中は色んな感情でぐちゃぐちゃになる。




そして、やがて、1つになった。






「もう、どうでもいいや」






感情が混ざり合って生まれたのは無関心だった。






全てが、どうでも良くなった





だがこれによって毒の排出は収まった。




そして、ガスマスクをつけ武装した人達が入ってくる。




ああ、3年前と同じだ。




そして、また意識を失った。













数日後

「じゃあ、同意したということでいいんだね?」

スピーカーの男、檜山に確認される。

優は黙って頷いた。



「分かった、じゃあ準備ができたら行うとするよ」



そう言われると、優はさっさと出ていこうする。



「彼女の死は、君のせいじゃない」

檜山が背中を向けて言う。



優は足を止め

「じゃあ、誰のせいなんですか」

そう言うと、部屋に戻っていった。





こうして俺は、記憶と感情を失った。













目が覚める。

なんだか長い夢を見ていたようだ。



「おはよう」

白衣を着た男の人が話しかけてきた。

「おはようございます」



「君はなんて名前なのかな?」



「僕の……名前……」

思い出せない。

能に靄がかかっているようだ。



「どうやら、君は記憶喪失らしい」



「そうなの?えーっと……」



「失礼、私は檜山っていうんだ、よろしくね」



なんだか優しそうな人だな。

そう感じた。



「けど記憶のことなら大丈夫、これに君のことが載っているからね」

そう言って手に持っていたファイルをめくる。



「えーっと、君の名前は……」









「藤波光樹くんっていうんだ、いい名前だね」








藤波光樹



確かに、そんな名前のような気がしてきた。



「ところで、僕のお父さんとお母さんは?」


そう言うと、檜山先生は悲しそうな顔をする。


「残念だけど、君達は事故に巻き込まれたんだ、それで君はなんとか助かったけど、お父さんとお母さんは死んでしまったんだよ」



そうなんだ

お父さんとお母さんは死んじゃったのか。



「じゃあ、退院したら僕はどうすればいいんですか」



「そしたら光樹くんは私と暮らしてもらうよ」



この人と暮らすのか。


まあ、いいか。



「そうですか、わかりました」



こうして藤波光樹は檜山先生と暮らすこととなった。






けどなんだか






忘れているような






まあ







もう、いいか


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