表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/20

未来世界のクローン戦士物語 ☆第四話 悠としては☆


☆その①☆


 月曜日の学校の、一年B組の教室。

 男子は学ランで、女子はブレザーの学校だ。

 転入してきた悠は、HRで、小太りな中年男性教師に紹介をされる。

「え~、転入生を紹介しよう。さ、自己紹介を」

 初対面ではないどころか、悠の認識ではつい先日まで担任だった先生に、自己紹介を促される。

「……水鏡悠です。よろしくお願いします…」

 つい一昨日までのクラスメイトに自己紹介をするのは、なんとも無意味に感じるし、あらためて恥ずかしい気もする。

 視線を落として自己紹介を終えると、教室をチラと見渡した。

 生徒たちはみな、転入生に珍しげな視線を向けている。

(ああ、赤坂が呆けた顔で窓の外を眺めてる…。おおかた、校庭の女子にでも見惚れているんだ。青山は教科書に夢中なフリして、いつも通りタブレットのマンガを読んでるな…)

 悠はさりげなく、そして勇気を必要にしながら、三つ編みの美優と、呑気なメガネの自分を見る。

(…………何ボンヤリしてるんだか、僕は…)

 不意に自分と目が合うと、なんだか不思議な気まずさを感じた。

 自分が同じ人物であると、見透かされるような気がしてくる。

(…いやいや、僕はそんなに勘が鋭くないでしょ…)

 情けなくも、自分のそういうトコロは、よく知ってる少年だ。

 担任の先生に促されて、席へと移動。

「では水鏡くん、えっと…後ろの席が空いてるね。あそこを使って」

「は、はい」

 静かに席へと向かう悠に、女子たちがなんだかソワソワしているようだ。

「なんか、ちょっと格好良いかも?」

「ちょっと真中くんに似てる? でも断然、良い感じだよね」

(僕の評価…)

 女子たちの小声が聞こえてきて、ちょっと恥ずかしいのと、始が話題になるなんて事あるんだなとか、不思議にドキドキした。

 指定されのは、一番後ろの廊下側の席だ。


☆その②☆


 悠は、指定された席へと向かい、静かに着席。

 隣の女子が、親切に声をかけてきてくれた。

「教科書ある? 良かったら、見せてあげましょうか?」

「あ、ど、どうも…」

(ガハハ笑いの春山さんが、ちょっとおしとやかっぽいぞ)

 親切と一緒に、アプローチの感じもした。

 古文の授業が始まって、コクバンという名のモニターに、例文が書かれる。

 若い女性教師が、生徒たちを見回して、転入生を指した。

「それじゃあ ここの現代語訳は…うん、水鏡くん、解るかしら?」

 転入生の学力を知っておきたいのだろう。

 実は古文は、割と得意な少年でもあった。

 なのに。

「は、はいっ–えっと…えっと…」

(ここ、まだ習ってないぞ…?)

 どうやら、悠が誕生する三か月の間の授業範囲らしかった。

 答えに詰まる悠に、女性教師は笑顔で納得。

「古文は苦手かしら? それじゃあ…真中くん」

「はい」

 指された始が立ち上がり、スラスラと答える。

「そこは『まるで紅葉のように赤々と』です」

「はい、正解です」

 笑顔の始と、ちょっと落ち込む悠が、同時に着席をする。

(と、得意な古文で偽物に負けるなんて…っ! これも、三か月の差なのか?)

 始に対して悔しい想いが募る、悠であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ