未来世界のクローン戦士物語 ☆第二話 世界の近況☆
☆その①☆
コーラ大好きらしいハチさんが、明るく話す。
「まずキミはさっき話した通り、真中始くんの調整されたカスタムクローン体、水鏡悠だ。キミを作った我々組織は…まぁ国際防衛組織直轄の日本支部だと、認識してくれ。キミを作った理由は、キミが必要だったからだ。キミたち若者の間でも、都市伝説程度では知られているだろうが…この地球は今っ、侵略的宇宙人による つまらん&反吐が出るような遊戯がっ、行われてしまっているのだああぁぁぁっ!」
ハチさんは、段々とテンションが上がっていた。
悠は、素直に答える。
「……たしかに僕は小柄ですけど、小学生ではないんです」
「オーケィ、よく分かってるゼ。キミの事は、キミ以上にな」
オジさんが無理に若者ぶってるような違和感を感じさせつつ、サングラス越しのハチさんの眼差しは、真剣だった。
「都市伝説で囁かれている怪物は、実在するのだ。それが正体不明の地球外知的生命体による、つまらん&反吐が出るような遊戯の正体ってワケさ!」
今から二十年ほど前、世界中で謎の失踪事件が多発した時期があった。
失踪したのは、老若男女どころか犬猫も問わず。
そして、失踪者は誰一人として発見されず。
半年ほど続いたそんな失踪事件が進展を見せたのは、各国に突如出現した、怪物たちと軍隊との戦闘だった。
アメリカやロシアやフランス、ギニアやニューギニアやパプアニューギニアやトンガ王国などなど。
日本も、一地方にも出現した怪物一体を相手に、数十部隊もの国防軍が奮闘。
三日間続いた戦闘によって、その地方都市は壊滅。
国防隊員たちは百名以上の犠牲を出し、そして残されたのは、肉食獣が人間型に変化したような、怪物の死体。
しかも怪物の死と同時に、死体の傍らへと転送されるように出現したのは、行方不明の日本人青年だった。
ハチさんは、わざと明るいっぽく話す。
「国連でもトップシークレット&最重要課題として取り上げられて、その後、各国であらゆる探索をした結果、なんと月の裏側に、地球外知的生命体の基地を発見してしまったのだ!」
☆その②☆
「そんな事–あ、でもたしか…」
悠は、ボンヤリとだけど思い出す。
「…歴史の授業で習うとかじゃなくて、都市伝説的な感じで、ネットで見た事があったっけ…行方不明事件と、その後の怪物目撃談って…それっと、つまり…」
「そうだ。噂話なんかじゃなく、れっきとした現実だったんだなコレが」
ハチさんは、ニっと笑いながら、やはり目が真剣だった。
十五年ほど前、密かに結成された人類初の国連宇宙軍が、月の裏側にある宇宙人基地へと進軍を開始。
宇宙軍は、各国の各種攻撃衛星群を前衛として、数基の指揮官ロケットと、宇宙服と各種特別ライフルで武装した兵士たちを乗せた、数十機のコンテナ船という攻勢。
月面裏側にそびえる宇宙人の基地は、面積が約二百平方キロメートル、熱さコンマ一ミリの、ヒラヒラとはためく不定形な白い物体。
月面にて四日間もの戦闘の末、宇宙人側にほんの僅かな損害を与えたのみで、人類の宇宙軍は壊滅。
勝者である宇宙人から、一方的なメッセージを受け取る恰好となった。
聞いたことのない多種多様な未知の言語は、地球外知的生命体たちが使用していた言語だった。
ハチさんは続ける。
「国連宇宙軍の通信を傍受していたらしく、メッセージには我々にも理解可能な言語も含まれていた。その言い草はまあ『我々は実験をしている。邪魔はさせない。実験が終了したら君たちの惑星兼から去る』だとさ!」
ヤレヤレポーズだけど、やっぱり目は真剣だ。
「連中の実験とやらが何なのかは解らんが、まあ件の怪物だろうと結論されたわけだ。だが我々地球人類も、黙って実験材料にされてるわけにもいかんだろ。気持ち悪いし、だいいち胸糞も悪い。で、月の裏側での戦闘中に撃破した宇宙人側の攻撃兵器やテクノロジーを入手&解析&取得したってワケだ。ここまではOK?」
「え、ええまぁ…とにかく、二十年ほど前にナゾの宇宙人に月を乗っ取られて、その宇宙人が人類を誘拐して怪物化していて、戦いを挑んだ国連宇宙軍は負けて、でもテクノロジーのいくつかはモノにした…って事ですよね」
ハチさんはウンウンと笑顔で頷き、その瞳は正直に喜んでいた。




