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男は、それでも罪を重ねてく。
森で目が覚めた男は30代前半で決して綺麗な顔つきではない。それは新しい世界でも変わりはなかった。
木綿製の囚人服に短く剃られた頭、背丈はそれほどでもないが死刑執行までの長い獄中生活により体つきはしっかりとしていた。
一見して死刑執行前となんら代わり映えしないものであったが唯一変わったことといえば目である。
この世界に降り立つ前、特別な目が与えられた。
それは見た者が裁かれるべきか否かを見通す《裁定者の目》というものである。
この世界には自分と同じ人間、そしてエルフや獣人、魔族などの亜人と呼ばれる種族が存在する。
この目に反応するのはそういったとりわけヒトに近しい者たちであり、自然の生物に目は反応しない。
そして男が生きる条件、殺人を続けることとは《約20日以内に一人、悪と判断が下った者をこの世から葬り続ける》ということであった。
だが男には日にちなどどうでもよかった。
名もなき殺人鬼はただ目に映る悪を殺すことにのみ執念を燃やしていた。