Report78: 毒巣
潜入調査はどうやら終わりらしかった。結局サムチャイは尻尾を出さなかった。もしこの男が真犯人なら……相当の手練れだ。
カメコウに策があるという事で、数日後、俺達はヤワラートの事務所に集合していた。
「臓器や人間の肉を売買しているサイトを、デュ……見つけたよぉ~」
カメコウがダークウェブに潜っていた所、サイトを見つけたらしい。
医学部の失踪事件との関与は現時点で不明だが。陽気なテンションでエグイ事を言われても、リアクションに困るな。
俺達はパソコンの画面を皆で食い入るように見つめた。そこには無数の商品が登録されているようだった。
「初めて見たよ……こんなサイト」
「俺もだ。カメコウ、お前、やっぱスゲェよ」
俺も、ゾフィも口々にカメコウを称えた。
確か、こういうサイトって通常の方法ではアクセス出来ないんだよな?
というか、本当にこういうヤバイ取引が行われているんだな……。
「デュフ、僕が気になるのはこの辺かなぁ~」
血液型、出生地などで検索の絞込みが出来るらしく、カメコウは商品リストを絞っていく。そうして、やがてバンコク近隣ほどまで絞る事が出来た。
商品画像はなく、販売されているブツがどんな状態なのか、どういう物なのかは一切分からなかった。
ゾフィが切り出す。
「これはよぉ、生きた状態で渡されるのかよ? それとも死んでるのか?」
「商品リストで“臓器”とか“人肉”とか分かれていたから、デュ……たぶん、選べるんだと思う」
成る程……臓器提供を望んでいる人は多いと言う。そういう場合、死んだ状態で渡されても困るから、人身売買って事になるのかな。
「カニバリストの場合は、死んだ状態で渡されるんじゃないか?」
そう、口にしたのはメガミだ。そして、そのまま言葉を続ける。
「私が知っている限り、人間を食べる民族というのは未だに存在している。そういう連中に非合法で渡す場合、死体で、つまり加工された状態で渡されるのかもしれん」
メガミの言う通りだ。となると、やはり生死を選べるのか。人間の命を軽んじているようで殊更、気分が悪いな……。
だが、商品名からして人間である事は間違いない。
商品情報を見ていると、幾つか付属の記号がある事に気付いた。
AやB……これは血液型だろう。それからMとかFとかあるが、性別って所か。
「この“20”っていう数字は?」
「言い難いのだが……年齢ではないか?」
俺が尋ねると、ロジーが思案する。横で見ていたゾフィも「ヘドが出るぜ」と悪態をついた。カメコウが否定しないという事は、恐らく正解なのだろう。
「この辺のリスト、十八から二十歳ぐらいが多いですね……」
「そこだな。販売元も同一人物だ」
特定の人間が、二十歳前後の商品をどうやら複数、出品しているようである。
二十歳前後……大学生も含まれているのだろうか。
もしかしたらこいつがサムチャイ本人。もしくはその仲間?
重苦しい雰囲気の中、メガミがゆっくりと口を開く。
「買ってみる、か」
立案したメガミを一瞥する。決して軽口で言ったわけではないようだ。
メガミの言葉に皆、頷きこそしないが、否定もしなかった。
確かに、そうするのが一番手っ取り早い。事件解決に最も近いからだ。
だが、首肯するには責任が重すぎた。
だから皆、沈黙でもって答えたのだろう。
結局、俺達はダークウェブで売られていた臓器(20)を購入。
配送方法は手渡しとして、お届け日数は最短。取引場所を問い合わせる。
自らは裏社会の人間であると標榜し、ターゲットに近づくという作戦を計画した。
そうして決まった受け渡し時刻は深夜三時。取引場所は……案の定、大学の構内であった。




