Report61: 会長
◇◇◇
「いい加減吐いたらどうだ! 写真はどこだ!?」
「言っただろぉ! デュ……お前らなんかに渡さないぞ! 誰にだって大切な物がある!」
「綺麗事を抜かしやがって、クソ! この豚が!」
床に転がされた状態で体を甚振られ、カメコウは悶えた。ここ数日、碌な物を食べさせて貰えず、尋問され、痩せていた。
だが、それでも必死に食い下がる。
「人はそれぞれ価値観が違う! 金の為じゃなく、本当に愛してくれる人にあれは、――デュフッ!!」
詰問している男の放った蹴りが、カメコウの腹部にめり込む。元来タフな肉体のカメコウだったが、流石に身に応えていた。
何がカメコウを突き動かすのか。それは当人にしか分からない。ただ言えるのは、そうまでして守りたい物が人には、時にはあるのだという事か。
「失礼します。会長、どうやらリセッターズが……」
「ふぅ、思ったより早かったな。生のメガミ様を拝めるのは嬉しいが……盛大にお迎えしてやれ!」
「ハッ!」
タイに無数に存在する超高層建築物。それはバンコクに集中している。
ここはそのオフィスビルの一角。そこにファンクラブの拠点があった。
以前はただ、数人しか居ない同士の間で結成された集まりだった。それがいつしか人数が増え、賃貸オフィスを借りて活動する規模のコミュニティになっていた。爆発的に増えたのは、タイ王国連続テロ事件のあたりだろうか。メガミの見目麗しいその姿だけでなく、勇猛果敢な性格と卓越した戦闘能力、それらに多くの人が魅かれていった。
だがいつからだろうか。ファンクラブ内に不穏分子が蔓延り始めた。それは偉大な前会長が居なくなってからだ、と嘆く者達は多く居た。
過剰な行動に出る者。営利を目的とする者。逆に、それらを良しとしない者、異を唱える者も居て、やがて組織は大きく分けて二つに分裂した。肥大した組織は、やがて臨界点を迎え消滅するのだ。その瞬間を今日、このファンクラブは迎えようとしていた。
「フフフ、悪いがたんまり稼がせてもらおう。君にはね」
会長と呼ばれた男は下卑た笑みを浮かべると、気絶したカメコウを足でごろり、と転がした。狐目で、唇の分厚い男であった。
おい、と部下を呼びつけ、珍客が来るから全員始末しろ、と命令を下す。そして部下が部屋を出て行くのを確認すると、贅肉の乗った体を椅子に座らせた。




