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リセットメガミ  作者: さっさん
File6: 女神は舞い戻る ~愛好家とモラリズム~
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Report58: ファンクラブ

 数日後。俺達はヤワラートの事務所に集まっていた。無論、カメコウは行方不明のままである。

 だからここに居るのは、カメコウを除いた四人だけだ。

 どうやら進展があったらしい。闇に覆い隠されていた部分が、露になったようだ。


「俺は情報戦は得意ではないのだが……フン」


 ロジーは煙草の火を消すと、パソコンの画面を俺らに見せた。数日の内に調べ上げたデータが、そこには映し出されていた。


「まず敵についてだが……メガミのファンクラブのようだ」

「なんだと?」


 反応したのはメガミだ。ファンクラブの存在をメガミは知らない。驚くのも無理はない。

 ゾフィはその傍らで沈黙したままだ。察するに、コイツは何となく知っていたようだ。

 にしても、ファンクラブか……。


「気になってそのフィギュアを調べたのだが……メガミよ、確か数十体は買い占めたと言っていたな?」

「ん、ああ……店にあった物は全部、私が……」

「フン……その後からだ。これを見てくれ」


 ロジーがパソコンのキーボードを弾くと、とあるネットショップの情報が映し出された。フィギュアは未だにネットで販売されているようで、メガミ・フィギュアの画像や値段、説明などが表示されている。ところが……。


「さ、三万バーツ……?」

「私が買った時はこんなに高くはなかったぞ……」


 その金額の部分を見て、俺は驚きの声を上げた。メガミもだ。

 日本円に換算して、約十万円といった所か。フィギュア一体にしては高すぎる値段だ。


「左様。ある日を境に、価格がどんどん上がり始めている。急激な値上がりが起きているのさ……」

「それが、私が買い占めた日、というわけか……」

「そうだ。具体的には、買い占めた結果なのか、それとも仮面男とカチ合った結果なのかは不明だが」


 そう言いつつ、ロジーは今度は別のサイトを見せてくれた。

 ネットショップではなく、団体か何かが運営しているホームページの通販と思しきものだ。先程のサイトと比べ、やや貧相な造りである。


「俺としちゃあ、需要があるって事に驚きだがよ……コイツは?」

「フン……、まず……」


 半ば呆れた様子で、ゾフィが言った。尋ねられたロジーは腕を組んだまま沈黙している。頭の中で言葉をまとめているのだろう。


 確かにゾフィが言う通りだ。値段が高騰しているという事は、つまりそれでも売れる自信があるという事だ。

 オタク達が買っているのだろうが、それにしてもこれだけ高値にするのは理解が出来ない。流石に売れなくなるだろうし。

 そんな事を考えていると、ロジーが語り始める。


「さっき見せたのは大手ECサイト。だが……出品している連中がどうもキナ臭い。有名な販売業社を除けば、個人ばかりだ。

 中にはただの転売ヤーも居るのだろうが……。即ち、全員グルという事だ」

「どういう事だ?」


 画面を食い入るように見ていたメガミが、説明を求めた。対するロジーは、半ば推測なんだが、と前置きしてから煙草に火を付ける。

 そして画面を指差し、説明を続けていく。


「コイツとコイツ、コイツも……。個人が出品しているのに、商品の取扱を開始した日が一緒なのだ。これは明らかにおかしい。

 それに、こいつ等全員、メガミのフィギュア以外は販売していない。どうだ、何か、引っ掛かるであろう?」


 話を聞いていたメガミは「成程な……」と呟いた。何かを悟ったのだろう。

 ロジーは壮年の顔に皺を浮かべて笑った。そしてフゥ、と煙を吐き、また口を開く。


「それから、今見ているこのホームページ。ファンの人間が立ち上げたサイトで、ここでもフィギュアを販売している。

 そもそも、こんな物、身内の協力が無ければ作るのは不可能だ。そう考えた俺は、フィギュアの製造に必要な機材を卸している業者を当たった。そうしたら、購入者の配送先にカメコウの住所があった」

「ビンゴ。だとすりゃあ、フィギュアを製造していたのはカメコウで間違いねぇな」


 ゾフィは指をパチンと鳴らした。

 説明していたロジーは頷くと、俺を一瞥し、またパソコンへと向き直った。

 ……もしかしたら、俺もフィギュア制作を手伝っていた事に気付いているのだろうか。

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