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リセットメガミ  作者: さっさん
File6: 女神は舞い戻る ~愛好家とモラリズム~
59/101

Report55: 秋葉系

 タイにもショッピングモールはある。大型のもので、日本や米国のそれと比べても遜色のないレベルである。

 ただ幾分、色使いが派手な印象があった。イメージを例えるならドンキホーテ、と言った所だろうか。

 RGBの強めの商品が所狭しと並んでいる状態で、連続して見ていると視覚系に異常を来たすような……。

 まるで一九九七年に日本で起きた<ポリゴン事件>を彷彿とさせるような激しいカラーリングである。あの時、俺は一視聴者としてサトシと共にコンピューター内部で冒険をしており、黄色いネズミがミサイルに向けて高圧電流を発生させたところで画面越しの多くの同胞達は目をやられてしまった。

 奇しくもジブリの名作映画の結末と同じだ。天空の城でヤンチャをした結果、少年少女に「バルス」という謎の呪文を唱えられて目をやられてしまった大佐と同じ展開であった。

 だが、あれを間近で直視しているサトシは、きっと俺たちより辛かったに違いない。並大抵の志ではポ○モンマスターになる事は出来ないぞ、と。在りし日のサトシは俺たちに教えてくれようとしていたのだろう。


 ちなみに当時、放送された翌日も普通に俺は学校へ通っていたのだが……さておき、現在バンコクにあるショッピングモールをメガミと二人で訪れている。勿論、仕事である。

 警備の人手が足りないようで、短い間だけ嘱託という形で見回りを引き受けたのだ。


「日本にもこういうショッピングモールがあるんですよ。横浜のに似ていますね。あっ、横浜っていうのは」

「あまり無駄口を叩くな。仕事中だ」


 メガミの後ろを歩きながら、俺は日本の思い出を語った。メガミは周辺を見渡しては、たまに殺気のようなものを発していた。

 やはり機嫌が良くないようである。いつにも増して、態度がドライだと感じられた。


「尾行されている……」


 メガミは小さな声で呟いた。視線は前を向いたままだ。俺が聞き返すと、「四時の方向」だと言う。

 自然な雰囲気を装って振り返る。確認してみると、柱の陰からこちらを覗き見る男が居るのに気付いた。殺気は感じない。


「何者です?」

「分からん。だが、用心しておけ……、ん?」


 ピリピリとした空気を纏わせながら歩いていた。が、今度は何かを発見したようで、メガミが駆け足になる。俺はその後を追った。

 向かったのは子供向けの玩具などを取り扱っている店である。


「なんだ、これは!」


 その店頭に並んでいる商品を見るなり、メガミが大きな声を発した。柄にも無い、取り乱した様子だった。

 見てみれば……六分の一スケールの、我らが謹製メガミ・フィギュアである。


「これは私、か……?」


 まじまじと見つめるメガミ。傍から見ても、フィギュアのモデルがこの女性である事は明らかなくらい、精巧に出来ている。

 俺はやや乾いた笑いを漏らしつつ、知らぬ存ぜぬを突き通していた。


「ハハハ、これは……メガミさん? いやぁ、良く出来ていますね」

「くっ……!」


 バキッ!(壊れる音)


「ああ!?」


 彼女は歯噛みするとフィギュアを両手で持ち……真っ二つに折ってしまう。

 咄嗟に俺は声を上げていた。


「どうした……何か問題が?」

「い、いいえ……」


 低く、冷たい声である。じろりとメガミに睨まれた俺は、背筋がゾッとする。

 蛇に睨まれた蛙といった塩梅で、動けなくなってしまった。だが、口が辛うじて動いたので謝っておいた。


「店主! このフィギュアを全部くれ。在庫全部だ!! カードで!!」


 メガミはやや紅潮した様子で、財布を取り出す。それから怒りの混じった声で男性を呼びつけた。そしてメガミ・フィギュアを買い占めていく。

 最後に一言「不愉快だ!」と吐き捨てると、玩具屋を去って行ってしまった。

 俺は慌てて追う。そこで、一人の男が俺たちの前に飛び出してきた。


「デュ、デュフフォォオオオ!! 恥ずかしそうなメガミたん!! これはレアですぞォ!?」


 男は奇声を上げた。よく見れば、先程柱の陰からこちらを覗いていた男だ。眼鏡をかけた、やや小太りの日本人だった。

 その男は、首から下げていた一眼レフの電源を素早く入れると、メガミに向けて構え始めた。


「なんだ貴様は!? どけ!」

「ひでぶッ!!」


 メガミは男を撥ね退けると、苛立った様子でズンズンと歩いて行ってしまう。

 男の方は怪我をした様子はないが、突き飛ばされて床に尻餅をついていた。どこか満足げな表情をしている。もしかしたら狙ってやったのかもしれない。例のファンクラブの会員だと思われた。


 しかし嘱託とはいえ、警備を任された人間が人を傷つけるというのは如何なものなのか……甚だ疑問が残っているのだが、俺はメガミの背中を追う事にした。


 この日、目立った事件や事故は特に起きなかった。

 大量に買い占められたメガミ・フィギュアがどうなったのか、俺はそんな事に思いを馳せながら、その夜は眠りについた。

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