Report51: リセッターズ
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『エバーローズ財閥会長のリクセン・エバーローズ氏が死亡した事件について、続報です。民間軍事会社、《ルンギンナーム》との黒い繋がりが示唆されている――』
テレビをつけると、どの報道チャンネルでもリクセン死亡のニュースで持ち切りだった。リクセンの顔写真と事故現場の映像が映し出され、報道されている。
リクセンが轢死してから数日後、俺達はまたヤワラートの事務所に集まっていた。暫くの間はメガミの命令で皆、休息を取っていたのだが、久方ぶりに集合したのだ。
ゾフィは肩に包帯を巻いていて、痛ましい姿だ。リクセンに銃撃された傷が、未だに癒えていない。
「……さて、今回のヤマは色々あった。正直不快な事も、な」
ソファに座ったメガミが足を組み直した。そして、言葉を続ける。
「ラッシュ、カメコウ、ロジー。新人ながら、皆、よくやってくれた。給料だが、口座に振り込んである。確認しておいてくれ」
「了解です」
「デュフッ」
「正直疲れたな……まだ暫く、休暇が欲しい所ではある」
時刻は午前九時。顔合わせの時に言われた通り、この時間、この場に、必ずメンバーは集まる。
傭兵集団、か……。そんなもの、云わば自称であり、便利屋の間違いだろうと俺はいつも思う。
今しがたメガミが述べたように、リクセンの人生リセット計画と称されたあの案件は、本人の自殺という結果で幕を閉じた。彼が何を思ったのか、それを確かめる術は無い。娘、キャロルや家族を置き去りにして、旅立ってしまった。
俺が入ってからというもの、依頼内容は惨憺たるものばかりだ。この界隈では、人が簡単に死んでいくのだ。
だから、今回もまた、良い気分ではなかった。
「ラッシュ……」
ゾフィが前に言っていた。ここは“人生をリセットされた奴等の、最後の墓場だ”、と。
俺も、いつしかああやって、死ぬのだろうか。
前にも考えた事があったが、仮にこの生活が終わりを迎えて、おさらばになったとする。
その時、俺はどうするのだろうか。もし日本に帰れたら、今度は何をするのだろうか。何が待っているのだろうか。家族、友人、故郷、俺にはもう何も残っていない筈だ。
また商社マンになったり……いいや、それはないか。
「ラッシュ!」
沈思黙考していた俺だが、名前を呼ばれている事に気付いた。どうやら上の空になっていたようである。俺は慌てて声の主、メガミの方へ振り向く。
色々あったし、ぼーっとしても無理はないと思うが。
「これからもよろしく頼むぞ」
メガミが俺に問いかける。ガーネットの瞳が俺を見据え、時間が停止したような感覚に陥る。
……俺は、以前の生活を求めているのだろうか。ストレスと欲望の掃け口として、犯罪に明け暮れたあの生活を。かつて、大森精児だったあの頃を。
否――
「ええ、こちらこそ」
俺はアウトローな笑みを浮かべると、手でグーを作る。そしてメガミと拳を突き合わせた。“女神”がフフン、と鼻を鳴らし、周りの奴等もニヤリと笑う。
俺はラッシュ。《リセッターズ》のラッシュ。これからも……ずっとだ!
裏の世界で語り継がれる伝説的な話で、あらゆる事件を解決に導く凄腕の傭兵集団が居たらしい。
人生を、事件を、そして時には地形をリセットするかのようなやり口から、人は彼らを《リセッターズ》と呼んだ。




