Report49: 散りゆく
激戦を繰り広げたあの細道から、車で十分前後の地点。その道路脇で、リクセンの乗った装甲車は停まっていた。
《ブラックドッグ》が銃撃を浴びせ、タイヤを撃ち抜き、強引に停めたようである。しかし、有能だった彼らは既にリクセンの手によって始末されてしまっていた。
リクセンは苛立ちを隠せないようで、撃ち抜かれた左手や、連戦によるダメージに呻吟しながらも、逃亡の準備を企てていた。
サーマートが携行していた救急用具で応急処置を行い、包帯を巻いていく。時間が無いと分かっているのだろう。焦慮に駆られ、表情には余裕がない。
そうして、いざ出発しようとした所で、銃声が聞こえた。ハッとして身を屈めるリクセン。フロントガラスにひびが入っていた。
敵襲を悟り、横を見やる、すると、運転席に座っていたサーマートが息絶えていた。頭を銃弾で抉られて、血を流している。
攻め込んだのはメガミ、ラッシュ、そしてペイズリーだ。ロジーはゾフィの介抱をした後、あの細道で未だに事後処理を行っている。
遠くでパトカーのサイレンがこだましている。直に警察もここへやって来るだろう。
リクセンは車両から飛び降り、アサルトライフルで迎撃を開始する。敵の姿を確認しようと周囲を警戒する。だが、既に囲まれているようだった。
「動くな。もう無理だ、諦めろ」という台詞がリクセンの背後から聞こえる。同時に、彼の背中に銃口が突きつけられていた。メガミである。
リクセンはAK47を捨て、両手を挙げる。それでメガミの気が緩むのを察したのか、素早い後ろ蹴りを喰らわせ、彼女を後方へと蹴り飛ばした。
「どうした、私を殺さないのか!?」
拘束しようとラッシュが拳銃を向けたまま攻め入る。リクセンは服の下に隠し持っていた幅広の刀を取り出し、両手に構えた。
リクセンの十八番、ダーブ・ソン・ムーと呼ばれる型だった。ダーブという幅広の曲刀を両手に持ち、時折足による打撃を繰り出す。クラビー・クラボーンの技である。
「愛する者を守りたいのは皆同じ筈だ。その為なら自分勝手でもいい。何と言われてもいい。私なりのやり方で通させてもらうぞ!」
足を狙ってラッシュが発砲するのだが、舞踏するような動きでリクセンは避けてしまう。ペイズリーが加わり、リクセンへと飛び蹴りを繰り出す。それを半身になってかわすリクセン。
リクセンがペイズリーを斬り捨てようとすれば、ラッシュが発砲するので、お互いに決定打にならないまま数分が経過した。
「オレの仲間をたくさん殺してくれたな!」
「目的達成の為、已むを得ず殺したのだ」
「ふざけるな! 命まで奪う必要がどこにある!?」
ペイズリーが吼える。激昂しているようだった。互いに一歩も譲らず、互角に渡り合っている。
「殺すつもりはなかったのだがな……。降りかかる火の粉を払ったまでだ……!」
しかし、局面は一気に動き出す。
ラッシュが弾倉を取り替えようとした時だ。彼はマガジンがもう残っていない事に気付いた。その隙に、リクセンはラッシュへと、曲刀を投擲した。
ラッシュは瞬時に仰け反ってかわすのだが、ラッシュの拳銃に直撃し、弾け飛んでしまう。その一瞬の内に、ペイズリー対リクセンの激しい攻防が始まった。
ペイズリーは相手の曲刀による斬撃を見切ってかわしていた。そして回し蹴りを打ち込もうとするのだが、同じく足技によってリクセンに防がれてしまう。
対するリクセンは蹴りを防ぎつつ、ペイズリーの頭部に刀を振り下ろす。
ペイズリーはリクセンの腕ごと、裏拳で刀を弾いて何とか斬撃を凌ぐ。だが、防御と同時に、相手の膝がペイズリーの腹部にめり込んでいた。ペイズリーが倒れ、嗚咽する。
どうやら決着が付いたようだった。




