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リセットメガミ  作者: さっさん
File4: 女神は推理する ~連鎖~
40/101

Report40: 大敗

「まずいぞ、メガミ。トチった! 奴等、対戦車ミサイルまで持っていやがった!」


 ゾフィは携帯電話を片手に、本堂を背にして逃げる。敷地内は入り組んでおり、建造物も多い。上手く撒きつつ、ワットプラケオの東を目指した。

 メガミも大方事態は把握しているようで、準備は出来ていた。横に居たロジーも、いつでもヘリコプターを離陸できそうな状態である。


「ラッシュが負傷した! 今そっちに向かってるから、ヘリで拾ってくれ! 撤退だ!!」


 メガミには電話の向こうから、銃声が聞こえていた。彼女は「失敗だな」と呟くと、何かを思案しているようだった。

 対戦車ミサイルであれば、ヘリコプターですら撃ち落すのは容易だ。だとすれば、メガミ達も只では済むまい。しかし、建造物や外壁に隠れるようにして飛行すれば、或いは逃げられるかもしれない。恐らく、そんな事を考えているのだろう。

 ロジーの操縦テクニックは信頼しているが、今回の敵は相性が悪いと言えた。


 ゾフィは金色に輝くワットプラケオを走り抜ける。途中、ラッシュが気を失ってしまったので肩に担ぎ上げた。そして寺院の東へとひた走った。

 遮蔽物を盾にする事でミサイル攻撃を免れていた。しかし、自動小銃を構えた兵士が後から追いかけて来ている。追いつかれるのも時間の問題だろう。だが、万事休すかと思った所で、前方から救援が現れたのだった。メガミである。このタイミングでの登場はある意味で、本当に女神と呼べるものだ。ゾフィは安堵したのか、ニヤリと笑ってみせる。

 彼女はM16で素早く敵兵を沈めると、早くしろ、とゾフィを急き立てた。


 やがて寺院東の末端が見えてきた。そこには白い塀が続いており、敷地内を囲むように設置されていた。高さが三、四メートル程あり、よじ登るのは難しそうである。

 逃走する彼らが白い塀に到達する頃、その塀の向こう側からヘリコプターが姿を現した。操縦しているのはロジーだ。


「急いでくれ! すぐに出るぞ!」


 そう叫ぶロジーは敷地内部へと強引にヘリを寄せ、着陸させた。サーチライトが辺りを照らす中、メガミが先に乗り込む。続いてラッシュを抱えたゾフィが乗り込もうとする。

 ヘリは小型機の部類に入るが、パイロット以外に三、四名程が乗れるものだった。


「ん、今……どうなってる……」

「起きたか……! 撤退だぜ。今はヘリん中だが――」


 離陸してすぐに、ラッシュが目を覚ました。ヘリは大きな音を立てて、扉も開けたまま、今まさに夜空へ飛び立とうとしている。急な離陸であった為、機体も大きく揺れていた。

そうしてヘリがワットプラケオを囲む白い塀と同じくらいの高さになった時、ゾフィが異変に気付いた。


「駄目だ、降りろ!」


 ゾフィが叫んだ。どういう事か、ラッシュがその言葉を理解する前に、メガミとゾフィが塀の上目掛けて跳躍した。機体が少し揺れる。操縦者のロジー含めた三人の目には、同様のモノが映っていた。


「うぐッ!!」


 塀から転がり落ちて、そのまま地面へと落下するメガミとゾフィ。

 ラッシュは未だに事態を分かっていない。


(追っ手が来ねぇと思ったら、そういう事かよ! クソが!!)


 ロジーは機体を操縦して、寺院の塀に横付けしていた。次にラッシュも、よく分からないまま塀へと飛び降りる。何とか塀の上に足が着き、そのままの勢いで、敷地外の芝生へと飛び降りた。彼は足を痛めたが、骨折はしていないようだった。

 着地したラッシュが振り返った瞬間、彼の頭上を何かが飛んでいった。あれは何なのか、そんな事を考えていたが、瞬刻、紅白のフラッシュと共に爆発音が響き渡って、ラッシュ達を爆風が襲った。

 攻撃を受けたと思われるヘリは火柱を上げ、緩やかに落下してゆく。ワットプラケオ外の道路に墜落し、ぐしゃりと機体がへし折れ、今にも大爆発が起きそうであった。


「ロジィーッ!!」


 一帯を熱気が支配する中、メガミはロジーを見ていた。墜落したヘリの隙間から、目を瞑ったまま動かないロジーが見える。彼はぴくりとも動かない。操縦席に居た結果、脱出が遅れたようである。頭から血を流して頬を地面に突っ伏していた。


 ヘリコプターの操縦は完璧と言って良かった。遮蔽物を間に挟む事で、追っ手からの攻撃を回避していた。そのまま飛び去れた筈だった。

 機体を襲ったのは対戦車ミサイル、即ちジャベリンではない。地対空ミサイルだったのだ。それがヘリのローターに直撃していた。

 大破しなかったのは、ロジーの技量故か、それとも運が良かったのかは分からない。


「撤退だ! ゾフィ、ラッシュ、無事か!? ロジーを担いで逃げろ!」


 メガミは声を荒げ、憤慨していた。地面に倒れたまま歯を食い縛り、その端正な顔を歪める。拳を握り締めると、立ち上がる。悔しさと苛立ちに表情を歪ませながら、走り出すのだった。


「……了解。最高に気分が悪いぜ……」


 《リセッターズ》はトゥクトゥクを無理やり停車させると、散り散りになって逃げた。惨敗であった。パトカーのサイレンがこだまし、火と煙が上がる。

 寺院の中でナイフ男はほくそ笑み、笑い声を上げる。宵闇と煙に紛れ、静かにその場を離れていった。

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