傘立てと彼
窓から真っ赤な光が差す。
雲は赤から紫の綺麗なグラデーションに染まり、
真っ白な雲は殆ど無い。
平凡の中にふと、非日常を感じさせる風景はこれだけではない。
教室に置かれた、大きなプラスチック製の傘立てに飲み込まれている「彼」。
「居心地いい?」
私が問うと
「寝心地悪いのは確かかな…。」
腰からすっぽり体育座りのような形になりながら
傘立てのレビューをした。
「普通に入った方が居心地は良さそう…」
「今更すか…。1人で出られそう??」
それを聞くと 意地でも出てやる、と言わんばかりに足をばたつかせたり、手の力だけで出ようとする彼。
「…ねえ、お願いがあるんだけど…。」
彼がニタつきながら手招きをした。
「手伝うよ(^ω^)」
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「ちょっと!!!何!?手を引っ張ってくれればいいじゃん!!!」
「女の子だよ?そんな力ないよ〜、傘立て倒しちゃった方が出やすいって!壊れちゃったら大変じゃん!!!ほら行くよ〜」
そう言って傘立てに手をかける。
「うをぁ!怖い!!ゆっくりね!!!!ゆっくりゆっくり!!!」
傘立てに体をくっつけ安定させながら、ゆっくりと斜めに傾けていく。
ズズ…ズズズ…
「ひぃ〜…」
ズズ…ドカン!!!!!
「ギャッ!!…だから言ったじゃん!!!(;_;)」
ヒィヒィ言いながら彼が訴えた。
「いひひひwwww笑う!!www早く出なよ!」
「ううう…(´;ω;`)ありがとう(´;ω;`)」
彼がゆっくりと出てくる。
「膝の裏が痛い…。」
ずっと膝と脇で体の重さを支えていたのだから、そんな変な所が痛くなってもおかしくはない。
「楽しかった〜( ̄▽ ̄)私がいなかったら死んでたんじゃない?」
「それはある…。命の恩人!」
私に向かって拝む彼。
「奉納品まってまーす。」
「ジュース奢る!」
もうすっかり青黒くなった空。
落ち着きを放った校庭。
その日奢ってもらったサイダーは格別に美味しかった。
一仕事した後だからなのか、奢ってもらったからなのか。
その2つを含んでいた事、もう1つ特別な感情があった事に、当時私は気付かなかった。
こんな事あったなぁ(大嘘)
キラキラしている時って戻ってこないから、もう少し大切にすればよかったという後悔の念も込めた作品です。