第3話.驚くとこそこじゃない
「とまぁ、なんか訳のわからない夢を見たんですよ」
「いえ、夢じゃないですよ?現実逃避は良くないです。」
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「状況を整理しようか」
「はい」
「まず、俺の名前は白井 卓。渾名はシロタク。」
「はい」
この渾名のせいで何回職質をうけたか…
「同僚からはいつもシロタクと呼ばれてたからな」
「普段、多く使っている名が記されてしまったと」
「多分な」
「それは困りましたね」
「何が?」
「えっと」
運ばれて来た乗り物、タクシーが“シロタク”だと思った。
遺跡に古代文明の機械として配置するために無駄にも機能や属性の付与を行った。
車の中に本来能力を付与する対象が居たと知らなかった。
今の状況であなたに付与できるとすれば、最低限のものになってしまう。
「それじゃ俺には何も付与してもらえないのか」
「それなんですが、標準の言語翻訳とステータスウインドウの2つのみになります」
「つまり?」
「その、能力に補正は掛かると思いますが、基本は転移先の知能を持つ生命体とほぼ同じになります」
「欲しいと言えば能力は欲しいけど、まじかー、でもあっちの生命体と同じってことは?」
「一応、適正があれば、それなりの魔法は使えるようになるかと」
「何が使えるかはわからない?」
「すみません」
「タクシーから外したりは?」
「あの子に定着してしまいましたので…。あの子から奪えます?」
「寝覚めが悪い…かなぁ…」
「あ、でもですよ?、基本フル機能が使えるようになってるんですよ、乗り物も変化できますし!」
「しかもレベルに応じて強化されると?」
「そうです」
「暴走したら危ないんじゃ?」
「なので、この子は貴方がしっかり護ってあげてくださいね」
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タクシーの方は良いとして、少女の方には名前が無いと不便だろう。
名前…、どうしたら良いんだろうか(チラ
ん、なにか?
「そう言えば君の名前は?」
「申し遅れました、私は第13911021番転移門管理者アテラと申します」
「神様とかではないんだ」
「一応、属していますが…」
「そうなんだ。しかし13911021番、多いね」
「はい。銀河系と呼ばれる中でのほんの一部ですけど」
「ステータスってどうやって見るの」
「基本は操作者の認識に依存しますので、そうですね、画面をイメージして、『ステータスオープン』と念じてください」
「へー、じゃあ『ステータスオープン』」
「え?」
目の前に20インチサイズのウインドウが出現した。
名前:スグル・シライ
年齢:25
種族:人
状態:健康
Lev:1
HP :500
MP :270
魔法属性:未定義
能力:多種言語翻訳、ステータスウインドウ(プレミアム)
従者1
名前:タクシー(NoName)
年齢:5(未定義)
種族:魔道体(精霊)
状態:良好
Lev:30
HP : 10,000
MP : 40,000
GAS:600,000
能力:未解放
付属:カーナビ、タブレットPC、モバイルWi-Fi、冷蔵庫、ドライブレコーダー、プリンター、プロジェクター
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「「・・・・・・」」
「あのさ」
「え?あ、はい」
「全ての機能使えるって言ったよね」
「え、そっち?」
「そっち?って、いや他にもあるけども!。これってタクシーに積んでた機械類の全てってこと?」
「えっと、そのようですね」
アイテムチートですか。
「それじゃあ、HPやMPは標準なのか?」
「スグルさんのは若干多い感じですね、タクシーの方は色々付与してしまいましたので」
「まぁ追々試すとして、これから行く場所はどういう所なんだ?」
「俗に言う剣と魔法の世界なんですが、タクシーの使い方次第で、その星で君臨することもできますよ?」
「面倒だからいいや、そういうの」
「でも火の粉は降ってくると思いますよ?」
そうなったら、その時だ。
転移先は平原か森、山の中といった普段から人気のない場所にランダムで送られるようだ。
与えられる能力によって転移先の周囲に出る魔物などのレベルや頻度が変わるようだ。
この場合、どっちのレベルが反映されるのだろうか
あと転移先の文明レベルを上げても良いらしい。
君臨は面倒だからやりたくない。
あとは行ってから考えるか…
さて、ステータスウインドウをもう一度
あれ?
「あのさ」
「はい、なんでしょう」
「この〔現在地登録(0/100)〕ってなに」
「恐らくは、何回も行く場所をすぐ呼び出すための機能ではないでしょうか」
へー、ここも登録できるんだろうか。
ピッ
「あ、出来た」
「え?うそ」