第140話.異国の学校へ
融雪期を迎えて、アシロ帝国とエステリア王国とを結ぶ街道の途中にあるイルナ川も例年どおり増えていた。
この時期は道が寸断され、交易は中止を余儀なくされるが今年は違う。
そう、アシロ帝国に発注した橋架工事が終わったのだ。
これまでこの時季特有の産物を安価に提供できるようになるのだ。
そして───
「ねぇ、お父さん」
「ん、これまでどうしたんだい?エミリア」
「サンラってところから私宛に学校の入学案内が届いたのだけど、申し込んだ覚えが無いのに…」
「あぁそれは父さんが申し込んでみたんだ」
「でも、家には学校に払うお金なんて無いよね。帝国の学園にだって入学金が払えなくて通えないのに、なんで聞いたこともないサンラなんて国から」
「そうだなぁ…、でもな、学べるチャンスがあるなら他国の学校でも良いと父さんは思うんだ」
「でも…」
「あぁ、お金の心配は要らないぞ」
「え?」
「エミリアが通う学校は、学費と滞在費が掛からないんだよ」
「お金が掛からないなんて怪しいよ、お父さん」
「父さんも初めは思ったさ、でもな───」
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通知書
サンラに開校する学校へのアシロ帝国からの推薦について
昨年に交易を開始したサンラに新しく学校が創設されたとのこと、合わせて周辺国から若干名の入学者を募ると知らせが届いた。
成績優秀にも関わらず、庶民への奨学金拠出を拒む帝国貴族の我儘により学びの機会を失うのは忍びない。
そこで、我がアシロ帝国と隣国エステリア王国、学校創設のサンラ自治区と協議し選考した結果、貴殿を推薦する運びとなった。
学校に関わる費用は全て国と基金により賄われるため費用の心配は無用である。
なお、入学手続きを執り行うにあたって、3月25日までに、サンラ自治区、初等教育学校附属寮まで来られたし。
アシロ帝国 帝国ワモスク学園
エステリア王国 エステリア中央学園
サンラ自治区 初等教育学校
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「3月25日って」
「んーと、5日後…だな」
「ちょっ、間に合わないじゃない!」
「待て待て落ち着け!、間に合うから!」
「なんでよ!、エステリア王国まで6日掛かるのに、雪融けで川も渡れない…。終わったわorz」
「どうしたの?エミリア」
「お母さん…(グズ)」
「あなた、どうしたの?」
「あぁ、学校に入るために3月25日まで来てほしいと在ったのだが…日数的に間に合わない!となってな」
「あらまぁ、でもエミリア大丈夫よ」
「え?」
「ほら、見てみろ、荷物を纏めて明後日、帝国国立図書館前に来てくださいだとさ」
「でも…」
「移動にはスグル運送(仮)が担当するそうだ」
「この (仮) が気になるわね」
「聞いた話では、まだ運送業としては始まっていないそうなんだ」
「大丈夫なの?それ…」
「一応、国からの依頼ってことで、料金は掛からないとのことだ。ジェリックが乗ったら驚くよ(笑)と言っていたよ」
「そうね、ジェリック兄さんは確かサンラまで行ってたもの、大丈夫よ、さ、入学の準備をしましょ、エミリア」
「うん!」
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