第112話.和解?
「次に馬車の値段だが──」
「なぜ15倍に跳ね上がったんだ?!」
「「そ、そうだ、このままじゃ破産だ!」」
「馬車の走行を改善した技術は、スグル殿のオリジナルだ。もちろん、ここサンラでのみの販売だ」
「それだけで何故15倍になるんだよ!」
「横暴だ」
「不満か?」
「ああ、たかが揺れを抑えるだけで15倍?、精々2倍位で出来るだろ!」
「ならば作ってみるが良いだろう」
パサ
「こ、これは…、設計…図?」
「お前たちが2倍で出来るのか見せて貰おうじゃないか」
「俺たちにこれを渡したことを後悔するなよ?」
「後悔するのはどっちだろうな。さぁ、その設計図で自作するなら、今予約中で支払いできない馬車の契約は解除できるぞ?」
「「「か、解約するぞ!」」」
「「「お、俺もだ」」」「「「私もよ」」」
「この馬車に関して、サンラ領内の鍛冶ギルドには発注出来ないけど頑張ってな」
「「「「「え?」」」」」
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「おい、どうすりゃ良いんだ」
「慌てるな、材料や設計図が判れば、物価の安い国に発注するのもアリだ」
「いいのか、こんな技術を他国に流して」
「なぁに、材料とサイズ、数量で発注すれば、向こうには何を作るのか分からないだろ。それに大量発注だと金額も下がる。みんなまとめて発注しようじゃないか」
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「部品数4,610点の材質とサイズと数量の発注書できましたー」
「どこの国が良いだろうか…」
「なぁ、これ本当に2倍に納まるのか?」
「だよな、運送と組み立てもするんだろ?」
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「なぁ、今どのくらい予算オーバーしてる?」
「えーっと、2倍をかなり超えてますね」
「最終予測は?」
「約20倍ですね…」
「俺らの敗北だな」
「そうだな…」
「10台の発注に留めといて良かったか」
「そですねー、希望の100台だったら括る人も出てくるところでした」
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「ようやく1台完成だな」
「試験走行だ。といっても、積み荷はいつもので良いだろう」
………
「た、大変だ!、馬車が!!」
「どうした!」
「最初、軸受けが折れて、そのあと馬車が真っ二つに」
「荷物は?、御者は?」
「荷物は全損、御者は無事です」
「そうか…」
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「スグル殿、発注を取り止めた商会が、15倍でも良いので再度発注したいそうだが…」
「良いんじゃないかな受けても」
「そ、そうか。そう言ってくれると助かる」
「何か有ったんですか?」
「今朝がた、全員から謝罪が有ってな、生産や技術、安全面において、スグル殿と鍛冶ギルドに及ばなかったそうだ」
「粗方知ってるし、良し!んじゃ和解で良いね。ギルド権限でさ、彼らの」
「これ以上彼らに制裁でも?」
「違う違う。彼らへの補償だよ。積み荷の分」
「な、なるほど。人の搬送中じゃなくて良かった」
「あぁ。今回は特例として、全額補償で宜しく。んで、馬車の方は、価格を戻す」
「え。価格を元に?」
「これまで実質15倍でなんて売ってないからね」
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「馬車の価格が元に戻っただと!?」
「は、はい。つい先ほどギルド経由で通達が来ました」
「ポンコツで20倍も掛かったものを、20分の1か……」
「スグルってぁ奴に敵わねぇな」
「え?、1000万Enyが補償される???」
「はい。こ、こちらもギルドからで、今回の不祥事を戒めるには罰が必要だが、良い教訓になっただろう、とういことらしく特例で…」
「よし、お前ら!、新しい馬車で、これまで以上に頑張るぞ!!」
「「「「「おう!」」」」」
お読み頂きありがとうございます。
暑いですね!
皆さん如何お過ごしですか?
・ユニークが1万件超えてました。
・初めての感想をいただきました。ありがとうございます。1話のボリュームアップ、少しずつ頑張ります。