第108話.上部(うわべ)の暴走
「レギルさん、ただいま」
「お父様ただいま帰りました」
「おぉ、スグル殿、早い帰りですね。レシカもお帰り」
あの後、魔術士ギルドに寄らずに、とんぼ返りしてきた。
途中で出会った商隊のことをレギルさんに話した。
「まさか、リーシャのお父さんの商会が…。商業ギルド内にそのような動きが有るとは……」
「冒険者ギルド内にも俺を排除したい派が居るようだ」
「お父様、なんとなりませんか?」
「何がしたいんだろうか、ここは代表を集めて話しを聞くしかないな」
「俺は顔を出さない方が良いよね」
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領主の館、会議室
「皆に集まって貰ったのは、スグル殿に関しての事なのだが、意見を聞きたくてな」
「レギルさん、彼に肩入れをするのは良くないよ?」
「それはどういう意味かな?」
「彼は商業ギルドや冒険者ギルドに加盟しているが、税金を納めていないと言うではないか」
「彼はそれ以上の働きをしておるぞ?」
「働きはどうであれ、税金も納めずにギルドに所属しているのおかしいでしょ、なぁ、他の皆もそう思うだろ?」
「それは、商業ギルドの総意と見て良いのかね?」
「そりゃそうだろ、みんな不満を持っているんだ」
「冒険者ギルドも同じか?、というか何故、長が来ていない」
「長が出るような案件じゃ無いですよ」
「そうか…。鍛冶ギルドはどうだ?」
「よく分からねぇが、スグルには世話になってるからな、少なくとも鍛冶ギルドは不満を持っちゃいない」
「農工組合はどうだ?」
「うちらも、スグルさんにはお世話になってますから、特に不満は無いです」
「不動産管理組合は?
「特に無いですね」
「サンラ居住区は?」
「税金を納めていないんですよね、土地も持っているのに、税金を納めている人たちから苦情が来ています」
「鉱山のほうは?」
「わしらのところも、特には無いな」
「はっはっはっ、レギルさん、少なくとも住民は不満を持っているようだ。領主の座も危ういんじゃないか?」
「そうか…。では、スグル殿に税金を払わせれば良いのだな?」
「ただ、払わせるだけじゃダメだ、罰金も払って貰おう。払えないなら、魔道車を差し押さえれば良い。ん?レギルさんどうしました?」
「………」
「ねぇ、レギルさん、そんなんじゃ領主辞めさせられますよ?」
「わかった。鍛冶ギルドや工業区、農工組合と農場、鉱山の方に迷惑が掛かって済まないが、明日朝から上下水道を停止する」
「な、いくら領主でも生活の要である水道を止めるのは横暴だ!」
「以上だ。解散!」
「なぁ、商会の旦那。謝るなら今の内だぞ?」
「んだ早く謝ってこい」
「何故だ、何故スグルってやつの方を持つんだ、しかも水道を止めるって言ったんだぞ!」
「居住区の代表さんは分かるよな?」
「なぜ税金を払っている我々の生活が脅かされるのですか、水は生命に大事なんですよ?」
「ぉぃぉぃ、サンラは大丈夫なのか?、なぁ、お前ら本当に知らないのか?」
「何がです?」
「あのなぁ、ここサンラの上下水道はな、スグルの技術で運用されているんだよ、維持もスグルやスグルの仲間の魔力で定期的に状態を監視して行われているんだよ。それに、王国兵5000に攻め込まれそうになったときに守ったのもスグルだぞ?、しかも財政を気にして無償でだ。そんな奴から税金を貰える訳無いだろ」
「じゃ、じゃぁ、あの土地の所有はなんなんんですか」
「はぁ・・・。あれは正当な冒険者ギルドからの報酬だよ。おめぇら本当にサンラの者か?、ん?」
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「スグル殿、商業ギルドと冒険者ギルド、居住区の動きが怪しい」
「そうなんですか…」
「なので、水道を明日朝から止めると言ってきた」
「また大胆な…」
「恩恵に預かりながら苦情言ってくるんだ仕方ないだろう」
「まぁ公にもしてないですけどね」
「いや広報はしたぞ?」
「え?」
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