美味しいカレーの作り方
良く見て!
聞いて!
実行ってみよう!!
「美味しいカレーの作り方」
このフレーズを聞いたことがある人は恐らく多いでしょう。
大学の単位に纏わる都市伝説
これは、友達の友達から聞いた話なんだけど……
「課題のレポートに迷ったら、『美味しいカレーの作り方』を書いて出してせば通って単位が貰える」
こんな噂を聞いた事はないだろうか?
常識的に考えて通る訳がない。
しかし、誰かが通ったからこそ噂になったんじゃないか?
……これはそんな都市伝説に挑んだ馬鹿共の記録である。
とある地方都市の大学に通う都市伝説好きの男がいた。
仮にこの男の名を熊谷としよう。
熊谷は大学指定の民間寮に暮らす三年生。
期末も差し迫ったある日、朝食を共に取っていた猪俣がぼやいた。
「はぁ、レポートができない。どうしよう」
「何のレポート残ってんだ?」
「○○学の鹿村のやつ、熊谷も猿渡もとってたよな?」
「ああ、俺もまだやってねえな、猿は?」
「半分ほど終わった」
さすが出来る猿は違う、汚い。
ふむ、しかしレポートめんどくせえな。
あぁそう言えば……
「なあ知ってるか? こんな話があるんだが……」
「ほう、なんだい熊」
「『美味しいカレーの作り方』というタイトルで単位を貰ったという噂を聞いた事がないか?」
「マジか!?」
「いや、それって『GNPで内定とった(※1)』って話と同じヤツだろうが」
「知っていたのか猿! と言うわけでこのネタで行ってみようぜ。 猪もそれなら書けんだろ」
「おう、カレーなら何回か作ったことあるから行けるぜ」
「じゃあそれで、三人とも被らないようにしないとな」
「え、俺も参加なの?」
あきらめろ、話を聞いていた時点で逃がさないのだよ。
そしてその日から三人は美味しいカレーの作り方に没頭した!
没頭しただけで実際に作りはしない。
……だって寮母さんがご飯作ってくれるんだもん。
やがてレポートの提出日はやって来た!
意気揚々と提出する猪俣。
ため息まじりの猿渡。
自信満々の熊谷。
はたして、結果はどうなったのか……運命の日は訪れた。
鹿村教授は静かに教壇に立ち言葉を発した。
「皆さんのレポート拝見いたしました。 評価は表紙に書いてあるので後で事務局で受け取って下さい」
結果がわからず、少なからずざわめく教室。
それをきにもせず鹿村教授は言葉を続けた。
「いあー話には聞いていたけど、僕の所に来たのは初めてだったね。噂って本当にあるんですねえ。なんと『美味しいカレーの作り方』をレポートにだした子がいましたよ。しかも4人も」
一気に笑いに包まれる教室の中で笑ってない人物がいる。
猪俣である。
「あれ? もしかしてダメっぽい?」
「いや、普通に考えてダメにきまってんだろ」
面倒くさそうに答えた猿渡に爆笑している熊谷が指摘する。
「いやいや、そんなことよりちゃんと聞いてたか? うちら以外にも書いた馬鹿がいたようだぞ」
そう、鹿村教授は4人といったのだ。
頭のオカシイのがまだいたようだ。
「ちなみに僕は鶏肉が駄目でね、チキンカレーなんて持っての他ですよ。 あと熊肉カレーってなんですか」
「はい先生! 北海道では缶詰にもなっている有名カレーです。 自分は食べたことないですが!!」
「食べたことない物をレポートに書くんじゃない熊谷。 お前ら再提出な」
「じゃあ、納豆カレーで再提出します」
「はっはっは、落第したいようだな」
「ところで先生、四人目を紹介してください」
「自分で探せ」
笑いに包まれたまま授業は終わりを迎えた。
一人沈む猪俣を残して……
「……再提出。どうすんだよ熊谷」
「え? 本提出用のレポートはほら此方に!」
鞄からレポートを当たり前のように取り出す熊谷が猪俣に向けて笑う。
鬼である。
「ひでぇ、熊ひでぇよ。なあ猿、どうしよう」
「え? 俺はカレーと一緒に本レポートだしてるよ?」
さすが猿汚い。
一人だけ評価を下げる気は無かったようだ。
こうして馬鹿共の挑戦は終わった!
『美味しいカレーの作り方』をレポート提出して単位が貰えるという都市伝説は、やはり都市伝説であった。
猪俣のレポートは再々提出までかかる事になった。
「熊も猿も手伝ってくれないんだけど……」
「いや、普通に授業でてれば出来るし、なぁ猿?」
「出ていても寝ている熊ができるのが今一納得できないんだけどな」
単位の結果は以下の通りでした。
猿渡:優(カレーレポートは「美味しそうですね」と評価されていた)
熊谷:良(カレーレポートは「味が全く想像できません。本当に食べれるのですか?」でした)
猪俣:可(カレーレポートは「鶏肉を使ってる時点で論外ですね」と「不可」の判が押されていた)
みなさん、レポートはちゃんと書きましょう。
安易にカレーに逃げては逝けません。
経験者からの忠告だよ!
※1『GNPで内定とった』
就活都市伝説の一つ。
これは友達の友達から聞いた話なんだけど……
ある女学生の就活の話で、最終面接の出来事だったらしい。
面接官の「GNPとは何の略か分かりますか?」という質問に少々上がり気味の女学生はテンパった。
GNP関連は出やすいという噂からしっかりと勉強していたのだが、どうにも思い出せない。
ここで間違えてはいけない、でも思い出せない。
だけど何か答えないといけない、そう思えば思うほど焦りは募るが思い出せない。
そして女学生は脳裏に浮かんだ言葉を発した。
「はい、(G)頑張れ! (N)ニッサン! (P)パルサー! の略です!」
後日、女学生の元に内定通知が届いた。
彼女が受けたのはニッサンだった……
考えるって大切だよね……(前書きより)
ところでこの作品、カテゴリ迷ったんでエッセイにしたんですが変ですかね?