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かくして、楽園を去りし神は終焉を謳う  作者: 十姉妹
第一章 彼らの住む世界
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4  二.神は敬虔なる信徒にこれを与える。

使用お題:『賢者の石、神道、魔法をテーマ・モチーフにした、主人公が混血児の物語』

「あーあ、やっちまったなぁ」



 大きなあくびを隠すことなく出し切ったドムは、大きな掲示板の前で立ち尽くしていた。


 昼頃にのそのそと布団から這い出た後、簡単な身支度を済ませて来てみれば朝一番の目ぼしい任務は他の冒険者に根こそぎ奪われていて、遂行中と書かれた札が吊るされている。


「こりゃあ大人しく素材採集でもすっかな……」


 ぽりぽりと後頭部を引っ掻いて、生産任務の掲示板から適当なものをぺりっと剥がす。

 受付にそれを提示し登録が完了するとギルド本部を後にした。



 太陽が心地の良い日差しを送る中、階段を降りればそこは冒険者の集まるギルド前広場だ。


 ここは南区に位置し、旅を終えて帰還した人やこれから旅立つ人が入り乱れている。

 冒険者のために建てられた宿屋や酒場なども南区に収められていて、中央都市の中でも特に様々な人種を目にすることができる。

 種族間の仲の悪さも冒険者にとってはあまり関係のないことだからだ。


 旅をする者は荷物もさほど多くない。

 ドムはそのまま南門へ向かって中央通りを突っ切り、通行証(これも冒険者の為にギルドが発行した証明書である)をかざして広い草原へ歩を進めた。


 ちなみに西は生産区、東は居住区と言うように都市の中で大雑把に区分けされていて、中央の聖堂から北側が聖堂関係の建物と神道職に準ずる者が暮らしている。


 中央都市ゼウサレムがこのような巨大な都市として君臨しているのは、光の神を祀る人族の心臓部である大聖堂とギルド本部がある為だ。



 今日の獲物は大蜥蜴の鱗と爪の採集だ。


 どちらも武器防具に使うのでかなりの頻度で任務が発行される。


 ドムは近くの湖で体を休めている蜥蜴に目をつけ、背中に背負っている大斧を取り上げた。

 刃は鋭く、直径五十センチもあろうかという蛇の首も断ち切る。


 すり足でじりじりと近づき武器を構える。


 蜥蜴は背を向けていて気づく様子もない。

 注意すべきは凶悪な爪と薙ぎ払う尻尾だ。まずはその尾を断ち切ってしまえばいい。


「うっらぁぁぁ!」


 距離を詰め、雄叫びと共に大斧を振るった。


 飛び起きた蜥蜴の尻尾を容易く断ち切って地面に深々と食い込むが、ドムの豪腕はそれを片手でも引き抜ける。巨人族の得手はその体格ゆえの底なしの力だ。

 尾を無くした蜥蜴は真っ青な血を草木に撒き散らしながら大口を開けてこちらを威嚇してくる。


 身長二メートルあるドムでも、自分と同じくらいの大きさを持つ相手に油断はできない。

 一度食いつかれれば上半身が一瞬にして消え去るだろう。


 相手に動く暇を与えず斧をふるい一定の距離を保つ。


「へへっ、やっぱり冒険者ってのはなぁ、俺の生きがいだぁ!」


 滴る汗をそのままに、口角がにやりと笑みを浮かべる。


 自分はただ迫害されるだけの混血児ではない。



 すっと、人差し指と中指を合わせた指先で大斧をなぞる。

 祝音を唱えると、かっと右手が燃えるような熱を灯した。



「っしゃ、いくぜ蜥蜴野郎! 俺が“灼熱のジャイアント”ドム・ダムだ!」



 神道者の炎を纏って高温に熱せられた刃が大蜥蜴の頭を見事一刀両断してみせる。


 彼は勇猛果敢な巨人族の冒険者であり、神道者であり、炎のエレメントを操る強者であった。


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