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かくして、楽園を去りし神は終焉を謳う  作者: 十姉妹
第一章 彼らの住む世界
3/7

3  一.汝は敬虔なる信徒である。

使用お題:『賢者の石、神道、魔法をテーマ・モチーフにした、主人公が混血児の物語』

 酒が足りなくなっちまったなぁ、と空の酒瓶を傾けて思い至る。



 共に戦線を駆け抜けた強者どもと任務達成のお祝いで大樽を景気良く開けて、今日はめっぽう気分が良い。解散したあとも飲み足りないので一人で酒場をほっつき歩き、その後は冒険者用の宿屋で月見酒と洒落込んでいた。


 のだが、ついに最後の一瓶が終わってしまった。



「っくぁー。今から外に出るのも億劫なもんだぁ」



 呂律の怪しい口をまわらせつつ、どっさりと布団に倒れ込む。

 既に磨き終えた自慢の鎧装備の一式は部屋の隅に安置されていて、ところどころ見える傷跡も男の勲章のようで誇らしかった。


 そのまま寝そべっていても意識が無くなるだけであると、自分の故郷である西南の方角へ跪いて祈りを捧げた。



 男の横顔が、窓から差し込む月光に照らされる。

 その肌の色は濃い茶褐色であった。



 ドムの故郷は、ドワーフの住む西の大きな山脈に三方を遮られた西南の閉鎖的な大陸であった。



 そのためか魔族たちは独自の発展を遂げ、その外見は人間とは違う様々な特徴を持つ者ばかりだった。


 爬虫類の尾や腕を持つ者、

 肉体の部位が複数ある者、

 何かの獣の大きな角と牙を持つ者、


 その他にも魔物と呼ばれるような生物と類似する種族もあったりで、一体どんな環境を乗り越えたのか想像を絶する外見を要するものである。



 人間と大差ない種族もいるが、特徴としてあげられるのは肌の色だ。

 黒、茶、赤、紫など様々だが、人族と比べ肌の色が濃いために区別される。


 そしてその恐ろしい外見から、テイマーの使役する魔物を連想され魔族と呼ばれた。


 ドムも例外ではなく、濃い茶褐色の肌を持つ魔族――その中の巨人族である。

 巨人族は人間と同じ外見を持つが、大柄で身長が三メートルも伸びる。対してドムはせいぜい二メートルと少しといったところだったが、それは親に人間の血が混じっているからだ。


 いわゆる混血児なのである。


 種族と種族の対立が厳しいことは今もままあるが、同じ種族の者同士の結束はとてつもなく堅い。

 他種族の血が交じる混血を良く思わない者も多いなか、ドムはそれを乗り越えて今に至るのだ。

 様々な逆境が彼を強くしたと言っても過言ではない。


 そんな幼少期でも自分を産んでくれた両親をドムは尊敬しているし、両親の信奉する二人の神も強く信奉していた。


 種族によって信奉する神は異なる。


 遥か昔に存在した神族は七柱とされ、それぞれの神は三人の神使を従えたという。



「神よ、今日のこの日を感謝いたします。そしてまた、明日も健やかにあれるようお導き下さい」



 魔族の信奉する火の神に祈りを捧げたあと、都市の中央にある光の神を祀る聖堂へ向かって文言を繰り返した。いつ何時でも、寝る前の祈りを欠かしたことはない。


「うっし、寝るとするかねぇ。明日はギルド本部に行って新しい任務を申請しなきゃなんねぇ……報奨の良いやつはすーぐ誰かに掻っ攫われちまう。これは開館時が勝負にならーな」


 朝はしっかり起きねーとな、と繰り返しながら布団へ潜ると、数十秒のうちに大きないびきをかいて意識は途端に夢の中へ消えていった。



 しかしてドムは、大酒を浴びるように飲んだ翌日に限って運良く起きられたためしは未だに経験したことがない。



 意気込み虚しく、次に目が覚めたのは太陽が真上に差し掛かった頃であった。


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