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いつか、その日が来る前に(2)

今回は対談ばっか。


見上げる空は、青く澄み渡っていた。

それが、とても大きな力で押さえつけられた――手の届かない空だったとしても。

窓ガラスに差し込んできらきらと反射する光に目を細め、カイトは静かに息をついた。

少年は不機嫌だった。 不機嫌、であるように見えたし、実際にそうだったのだろう。 しかしそれに少年自身が気づいていない。

場所は、彼らがよく利用したジェネシスの本社ビル内部にある喫茶店だった。 既になじみの場所となったそこでカイトはカロードと顔を突き合わせていた。

向かいのテーブルに腰掛けたカロードはコーヒーが注がれたカップを傾けながら何も言わず考え事を繰り広げている。

故に場は沈黙に包まれていた。 故にカイトもまた黙り続けるしかなかった。 なぜならここにカイトを呼び出したのはカロードであり、話があるのもカロードの方だからである。

しかし、そうしてずっと黙っているのはカイトには難しい事だった。 深く息をつき、ミネラルウォーターの注がれたグラスを一気に空にする。


「で……。 話ってなんだよ? 改まってさ」


カイトの傍らには松葉杖があった。 まだ万全な体調ではない少年はここまでひとりで来るのも一苦労だった。

そうしてわざわざ足を運んでやったのだから、一緒にお茶して帰る、なんてそんなわけにはいかない。

急かすようなカイトの視線に苦笑し、カロードは窓の向こうに視線を向けた。

何度も何度も、生まれてからずっと見つめてきた世界を覆う光に目を伏せながら。


「もしもの話をしようか」


それが話の始まりだった。


「もしもの?」


「ああ、もしも……『IF』の話だ。 これから先何が起こるのかは全くわからないが、僕は僕なりに未来の事を考えていてな」


「……わけわかんねーな。 何でお前とわざわざこんなところで『もしも』の話なんかしなくちゃならないんだよ。 今はそんな事してる場合じゃないだろ?」


カイト・フラクトルの耳にも宇宙で起きた事件とそれに纏わる事実は届いていた。

しかし、カイトに出来る事は何もなかった。 今カイトの身体は非常に不安定であり、レーヴァテインに乗ることさえ叶わない。

身体にユグドラ因子を埋め込む手術も即行うというわけにはいかない。 何度かの精密検査やそれなりの準備が必要となる。 ただ時間の経過を待つことしか出来ないカイトには常に焦りが付きまとい、今も自分でも気づかないうちに不機嫌な状態になっていた。


「この世界のこと、わかっちまったんだ。 尚更病室で寝てるわけにはいかねえよ……!」


「何故だ?」


「何故って……当たり前だろ?」


「だから、何故当たり前なんだ」


カロードの表情からは真意を読み取ることが出来なかった。 元々人の顔色を伺うのは苦手なカイトは、ただ首をかしげる事しか出来ない。

腕を組み、その言葉の意味を考えてみるもののいい結論は浮かばなかった。


「お前が齷齪したところでどうする。 今のお前に出来る事なんてない」


「……そりゃ、わかってるけどさ……。 でも、じっとしてらんねえよ」


「お前は――この戦いが終わったら、どうするつもりなんだ?」


「――――っ」


答えに詰まる。

乗り出していた身を引っ込め、そっぽを向きながら考える。

この戦いが終わったら――? その言葉は思いもよらないほど胸の中に響き渡り、自分の心が空虚である事を知らしめるかのようですらある。

それに何より驚いていたのはカイト自身だった。 未来のビジョンなど、彼の中には存在していなかったから。


思えば全てはがむしゃらだった。


いつでも全力で、いつでも真っ直ぐに。 そして、何かを守るために戦ってきた。

けれどその戦いはいつでも自分ではない誰かのところに理由があり、それこそカイトの強さだったと言えるのかもしれない。

しかし、いつか。 もしも、この世界の全てが終わったとしたら。

神もなく、人もなく。 争いの果てに荒廃しきった今のこの世界の全てが終わって、生き残ったとしたら。

そこにはきっともう、彼らが戦う理由はなくて。 戦う事にばかりかけてきたその青春の全ては、ただただ空しく胸に残る。

そんな未来がいつか来る事を、考えなかったのは――きっと、それは自分には拝めない世界だと考えていたから。


「俺は……」


窓の向こうに見る景色。

向かいのテーブルを眺めると、そこにはまだ……紅い髪の少女の笑顔が見える気がした。

瞼を閉じれば鮮明に思い出せる沢山の幸福な記憶たちは、悲しみの中でも確かに輝いていた。

カイトはいつでも失ってきた。 あの日、みんなで撮った写真を心の中で思い浮かべ……そうして思いをはせる。

判りあうことなんて到底無理だとしか思えなかった四人の、それでも幸せで充実していた日々。

そのときはまだこの世界の闇も、自分たちのことも、将来何が起こるのかもわからなかった。

ただ好きな人や友達が居て、大切な仲間が居て……そして自分の両手で何かが守れるのだと思えるだけで誇らしかった。

それでも事実はそんなに甘くなく。 愛する人も、最高の親友も……失ってしまった。

みんなが愛した世界を守るんだって、そう何度も自分に言い聞かせてきた。 もう過去のことは振り切って、前に進まなければと考えてきた。

そうして焦りばかりが胸に募り、ただただ戦い続けるのは気を紛らせるためで。 リイドを取り戻したいという気持ちは本当なのに、いつしか目的も手段もおかしくなっていた。


「お前は、羅業事件の時――何を思った?」


「…………」


かつての親友は、過去に縛られて未来を見ようとしていなかった。

そうやって何かを振り切るためにあがき続けているように見えるその姿は、未来を……生きる事を放棄していることに他ならない。 そう、気づいてしまった。

だからこそ叫んだのだ。 生きて、あきらめないで、ちゃんとその先にあるものを見据えていかなければならないのだと。

それは自分に言い聞かせるように。 自らの身体を省みず、いつか消えて無くなってしまうのが当たり前だと思っていた自分自身に。

しかしそれは。 誰かがいなくなるということは。 誰かの心を過去に縛り付ける鎖を増やすという事に他ならない。

命とはそういうものなのだ。 あってもなくても、常に何かを縛り付けるもの……。 それに、気づいてしまった。


「二年前、お前は僕たちラグナロクを憎んでいたな」


「……昔の事を蒸し返すのかよ?」


「ああ、蒸し返すさ。 お前はあの時何故あれ程までに憎しみを抱いていたのか……。 僕は二年、お前という人間を見て。 お前が怒りにとらわれていることなんて殆ど無かった。 そのお前が、あれ程までに嫌悪と怒りを露骨に表したのは、」


「止めろッ!!」


テーブルを叩く音と怒号に他の利用客も、店員も一斉にカイトを見た。

しかしそんなことは構わない。 歯軋りし、静かに息をつく。


「俺はもう、乗り越えたんだ……! 悲しみにとらわれたりしない。 俺は、あいつが……イリアが守ろうとした世界を守る! それが今の俺の戦う理由だっ!!」


「もう、そこにお前の愛した女はいないのに――か?」


胸を穿つような鋭い言葉に、カイトは目を見開いた。


「お前は『乗り越えた』んじゃない。 ただ、『逃げた』だけだ」


「な――――っ」


「『乗り越えた』……そんなものはお前のただの言い訳だ。 実際にお前はまだ、『囚われている』だろうが」


「違う! 俺は……!」


「違わないんだよ、カイト・フラクトルッ!! お前はただ、過去を忘れようと逃げているだけだっ!!!!」


二人の怒声がピタリと静まり返る。

カイトの拳が、カロードの顔面を殴り飛ばしていた。




⇒いつか、その日が来る前に(2)




「――私、ジェネシスに来て、嬉しかった」


エリザベスの言葉にエンリルはただ静かに耳を澄ませる。

エンリルの重大な告白が終わった時、エリザベスが彼女を連れてやってきたのは……人気のない通路の角だった。

運用本部にはそうした人の全くとおらないような通路がいくつか存在し、それが迷宮のような全体図を作るのに一役買っていた。

エリザベスは両手を壁に這わせ、背を預けて天井を見上げていた。 薄暗闇の中に浮かぶその横顔を眺め、エンリルはその隣に佇む。


「ここには、色々なものがあったよ。 ともだち、かぞく……へいわ。 毎日大変な事もあるけど……でも、充実してた。 だって、みんな優しいんだもん。 辛い毎日だって、救いようのない世界の現実だって……そんなの関係ないって思えた」


「……はい」


「あたしね……。 カイトのことが、すき」


「……はい」


「だから、毎日がすごくキラキラしてた。 自分でも驚くくらい、人間の事が好きになってた。 だからかな……いつか、『そういう』未来がさ……。 いつか、平和で。 戦いもなくて……みんな仲良く暮らせる日が来るのかな、とか。 考えてたんだ」


海の中にある暗くて空の見えない研究所では見つけられなかった様々なもの。

知らなかった世界の多くの魅力が、まぶしすぎるくらいに少女の眼前に広がっていた。

そして、初めて人の優しさを教えてくれた……誰かが傍に居てくれる嬉しさを教えてくれた、少年がいてくれた。

だから、毎日が幸福だった。 世界は相変わらずどうしようもなかったけれど、希望はあった。 その先にまだまだ未来が続いていると思うと、期待と勇気がわいてきた。

そんな二年間。 ただただカイトの後について、歩いてきた。 目の前を歩く少年は二年の間ずっと変わらず真っ直ぐで、ただただ真っ直ぐだった。

光の中を歩いていたから、哀しいことなんて見えなかった。 それでよかった。 けれど、現実は甘くなかった。


「あたし……ね? みんなの事、すきだよ。 優しくて……こんなあたしの事も、みんなにひどい事したあたしの事も、仲間って呼んでくれる」


「そうですね」


「みんなには、内緒よ? でもとにかく、あたしはみんな大好き。 居場所、っていうの……くれたから」


「居場所、ですか」


それは、自分が居てもいいんだって思える場所。

作るものではなく、気づけばそこにある暖かい日溜りのように。 不思議と、その場所に足を向けている。


「あたしたち、バイオニクルでさ。 人間なんかじゃないのに……人間と同じように扱ってくれる。 ま、みんなそれぞれ不思議な事情を抱えてる変な集団だから、どっちもどっちなんだけどね」


「ふふ、それもそうですね」


「うん」


「はい」


会話は途切れた。 視線を逸らし続けるエリザベスを優しいまなざしでエンリルは見つめていた。

すれ違い続けている二人の視線がぶつかった時、エリザベスは真剣なまなざしで告げた。


「あんたも、カイトのことが好きなんでしょ?」


「――――えっ?」


思いもよらないほど急な切り込みに反応できず、ただ目を丸くしていた。


「隠さなくても、別に良いわよ。 なんとなくわかるもん」


「あ、いや……ええと……。 なんていえばいいのか」


「好きなの!? 嫌いなの!? どっち!?」


「え、う? あ……ええと……わかりません」


「どっちなの!?」


「…………」


詰め寄るエリザベスにエンリルは困り果てていた。 何度も自分の中にその言葉の答えを探してみたが、思い出せることはそう多くない。

誰かの偽者でしかない自分の存在を認めてくれたカイト・フラクトル。 常に前に進む事に必死で、自らの身を省みない少年。

傷だらけになりながら、それでも努力を続ける姿は確かに『ほうっておけない』と言えるだろう。 なんだか世話を焼きたくなる――そんな存在だ。

それが『好き』なのか『嫌い』なのかというと、少し話がややこしくなる。 それが好意なのかどうか――それはエンリルにはわかるはずもないことだった。

心も、言葉も、知識として知っているだけだった少女は自らの胸の内に感情を抱く事はなかったから。 長い時間、そうして思いを抱かないまま生きてきた代償は、今も彼女の心をぼやかしていた。


「本当に、わからないんです……。 ごめんなさい」


「……ふうん? ま、あたしも最初はよくわかんなかったんだけどね。 一応、勉強したのよ。 人を好きになるってどういうことなのか」


「……?」


「マンガとか、小説とかでね!」


「そうなんですか」


自慢げなエリザベスになんと言えば良いのかわからず、エンリルはただうなずいた。


「……あたしね。 どうしたら、カイトを救ってあげられるのかってずっと考えてた」


少女が見せる表情は悲しみに包まれていて、どれだけ思いつめていたのかが一目でよくわかる。

壁を背に、憂鬱そうに目を伏せる。


「カイトは、ずうっと。 ずうーっと、イリアって人に心を囚われてるから」


「……」


いなくなった誰かに、心を囚われること。

それはとても難しく、一言で解決できるようなものではないし、語れるようなものでもない。

胸の中のたくさんの『大事』を彩っていた何かがすっぽりと抜け落ちてしまった時。


その先にあるはずだった、幸せな未来を想像出来るだろうか?


「カイトは、イリアが好きだったんだよ。 イリアもそう。 だから二人は生きていれば、ずうっと。 ずうーーーっと、幸せなことが続いていたはずだし、それを二人とも考えていたはずなの。 なのに、カイトはそれをしなくなった」


自らの身の危険を顧みない戦い。 自暴自棄とも言えるような愚直なまでの前向きさは、生きる事を放棄しているようにしか見えなかった。

それは彼もまた大切な未来のかけらを失い、その先にあるはずの幸せを信じられなくなった人間である事を示していた。


「そういうの――辛いよ。 幸せな未来が信じられないから、死んでしまってもいいなんて。 あたし……辛いよ」


「……はい」


未来も、過去も、信じられるものなどなかった。

『居場所』も、『理由』もない命。 さまよい続ける世界の中で、自分を必要としてくれたのは常に孤独な一人の男だけだった。

その男に仕えることだけが理由で意義で、だからそこが居場所だった。 それ以外なんて何もなくて、だから何もかもなくしてしまった。

心が存在することさえ絶望を彩るような日々を壊してくれたのは、やはりカイトだった。 誰かと同じ顔をして、誰かの代わりでしかない自分に笑顔で手を差し伸べてくれた。

そんな前向きさが。 そんな当たり前すぎるような自然な姿が。 自分はここにいてもいいんだと、言ってくれているような気がした。

でも、少年はいつも焦っていた。 何かに追いかけられ、逃げ続けるような日々。 それを痛いほど判ってしまうのは、エンリルもまた過去に追われ今を見失っている人間だったからだろう。


「わたしも、生きる意味も、生きる未来も思えませんでした」


それでも、ここにいて。


「もしかしたら、わたしがいきている未来も……誰かと一緒に居る未来も、あるんじゃないかと思えるようになったんです」


それは、彼女の頭をかつて撫でた一人の男が笑って言った事。

未来は他の誰のものでもなく自分の物。 それを思い出させてくれたカイトに、特別な思いが無いとは言い切れない。


「でも、どうして急にそんなお話を……?」


「別に急なんかじゃないよ」


向かい合い、エリザベスはエンリルの手を両手で握り締めた。

包み込まれる暖かさに目を丸くしていると、エリザベスは決意を固めるように深呼吸し、語り始める。


「あたし、ずっとあんたたちの事が嫌いだった」


エリザベスは、極端な話イヴの模造品。

イヴにはなれない、なりそこなった欠陥品。

みなが求めるのは『本物』で、だから自分はいらないものなのだと常に言われているような気がしていた。


「偽者なら、あたしはなんなの? あたしはどうして生きてるの? 誰も答えをくれないし、あたしにはわからなかった。 だから本物が憎くて……! 本当にどうしようもないくらい、憎かった」


自分は代えの聞く失敗作なのに、どこかでオリジナルは光を浴びて誰かに求められている。

生きれば生きるほど存在の意味がわからなくなるような日々は心を砕き気をおかしくする。 絶望的にゆがんだ世界への憎しみは、全てオリジナルへと収束する。


「だから全て壊れちゃえばいいって思った。 自分を創った誰かも!! この世界も!! あたしの居場所を最初から奪ってるオリジナルも!! だから、あんたたちが大嫌いだった。 その顔がこの世界から消えてなくなれば、自分ももしかしたら誰かに必要としてもらえるんじゃないかって……そう思ってた。 でも、」


一緒にいたいと思える人がいて、その人は自分のために叫んでいた。

自分を縛り付けていた現実を次々となぎ払って、そして最愛の兄にさえ刃を突きつけ、間違いを叫んだのだ。

それはがらくたの世界を砕くような衝撃だった。 自分は自分で、誰かを憎まない生き方も出来る――そう思えたから。


「でも、何もかわんないよあたしたち。 あんたも、エアリオも……。 ほんとはわかってたのに、あたし……っ! 何にもかわんないよ、あたしたち。 何にもなくて。 みんなに否定されて、利用されて……」


「……エリザベス、さん」


「ほんとうは……すごく……。 怖くて、仕方ないの」


気づけばエリザベスは涙を流していた。 決壊したかのように一気に流れ出すそれはどうしようもなく、とめどなく流れた。


「あたし、エアリオにひどい事たくさんしちゃったから……。 いっぱいいっぱい、痛くしちゃった。 ほんとはあたしが一番、あの子の苦しみ判ってたはずなのに……っ! あたし、弱くてえっ!!! ひどい事たくさんいっちゃったよぉっ!!」


すがりつくエリザベスの身体を抱きとめ、エンリルは目を閉じる。

服の上から食い込む爪の痛みも、きっと彼女の心の叫びの一部なのだろうと思う。


「いっぱいいっぱい、みんなにひどい事したよ! だから怖いの!! みんな、いつか『いらない』って言うんじゃないかって思うと、怖くて眠れない……! 本当は今だってそう思ってるかもしれない! だって『許して』なんていえないよおっ!! あたしたちラグナロクがいなかったら……おとなしく死んでたらさあ! リイド・レンブラムだって、いなくならなかったかもしれないんだから………・・っ」


沢山の人が悲しむ顔を見て、日に日に積もる罪悪感はしかし誰にも打ち明けることが出来なかった。

誰かに許しを請う事など出来ない。 それは紛れも無く自らが行ってきた罪の結果なのだから。


「あたし、エアリオに謝れてない……! 記憶がなくなったって聞いたとき、ほっとしたんだよ!? なんであたしこんなにヒドイのかなあっ!! やだよ、あたし……みんなと離れたくないよお! ずっと一緒にいたいんだよおっ!!!」


「……」


叫び声が途切れ、代わりに嗚咽が聞こえるようになるころ、エンリルは自分の意思で口を開いた。


「そうですね。 誰も、許してはくれないでしょうね……」


それは自分にも言えること。

どうすれば許せるのか。 どうすれば許してもらえるのか。 どうすれば乗り越えられるのか。 どうすれば忘れられるのか。


「だから、辛いよ……! なんで、あんたは……そんな風に平気な顔してられるの?」


涙でぐしゃぐしゃになった顔でエリザベスはエンリルにいった。


「どうしてそんなに我慢してるの……!?」


肩を掴み、揺さぶりながら。

それはとても感情的で幼稚だろう。 しかし、エンリルの胸を打つ。


「あんた、ずうっと。 ずうっと、この世界の嫌な事見てきたんでしょ? ねえ、どうして平気な顔してるの! おかしいよっ!! なんで泣かないの!? 哀しいんでしょ!? さびしいんでしょ!? そういうのいえないなんて、そんなのすごく悲しいよっ!!」


目の前の少女が、伝えたかったこと。

二人は、同じものだった。

エンリル・ウイリオという人間の代用品に過ぎず。

だから、居場所もなければ心もなかった。

そして今、人ですらない、全てを見てきた存在にエリザベスが訴えかけたかったこと。

それは悲しみを打ち明けるのではなく、悲しみを打ち明けてほしいのだという不器用な想いだった。

同じ誰かを好きになり。

同じ運命を背負い。

そして同じく、沢山のものをあきらめてきたからこそ。

沢山のものを、傷つけてきたからこそ。

わかってあげられるのはきっと他にいないから。


だから。


「泣いてよエンリル……! あたし、一緒に泣いてあげるからっ!!」


抱きしめていたのだろうか?


それとも、抱きしめられていたのだろうか?


大人だったのだろうか?


それとも、子供だったのだろうか?


わからないまま、エンリルは強くうなずいていた。

微笑みながら、抱き合いながら。

生まれて初めて頬を伝った熱い涙が零れ落ちるより早く。


あの人が言っていた言葉を、思い出していた――。




「終わりが迫ってるな」


夜明けの水平線を眺めながらキリデラが笑う。

ずらりと並んだ沢山の機体。 そして海岸線に剣を携えて立つエクスカリバー。

そのコックピットの上に立ち、ルクレツィアは遠い目で世界を眺めていた。


ユニーク一万アクセス&小説家になろう!開始一周年でございます。

だからなんだって? ええ、それだけでございます。

何はともあれありがとうございます。

えー……。 恒例の感謝の念を送りたいのですが、今チョット忙しいのでまたあとでってことで!!

それではさようなら!


っというわけで、追記。

あー。最近更新ペース落ち気味ですねー。

ぽつぽつメッセージを貰ったりしましてありがとうございます。全部読んでますが、なんか返信の仕方よくわかんないので返事届かない人もいるでしょうね!!!!


えー、しかも間違ってPV一万って書いてましたね。PVは五万くらいですね。すいません。

ていうかもう本家に追いつきそうな勢いだなあ。本家の人気がないのだろうか?いや、本家から読まないとダメな設計だから、本家と同じくらい読んでいるひとが…いや、飽きて読まなくなる人が…(エンドレス)


小説家になろうに初めて投稿したのは『久遠の月』という小説でした。それから一年、少しは文章書くのがうまくなったでしょうか……。

元々小説書きじゃなくてTRPGのGMだった僕は文章作法とかも全然なのでど〜〜〜にもなりませんが、一年も経てば少しはましになっていると信じたいです。


レーヴァとももう長い付き合いですね。半年くらいはこれだけ書いてるような気がします。明らかにわかりづらい小説なのに付き合ってくれる人々には頭があがりませんね。


さて、どうせ一周年なので好きな事を書いていいですよね?



誰かレーヴァテインのデザインしてくれないかなあああああああああああ!!!!



ロボットとか難しすぎる。でも、自分の中にあるはずのレーヴァのイメージが結構あやふやなのはホントどうしたらいいんでしょうね?どうにもならない?はい、そうですね。

キャラクターって結構読み手の好き勝手でいい気がするけど、ロボットってイメージしづらくないですか?なんか「こういうの」っていう例があると、こっちとしても書きやすいのになあ。

ロボットのデザインとかどういう人がしてるんでしょうね?御願いしたくても誰に御願いすればいいのかわからない。

うーん、白黒でいいからほしいです。狂喜乱舞するのになあ。


まあそんなことよりもとりあえず後半をがんばらなきゃなあと思います。

予想斜め上の展開になれるようにがんばろっと。


それでは、皆さんに感謝のオーラを送って終了です。


むむむ……。


はい、さようなら〜。

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