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楽園と、呼ばれた場所で(1)

指おれてた。執筆速度大幅ダウン。


「だから、そんな事俺に聞かれてもわかんねえよ〜」


少年、ミリアルドは困った様子で呟くと、腕を組んだまま気の抜けるような笑顔を浮かべた。

世界有数の巨大企業ジェネシス。 そのアーティフェクタ運用本部訓練施設は、二年前と比べ随分と様変わりしていた。

元々なんでもありという言葉が似合う場所だった。 道場のような一角もあれば、シミュレータによる機動兵器訓練やシャワー施設まである場所だったが、今は立派な机と椅子、さらには黒板のようなものまである。

ようなもの、というのは厳密には黒板ではなく、立体映像に直接書き込むことが出来るように見えるシステムであって、実質黒板と同意義だと考えていいだろう。

なんにせよ問題は訓練施設の内装が変わった事ではなく、その訓練施設に幼い子供たちの姿があり、教壇にはミリアルドが立っているという事である。

ジェネシスの制服に身を包んだ小さくてきらきらした無数の眼差しを前に、飄々とした性格のミリアルドも冷や汗を浮かべていた。

スヴィア・レンブラムが計画したレーヴァテインプロジェクト。 その一環で生み出されたカスタムクローン…通称『バイオニクル』であるミリアルドは、無論学校教育を受けておらず、自分から率先して勉強をした経験もない。

ゆえに、勉強のことを訊かれたところで答えられるわけがなかったのである。 それがたとえ小学生クラスの問題だとしても。


「ミリアルド〜。 かけざんってなに〜?」


「ああ、それくらいは知ってるぞ。 かけざんってのはな…走りながら相手を切りつけることだ」


駆け斬である。

寒いことを言っているのは本人が一番理解している。 ちなみに子供たちはそれを信じてしまい、尊敬の眼差しをミリアルドに向けているのである。

もう、嘘とはいえなくなる。 垂れ目のゆるい顔をさらに緩ませ、苦笑を浮かべる。


「参ったなあ…。 早く帰ってきてくれないと困るんだけどなあ…」


と、ぼやいた直後の事だった。 自動ドアが開き、子供たちが待ちに待っていた女性が姿を表した。

長い、黒髪の女性。 非常に立派な身体つき…出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。 年齢は今年で二十六になる、一応『一児の母』。


「みんなー、元気にしていたかしら?」


「「「 ママーっ!!! 」」」


途端、女性に向かって駆け寄っていく子供たち。 その津波のような光景を眺め、ミリアルドはほっと胸を撫で下ろした。


「助かったぜ…。 俺は勉強さっぱりだからさ、教えてやってくれよ、ママ」


飛びついてくる子供たちをひっぺがしながら立ち上がり、朗らかな太陽のような微笑を浮かべる女性。 名前はリフィル・レンブラム…元、ジェネシスアーティフェクタ運用本部司令官である。


「あなたも少し勉強したほうがいいわよ? ミリアルド」


「勘弁してくれー…。 それよりほら、あとはママに任せるから」


ぐいぐいと教壇にリフィルを押し出すミリアルド。 逆らう事も出来ず壇上に立たされたリフィルだったが、ここで問題が発生する。

リフィル・レンブラム―――本名オリカ・スティングレイ。 かつて異世界可能性よりユグドラシルを経由し『この世界』の、ヴァルハラにやってきた女性。

彼女の過去はオリカ・スティングレイとほぼ同一であり―――つまりそれは、義務教育すらほったらかしにしてきた事を意味している。

さて、ではなぜそんな勉強の出来ない女が司令官などで居られたのか。 それは大いに疑問なところであるが、その疑問はとりあえず置いておく。

何はともあれ問題は―――目の前の子供たちの、『ママならなんでもしってるよね?』という輝きに満ちた期待の眼差しなのだから。

しかしリフィルは腐っても大人である。 大人ならば大人なりのやり方で勝負をするまでだ。


「今日のお勉強はミリアルドおにいちゃんに教えてもらったから、終了よ」


「おーい、ママー?」


「さあ、もうお昼ご飯にしましょう。 あと、せっかくの休日にまで勉強しなくてもいいのよ。 子供は学び、遊び…その両方のバランスが良くないと大きくなれないんだからね」


「「「 はーい! 」」」


「いや…ママ?」


食堂に向けて移動を始めた子供たちを見送りながら、リフィルは腕を組んで静かに笑った。


「ミリアルド。 これが大人というものよ。 戦わずして勝利する―――そういう狡猾さがないと司令は勤まらないわ」


「…そっすか」


肩を竦めて笑うミリアルド。 特に反論するつもりはない。 自分もまた難を逃れたのだから、その手段の是非などどうでもいいことだ。

二人も肩を並べて訓練室を後にする。 相変わらず無駄に広い廊下に出ると、食堂に向かうリフィルの背後でミリアルドが立ち止まった。


「俺は野暮用があるからまたあとで」


「あらあら? まあ、それは構わないけど…あっ、そうね。 あなたは忙しいんだったわね」


「まぁね。 ま、そんなわけでママはそっちをよろしく」


「了解したわ。 忙しいのに子供を預けちゃってごめんなさいね」


「構わない構わない。 だって俺たち、家族だろ?」


満面の笑みを浮かべ、ポケットに両手を突っ込むと走り去っていくミリアルド。

その無邪気な後姿を見送り、リフィルは頬に手を当て微笑んでいた。


「変われば変わるものね」


それが、いい変化ならば大歓迎だ。

踵を返す。 足取りは軽く、成すべき事は明白だ。

ジェネシスという組織は、二年前とは徐々にその在り様を変えようとしていた。




⇒楽園と、呼ばれた場所で(1)




「こちら本部管制室、三番滑走路異常なし!」


ジェネシス本部、第二司令室。 三百六十度見渡す限り広がる立体モニターの中、黙々と作業を続ける管制官たちの姿があった。

その中の一人、管制官メアリー=メイはインカムを耳につけたまま元気よく指差し確認するとモニターのチェックに入る。

今日は大事な大事な世界が変わる日―――少なくともメアリーはそう感じていたし、それはあながちハズレでもない。 何より彼女の直感ほど、馬鹿に出来ないものもない。

淡いオレンジ色の髪をツインテールに結び、同じく淡く光沢するオレンジの瞳を瞬きさせずに一瞬で数百のモニタをチェックするその姿は少々非現実的だ。 何より彼女の外見年齢が十代前半である事を考慮すれば、この大人が多く在籍している第二司令室でも浮いている状態にあるのは言うまでもないだろう。

その異質な存在感から周囲からつまはじき者にされる事も決して少なくはなかったが、メアリーはそんなことでへこたれるような心の持ち主ではなかった。


「お疲れ様、メアリー。 異常はない?」


「あっ、ユカリさん! はい、異常はないです!」


背後からの声に振り返ると、そこには先輩である管制官のユカリ・タリヤの微笑みがあった。 隣の空席に腰掛けるとメアリーの作業中ディスプレイを眺め、ため息をつく。


「相変わらず仕事はばっちりね。 私生活もしっかりしていれば完璧なのに」


「てへへへ〜、恐縮です〜」


「ほめてないのよ…? でも、こんな大事な日にごめんなさいね。 これお詫びってわけじゃないけど、差し入れよ」


ミルクティーと、ドラ焼き。 一見相反する組み合わせだが、それほど不味い組み合わせというわけでもない二つを紙袋から取り出すと、瞬く間にメアリーの瞳が輝きはじめる。


「わああっ! 先輩、ありがとうございますーっ! ごちそうさまでした!」


恐ろしく早かった。 一口である。 口の周りを餡子で汚しまくるその天使のような笑顔を見てユカリはハンカチで口元を拭う。

そう、たとえ異質だからと拒絶されたとしても、それより多くの人々に好かれる才能を持つ少女…それがメアリー=メイなのである。

特に先輩に位置するユカリにしてみれば、このどうしてもほうっておけない少女は常に目の届くところにおいておきたいほど心配で愛くるしい存在だった。

仕事は完璧にこなす彼女だったが、私生活は表現に困るほどだらしがない。 故に時々致命的なミスを犯す。 無論、私生活でだが。


「それにしても、もう二年か…。 たった二年でここまで漕ぎ着けたんだから、たいしたものよね。 『新司令』は」


「んぐんぐ…? 新司令って…今の司令の事ですよね?」


「元々はリフィルさんがやっていたのよ。 今はもう現役を引退してしまったけれどね」


その理由は様々だったが、ひとまずここで語るべきことでもないのでユカリは何も言わなかった。

そう、メアリーは今から一年前にジェネシスにやってきた新入りだ。 様々な事情を抱える彼女だったが、まだ社歴は浅いと言える。

故にジェネシス内の様々な事情をまだ彼女は知らず、ついでに言えば知らずに居てもいい事も多かった。


「あ」


モニターの一つに、蒼いヘイムダルの姿が浮かび上がる。

興味があったのか、メアリーはその画面を無意識に拡大していた。 広がった画面のヘイムダルは青空を飛翔しながら、七色のカラフルな煙を吐き出しながら、複数で編隊を組み、アクロバティックな飛行を繰り広げている。

そう、今日は祭りだ。 それもジェネシス、ヴァルハラだけではない。 この世界にとって大変めでたい、大きな祭りを目前としているのである。

見事な飛行を決めてみせる蒼いヘイムダルにメアリーは見覚えがあった。 というより、そのパイロットを彼女は知っている。


「先輩先輩! カイトくん、かっこいいですねえ〜」


「そうねメアリー。 でも仕事しましょうね」


「はうあ!?」


ユカリに頭を小突かれ舌を出して笑いながら監視を再開する。

そのモニターの向こう側の景色を、町中の誰もが眺めていた。

無論それはジェネシスという企業の本社ビル最上階―――社長室からも眺める事が出来る。


「うんうん。 やっぱり派手なのが一番効果的よねえ」


双眼鏡を使い、ヘイムダルの姿を見上げる高級感の溢れるスーツに身を包んだ若い女性が一人。

事実、二十歳にも満たない年齢の彼女こそ、ジェネシスの社長、カグラ・シンリュウジその人であった。

ハイヒールのサンダルを組んだ足の上で躍らせながら舌なめずりするその背後から、長くて頑丈そうな手が伸びて双眼鏡を奪い取る。


「今いいところなんだけど…ハロルド」


白髪の混じる金髪をオールバックに固めた中年男性が双眼鏡を手に取りながら片目を閉じ呆れた様にカグラの肩を叩く。


「そんな事よりも今はお仕事を優先していただきたいのですが? 社長」


「知ってる? 最近は女の子の肩に触るだけでセクハラになっちゃうんだよ? 『副社長』」


にやりと笑ってみせる社長だったが、それが本気でないということくらいハロルド・フラクトルには理解出来ている。

元は対神兵器の開発を行う技術者の一人だったハロルドだったが、今はカグラ自身の引き抜きにより副社長というカグラの右腕を演じている。

無論、その男にはそれだけの手腕があり、かつては同志を募りクーデターさえ成功させかねたほどの男だ。 そうした意味ではすぐそばに置く事により首輪をつけておくという意味もあり、しかしそれ以上にハロルドが有能でありカグラがそれをあてにしているというのが大きな理由だろうか。

それに二年前のクーデター事件時にこの企業が良くなっていく為に邪魔な存在はハロルドがあらかた粛清してしまっていた為、ハロルド自身今はもうこのジェネシスという企業を転覆させる意味がない。

何よりも今この組織はハロルドがかつて願った方向へ進もうとしているのだ。 それを手助けする意味はあっても邪魔をする意味は皆無。


「それにハロルドだって息子の活躍を見ておきたいんじゃないの?」


「見るまでもありませんからな」


「ほほう、親馬鹿」


「なんとでも。 自慢の息子ですよ」


ふと、その荘厳な顔が一瞬だけ柔らかく微笑んだように見えたのをカグラは見逃さなかった。

子供のように無邪気な、けれども獲物を狩り捕る獣のようにぎらぎらと輝く瞳で窓の向こうに見えるお祭り騒ぎを眺め、呟いた。


「色々と警護の方、手回しをお願いね。 な〜にがおきるか判ったもんじゃないんだから」


「無論です。 ジェネシスが各国難民に対し扉を開いた今こそ、テロの絶好のタイミングですからな」



「ひ〜ま〜…」


青空が垣間見える滑走路。 ジェネシス第二本部から続く四方八方に伸びるレールの上に並ぶ数え切れない機体の中、銀色の髪が風に吹かれてきらめいた。

その持ち主である小柄な少女は武器機材のコンテナの上に腰掛け足を投げ出して退屈そうにあくびをしてみせる。

少女、エリザベスは一応警備を担当するパイロットであり、専用の機体まで所有しているエースの一人であったが、何事も怒らない式典会場は十四歳の少女にとっては退屈きわまるものだったらしい。


「あたしもアクロバティック飛行のほうに行きたかったのになぁ…」


「そういうなよ。 一応これが俺たちの仕事なんだからな」


気さくな声に振り返ると、エリザベスの兄に値する少年、ミリアルドが笑いながら立っていた。

しかしすぐさま視線をそらし、つれない態度でエリザベスは唇をとんがらせて言った。


「何しにきたのよ」


「はっはっは。 そんなあからさまに嫌わなくてもいいだろ?」


「あんたを好きになる理由がないわ」


「そうかいそうかい」


腕を組んでへらへら笑い続けるミリアルド。

二人はかつてラグナロクと呼ばれた組織が存在した頃から不仲であり、顔を合わせる度に厄介なことになっていた。

無論、その原因はほぼ一方的にエリザベスがミリアルドを嫌っているからであり、ミリアルドのほうは避けられているから自分から率先して話しかけないと、そんな気を使うような不仲さだったが。

ラグナロク所属構成員の100%はバイオニクルであり、それ故に独特の家族感を持つ彼らにとってミリアルドはエリザベスの兄で間違いないのだが、彼女はミリアルドを兄だとは考えていなかった。

むしろ大好きな兄、カロードと自分より親しくしている可能性があるミリアルドをライバル視…もっとストレートな表現をすると、やきもちを焼いていたわけである。

それをミリアルドは知っているので、あまりエリザベスを触発するような行為は控えてきた。 ラグナロクというアンバランスな組織を支えていたのは彼なのかもしれない。

エリザベスの隣に立つと、滑走路に飛び込んでくるアクロバティック担当の機体たちが戻ってくるのを眺め、少女の方を叩く。


「ほら、戻ってきたみたいだぜ。 迎えに行かなくていいのか?」


「な、なんであたしが迎えに行くのよ…? あんなやつのためにここで待ってたわけじゃないんだからね」


「ん? 俺が言ってるのはお兄さんの事であって、カイトのことじゃないんだけどな」


「んがあっ!?」


顔を真っ赤にしてミリアルドに殴りかかるエリザベス。 しかし少年は飄々とその攻撃を回避し、コンテナを飛び降りる。


「危ないだろ」


「死ねっ!!」


「何の騒ぎだ?」


二人がそうしてじゃれあっていると、静かな声が聞こえた。

蒼い髪に蒼い瞳。 中性的な顔立ちでありながら強い威厳を放つ眼差し…。 そこには二人の兄に該当する人物、カロードが立っていた。

その傍らに立つ金髪の少年は、長い髪を括っていたバントを外しながら人懐っこい笑顔を見せる。


「よう! エリザベス、元気なのはいいが、そんな高いところに立ってるとパンツ見えるぞ?」


その言葉を吐き出した直後、2メートル近い高さを持つ鋼のコンテナから飛び降りた少女の靴が、カイト・フラクトルの顔面を踏みつけていた。




「おーいルクレツィア〜…。 そろそろ急がないと式典に遅れるさ…」


「う、うむ。 判っているのだが、いかんせんドレスというものは慣れていなくてな…」


ヴァルハラから遠く離れた地、旧ヨーロッパ領土、新国家『エルサイム』。

その中心部に存在する巨大な古代の城の一室でルクレツィアの着替えは難航していた。

複数の女性に囲まれ、恐ろしく派手な純白のドレスの着用を迫られているルクレツィア。 まだ格好は騎士のままであり、ドレスを持った女性たちは笑顔を浮かべながらじりじりとルクレツィアに近づいていく。


「さあ姫様…! そろそろお着替えの時間ですわよ…!」


「いや、待ってくれ…! 何故そんなフリフリのドレスを着用せねばならんのだ…! このままでいいだろう…!」


「そんな薄汚い甲冑姿で式典に出るわけには行きませんわ。 エルサイムの姫君として!」


「う、うすぎたな…」


軽くショックを受け、冷や汗を流すルクレツィア。 しかし人間が出来ている彼女はそこには反論せず、涙ぐみながら必死に後退を試みる。


「そもそもなぜ姫なのだ!? 一応私は王のはずだぞ!?」


「いえ、姫様はおいくつになっても姫様ですわ」


「何故だ!? シド! 助けてくれシドォーーーッ!!!」


「おいらに言われてもなあ…」


巨大な両開きの扉を背にリンゴをかじっていたシドは扉の向こう側での光景を想像しながらその場を後にする。

どうせこのまま待っていてもしばらくルクレツィアは出てこないだろう。 ならば少しほうっておいて時間を潰す方が賢明だ。

長く続く石畳の回廊から望む町には自然があふれ、かつてこの場所に存在していた国を彷彿とさせる。

しかしそのかつての栄光を知らないシドにしてみれば、その景色は色々と複雑な思いを抱えるものだった。


「ルクレツィアのやつ、女物の服着るのあんなに嫌がるとは思わなかったなあ」


彼女が普段から男性用の衣服を着用していたのは周知の事だったが、女性用の服を恐ろしく拒絶するというのはパートナーのシドでも初耳だった。

何気なく見下ろす城の中庭。 広大な空間を持つその場所に、遠めに見てもかなり目立つ真紅の髪が靡いていた。

足を止め、窓際に立ち手を振る。


「おーい! こっちこっち!」


少年の声に振り返る少女。 真紅の髪の合間から覗くその瞳はやはり真紅。

宝石のように輝く瞳で少年を見上げるその傍らには、やはり同様に真紅に包まれた巨大な兵器の姿がある。

人型のそれは膝をつき、まるで主に頭を垂れているかのように静かにそこに鎮座していた。


「ルクレツィア、まだ時間かかりそうさ。 悪いけどもう少し待ってくれるかー?」


「ええ、構いませんよ。 大丈夫です」


そう応えて笑う少女。

漆黒のスーツ姿にエルサイムのロングコートを羽織った少女―――アイリス・アークライトは静かに手を振る。

振り返り、見下ろす海の彼方。 二年も戻らなかった故郷に、もう直ぐ向かう事になる。


「懐かしいな」


少女は呟く。 あふれんばかりに降り注ぐ太陽の輝きに手を翳し、静かに目を細めた。


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