風の中の葛藤05(投稿初日の自問自答part3)
私は恋がしたい。映画に出てくるような甘いロマンスをいちどは味わってみたいと思っている。けれども現実にそんなことが起きることなんてない。今まで全くモテなかったわけでもなかった。小学生のころは2回、ラブレターを貰った。けれどもほとんど親しくしていたわけでもなかったので一体私に何を求めているのだろうかと首を傾げてしまったので2回とも断った。私の見た目は優等生だから、もしかしたらピュアで純真な女の子だと思われてしまってはいないだろうかと不安になったからだ。私は自分でいうのも可笑しいかもしれないが普通であると思う。真面目と言えば真面目だし不真面目と言えば不真面目である。私の見た目から想像するその人達の思い描く幻想を自分自身に投影されるのが怖かったから断った。それに私はその二人の事を良く知らなかったので好きになりようがなかった。中学三年生の頃に、もう少しで恋人に慣れそうな男の人がいた。私は中学時代陸上部でグラウンドを走り回っていた。同じ陸上部の一つ下の男子生徒に惹かれていた。いつも無邪気で会話すると楽しい。女性に対する気づかいもあってこの人となら上手く恋人同士になれると思う気持ちがあった。最初は話しかける勇気がなかったが少しずつ仲良くなっていった。8月の最後の市大会にむけて猛練習をしていた時にグラウンドの片隅で二人いつものように楽しくおしゃべりをしていた。会話が途切れ暫く沈黙した後に彼が私の手を握ってくれた。私は彼の突然の行動に胸がどきどきした。そうして彼が私と付き合ってくれないかとたずねてきた。私は胸の高鳴りの中でこう言った。
「私のどこが好きなの?」
すると彼は自信のなさそうな笑顔を浮かべてこう答えた。
「山下さんなら僕でも付き合えるかなあと思って。」
自分でも付き合える程度の女。それは彼が自分に自信がないから思わずそう言ったのかもしれないけど、私は傷ついた。彼にとっては自分の女としての魅力はその程度のものなのかと。その言葉を聞いて私は彼から手を放し、ごめんと答え断った。
私は子供のころ、親や姉から性格が細かいと言われていた。小学生に入ると何を言いたいのかよく分からないと言われるようになった。中学生になると、めんどうくさいと言われるようになった。じぶんの気持ちを素直に言いたいタイプだからだろうか、それともやはり細かすぎて、人の筋が通らない理屈が納得できない性分のせいだろうか。そんなことがあって未だに男の人と付き合ったことがない。
本当は好きな男の子がいる。
幼馴染の大介だ。
彼は私が小学生に上がる前に私が大好きだったお爺ちゃんが亡くなったあと、悲しみに暮れる私の前に現れた。遠くの街から私が住むマンションに引っ越してきたのである。すぐに仲良くなった。いつも二人で一緒にいて、二人の仲が深まるにつれてお爺ちゃんが死んだ悲しみとサヨウナラすることができた。毎日二人で近所の運動公園でキャッチボールや竹とんぼを使って遊んだりした。私たちはバカップルだった。いつも、色んな人に私たちは将来結婚すると誇らしげに自慢していた。けれども小学生の高学年になると徐々に彼は私と距離を取るようになった。最初のきっかけは昼休みの時間に、今晩私の家でご飯を食べようよと誘ったことがあった。彼はその言葉を無視した。わたしがしつこく誘うと教室の外に逃げるようにして去っていった。私は傷ついた。でももう小学生高学年になると周りから冷やかされるから仕方がない事だということは分かっていた。でも何も逃げることは無いだろうと悲しくなった。それから彼は私といるとき段々と無口になっていった。時々話す事と言えば私を否定することだ。肌が荒れたらちゃんと食生活に気を付けているかとか、目の下にクマができているけど、ちゃんと眠れているかとか。私の容姿の悪さを指摘する、そういう癖が嫌だからそのたびに私は腹が立ってくる。気づいていても言う必要ながないからだと思うからだ。言わなくてもいいことばかり言ってくるようになった。母への不満を語れば私に問題があるように迂遠に私の事を否定してくる。でも彼のいう事は正論だから何も言い返すことができない。なんだか私の事をイジメているのじゃないだろうかという気になら。わたしのことがきらいになってしまったのだろうか。私は中学に上がることに彼と少しだけ距離を置いた。けれども彼は距離があいたぶんだけ私に近づいた。彼のそういう態度が私のことを嫌いなのか好きなのかよく分からなくなるから余計に混乱する。時々一緒に登下校することがあるけど、お互いあまり話さない、私が愚痴をこぼせば彼が正論を持ってそれを否定するから何も言いたくない。
そんな関係が三年間続いた。
高校も同じ学校になった。彼の学力からするともう少し上の高校に行けたはずなのになぜか私と同じ高校を選んだ。その選択がやっぱり私の事を好きかもしれないいう気持ちに傾いてします。けれども相変わらず二人の間には溝がある。
そうして私自身も本当に彼の事が好きなのか分からない気持ちもある。
ずっと一緒にいたから兄弟みたいな関係で愛ではないのかもしれない。
私は本当に彼の事を愛しているのだろうか。
そんなことを事を考えて歩いていると木下第二高等学校の校門に辿り着いた。