バンディー編ー2
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ガルディアン第9支部管轄内ーバンディー基地。
ガルディアン第9支部管轄内から最も離れた場所にクレアシオン社が昔に破棄した工場がある。
小規模ではあるが、数十年前までここでも機体や武器等の開発・生産等を行なっていたが、侵略者の襲撃により壊滅した。
再び侵略者に襲撃された場合、損失が拡大するのを恐れたクレアシオン社は、そのまま工場の破棄した。
案として別の防護壁内に支社を建設することも検討されたが、既に防護壁内に支社を建設できる程、土地に余裕はない。
そもそも防護壁内に入居できず、外部に残された人々が大勢いる中、支社を建設したとなれば世論が黙っていないだろう。
ガルディアンのように世論の評価を落としたくないクレアシオン社は、本社のみで請け負うことを決定した。
故に支社や工場が建設されることもなく、侵略者に破壊された工場は、そのままの状態で残された。
その後、クリミネルが少ない資金と資材で修復し、拠点として利用されることになる。
少ない資金と資材で修復した為、ガルディアンが所有する基地よりも粗末な外観をしている。
しかし、拠点として十分な設備や機能が整っており、5機までならエグゼキュシオンを収容できる。
また、人が密集しなければ侵略者に狙われる可能性も低い。
だからこそクリミネルは、協力関係にある小規模犯罪組織バンディーに無償提供し、現在は彼女たちの基地である。
「待たせたわね」
狭い通信室で誰かと通信回線で会話をする1人の少女。
彼女の名前は、ルーニャ・ラレンツァー。
踊り子衣装のような赤いへそ出し衣装に身を包み、椅子に座って自身の美脚を組む。
『スーツはどうだった?』
相手側はボイスチェンジャーを使っており、ノイズ混じりの聴き取りにくい声が、スピーカーから聞こえてきた。
「妹たちから好評だわ。前まで着てたガルディアンのダサいスーツより良いって」
ルーニャは、自身のウェーブがかかった黒髪を後ろで束ね、赤茶色の瞳で『SOUND ONLY』と表示されているディスプレイに向かって話す。
『我々が開発した試作品を君のデザインを元に改良した甲斐があったようだな』
「感謝してるわ。機体の予備パーツや食料まで提供してくれて」
ビナミラやフージャが身につけていたセクシーなへそ出しパイロットスーツ。
それはクリミネルの試作パイロットスーツを流用し、ルーニャのデザインを元にクリミネルが改良したもの。
ルーニャが指揮する組織の名前に因んで『バンディースーツ』と名付けられた。
『君たちには期待している』
ルーニャが指揮し、彼女を含む構成員4人で組織されている小規模犯罪組織『バンディー』。
小規模な組織ではあるが、幾多の戦場を潜り抜けてきた成果からクリミネルは、彼女たちに注目している。
「それで新しい仕事の依頼かしら?」
『あぁ、コードMの捕獲を君たちに依頼したい』
「コードM……確か第4支部の人工適合者」
『ガルディアンからはマリヴィナ・コルジュリアと呼ばれている』
「あの新種とやらを倒した奴ね」
新たに現れた異質な強敵を倒した人物として、マリヴィナとニコルの名は、世に知れ渡った。
『成長途中だったとは言え、流石と言うべきか』
「相手が完全体だったら死んでたわよ。噂ではコードMは、コードAやコードCの劣化版だって話だし」
ガルディアンが亡骸を調査した結果、討伐したフルエザは成長途中だったことが判明した。
だから侵略者や他の生物から積極的にエネルギーを吸い取っていたのだ。
「2度も単独で超大型を倒したあのバケモノに比べたら大したことないわ」
ルーニャは、脅威の実力を持つシレディアが気に入らないといった口調で話した。
『確かに。しかし、コードMも我々に必要な兵器だ』
ルーニャは、通信回線を通して聞こえた『兵器』という単語に気分を害し、無言になると鋭い目つきでディスプレイを睨む。
「あんたらが言うその兵器のせいで私たち姉妹が酷い目に遭わされたってこと忘れてないわよね?」
『そうだったな……申し訳ない』
誠意のない謝罪に怒りを露わにしたルーニャは、眉間にしわを寄せ、わざと相手に聞こえるよう舌打ちした。
「とりあえずその仕事引き受けるわ」
『断られるのではないかと思ったが』
「コードたちを痛めつけてやりたいのよ」
理不尽な理由で自分たちを酷い目に遭わさせ、最後は捨てたガルディアンへの復讐。
そして、自分たちが不遇な扱いを受ける元凶となった人工適合者たちに復讐する為ならどんなことでもする。
『殺さないように頼む』
「言われなくても分かってるわよザジリス」