表紙・バンディー編ー1
表紙
イラスト:せんちゅ様作
X(旧Twitter):@centu_7u
1
ガルディアン第8支部管轄内ー廃都市キケッテ
異空間の狭間から数体の侵略者が出現し、そのうちの1体が、ガルディアン第8支部管轄内へ移動した。
それを受け、ガルディアン第8支部は、3機のエグゼキュシオンを討伐に向かわせた。
出撃したパイロットたちは、廃都市キケッテで侵略者を迎え撃ち、討伐に成功した。
後は基地に帰還するだけだったが、予期せぬ襲撃に遭い、大破した3機のエグゼキュシオンが横たわっている。
「た、助けて」
整った美顔を自身の涙と鼻水で汚し、恐怖から全身が小刻みに震え、命乞いをする若い女性パイロット。
女性の服装は、外にも関わらず下着姿だ。
彼女の隣には血塗られた仲間の死体が転がっている。
一緒に出撃した仲間が目の前で殺され、精神的にも追い詰められた女性は、命乞いしかできない。
「いい匂い」
恐怖に震える女性の前で、紺色ツーサイドアップの髪をした少女が、満悦な表情で浮かべていた。
「仕事を頑張った甲斐があるよ」
少女は、片手に持っている白いパイロットスーツを自身の鼻先に近づけ、そこから香る匂いを嗅ぐ。
そのパイロットスーツは、目の前で恐怖に震える下着姿の女性から無理矢理奪ったものだ。
「本当たまんないこの匂い!」
狂気じみた少女の名前は、ビナミラ・ラレンツァー。
彼女の容姿や髪型は、ガルディアン第2支部に所属するアルビーナと瓜二つだ。
しかし、アルビーナには存在しない極悪性と異常性が備わっている。
「絶望と恐怖から出た汗の匂いっていつ嗅いでも最高よねー!」
満足気に口の隙間から八重歯を覗かせるビナミラは、パイロットスーツから香る匂いを吸い込む。
「助けて……お願い助けて」
「ちっ!」
至福のひとときを邪魔されたビナミラは、舌打ちをしたと同時に表情が豹変する。
右手に持っていたパイロットスーツを放り投げ、少女が放つとは思えない凄まじい殺気を全身から放つ。
「うるせぇな!」
両足に履いているラバー製のヒールブーツで、女性を何度も容赦なく乱暴に踏みつける。
「せっかくの人が楽しんでるのにさ!」
ビナミラから一方的に暴行を受け続ける女性の口から血が入り混じった唾液が溢れ出す。
「吐くのは勝手だけど気に入りのスーツ汚したらタダじゃおかないから」
そう言うとビナミラは、身につけているセクシーなパイロットスーツを片手で撫で上げた。
ビナミラが着ているパイロットスーツは、クレアシオン社製のパイロットスーツとは見た目から異なる。
パイロットスーツの生地は、同じラバー製だが、ビナミラが身につけているパイロットスーツは、お腹が丸出しのデザインだ。
カラーリングは、黒と白、黄色の模様で飾られ、胸部には『B』という文字がプリントされている。
下はショートパンツに靴はヒールブーツと見た目通り、セクシーなデザインのパイロットスーツ一式だ。
また、パイロットスーツと同じく、丸出しになったビナミラのへそを囲むように『B』という黒い刻印がある。
「てか、助けてくださいでしょうが!」
「がぐぁ!」
ヒールブーツのかかとが腹部にめり込み、圧迫感と痺れるような激痛が、下着姿の女性を襲う。
「た、助けて……ください」
「はぁ?助ける訳ないじゃん!」
ビナミラの足が離れ、痛みから解放されたのも束の間、鈍い音と共に鋭い痛みが女性の顔面を駆け巡る。
ビナミラに顔面を蹴り飛ばされた女性は、コンクリートの地面に横から倒れ、口から血反吐を吐く。
「がはぁ……げほ!」
痛み苦しむ女性に興奮したビナミラは、邪悪な笑みを浮かべて見下す。
ペロッと舌舐めずりし、地面に倒れている女性の髪を強引に引っ張り上げ、苦しむ姿を間近で観察する。
「増援が来る前に帰るよビナミラ」
右目を眼帯で覆う黒髪お下げの少女に背後から声をかけられ、ビナミラは振り返る。
その少女もビナミラと同じ服装であり、へそに刻印があることからビナミラの仲間だと分かる。
「えー?!せっかくいいところなのにー!」
ビナミラはあざとく頬を膨らませ、幼子のように不貞腐れた態度を見せる。
「そろそろガルディアンが異変に気付いて救援を送ってくる」
不貞腐れるビナミラに対し、無表情で冷静に言葉を返した黒髪お下げの少女。
彼女の名前は、フージャ・ラレンツァー。
ビナミラとは真逆に冷静沈黙な性格で何処かシレディアと似た容姿を持つ。
「ちぇ、物足りないけど仕方ないかー」
ビナミラは、地面に蹲る女性の顔面を最後に蹴り飛ばし、顎の骨を砕く。
「いつもやり過ぎ」
フージャから忠告を受けた本人は、自覚が全くなく、自分の欲望に従って行動しただけだ。
「あたしたちを使い捨てたガルディアンに情けなんて必要ないと思うけど」
ガルディアンに対し、容赦なく残虐なビナミラは、自身の人差し指を舐め上げ、瞳を邪悪に輝かせる。