生誕編ー1
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ガルディアン第4支部管轄内ー開拓地。
ガルディアン第4支部基地から少し離れた場所に位置する不利用地。
辺りを見渡すと過去に討伐された侵略者の白骨化した亡骸やエグゼキュシオンの残骸が、複数転がっている。
普通なら侵略者の血液が大地に染み込み、自然が豊かになるはずが、何故かこの場所はその効果が見られない。
乾燥した地面から枯れた雑草が生えており、侵略者が自然に齎す恩恵は、全く見られない。
だからこそ開拓地に選ばれたというのもある。
1ヶ月前からガルディアン本部の意向で、いくつかの支部が領土の開拓を進めている。
領土を拡張し、防護壁内側の収容人数の増加や食料自給率の向上が目的だ。
防護壁内側の規模が小さい故、侵略者の襲撃率が比較的少ないガルディアン第4支部も領土開拓の指示を受けた。
しかし、ガルディアン本部の思惑と違い、指示を受けたどの支部も人手不足と資金不足で作業が難航している。
ポストルたちが所属するガルディアン第4支部もその例外ではない。
「やっと再開したらこれかよぉ」
「まさかあんな物が発掘されるなんて」
現場から少し離れた場所で自身の機体を背にして会話するポストルとタージュ。
彼らの視線の先には、薔薇のような黒い筋に覆われた楕円形の青黒い巨大物体が、掘り進められた穴の中心から少しだけ顔を覗かせている。
万が一に備え、ポストル、タージュ、マリヴィナの3人が現場の警備に派遣され、現在に至る。
「いつも暇してる研究者たちが忙しそうだぜ」
「今のところあの物体から生体反応はないけど」
各機体に備わっているシステムも物体から生体反応を示さなかった。
「もしあれが侵略者の卵だとしても中身は大昔に死んでるぜ」
「研究者たちにとって中身よりあれが卵かどうかが大事なんだよ」
発掘された物体の形や色、見た目から侵略者の卵ではないかと研究者たちは期待を寄せる。
もしそうなら2つの事実が明らかになる。
1つは、侵略者が人類の約半数を壊滅させたよりも昔に侵略者が地球に出現したということ。
何故なら、物体の近くから古代遺跡の残骸が発掘されており、そのことから同年代のものである可能性が高いからだ。
2つ目は、侵略者の中に卵を産む個体が存在するということ。
現在まで出現した侵略者の中に卵を産んだ個体はいない。
いくつかの個体の亡骸から生殖器らしきものが発見されたが、現在に至るまで生殖行為は目撃されていない。
また、卵を宿した状態で出現したこともなく、侵略者の繁殖方法は、今のところ一切不明だ。
「あんなに調べて全然関係ないものだったら落ち込むだろうね」
「落ち込んで余計引きこもりになるじゃねぇか」
その時、2人の右耳に装着していた小型無線機からマリヴィナの声が聞こえてくる。
「2人とも機体に乗って」
理由が分からないポストルは、地面に膝をつき、停止しているマリヴィナ機の方へ顔を向け、首を傾げながら小型無線機を使って尋ねる。
「何かあったんですか?」
「敵が来る」