表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/58

夜明け編ー1


1


ガルディアン第4支部基地ー機体格納庫。


ガルディアン第3支部が壊滅してから2ヶ月が経過した現在。


クリミネルの襲撃によるガルディアン第3支部の死者・行方不明者は、約数千人にも及ぶ。


ガルディアン第3支部基地及び防護壁内側の領土は、荒廃した状態であり、現在クリミネルが占領している。


クリミネルに領土の1つを奪われたガルディアンは、これまで以上に世論の反感と不信を買った。


以前にも増して資金と物資が共に疲弊し、組織の運営能力は極端なまで低下した。


この事態にガルディアン本部は、あれこれ打開策を講じるも一向に好転の兆しは見えない。


世論や支援者たちから失った信頼は、並のことでは取り戻せないということだ。


「くっ!」


険しい表情でコントロールグリップを動かし、シュミレーターに励む黒い女性用パイロットスーツを身に纏った少年。


額から汗を流し、必死に機体のコントロールグリップを動かして自身の機体を操る。


彼が見つめるコックピットモニターには、青を基調としたエグゼキュシオンが映し出されている。


青いエグゼキュシオンは、素早い身のこなしで攻撃を繰り出し、少年の操る黒いエグゼキュシオンを追い詰めていく。


「ぐあ!」


黒いエグゼキュシオンは、僅かな隙を突かれ、腹部に攻撃をうけたことでバランスを崩し、背中から建物の上に倒れ込む。


同時にガラスの破片が飛び散るようなエフェクトが発生した。


「ま、まだ……っ!?」


少年が自身の機体を立ち上がらせる暇もなく、コックピットに銀色の刃を向けられ、敗北を突きつけられる。


「ま、参りました」


「素直でよろしい!今日はここまでにしよっか」


「了解です」


明るい印象を受ける声の女性と通信回線で会話を終え、機体のシュミレーターを終了する。


薄暗くなったコックピット内で少年は、額から流れる汗をスーツに覆われた右手で拭く。


彼は、第3支部の生き残りであるポストル・ペアレントだ。


「今日も完敗か」


ポストルは、悔しげに独り言を呟き、機体のコックピットハッチを開け、コックピットから外へ出る。


格納庫に充満する油や金属の匂いなどが入り混じった異臭が、真っ先にポストルの鼻を通る。


この異臭を嗅ぎ慣れたポストルは、気にする素振りを見せず、錆び付いた移動式の簡易階段を下りていく。


ポストルが機体格納庫の鉄床に両足をつくとベージュの長い髪をした少女から声をかけられる。


「お疲れ様ポストル」


青を基調としたパイロットスーツが、彼女の大人びた体をぴっちりと包み、抜群のスタイルを際立たせる。


彼女の名前は、ニコル・ハレヴィヤ。


年齢は18歳で階級は中尉であり、ガルディアン第4支部エグゼキュシオン部隊のリーダーを務める。


「お疲れ様です」


軽く頭を下げたポストルは、かつてシレディアの専用機だった黒いエグゼキュシオンを見上げた。


ガルディアン本部の許可を得てシレディアからこの機体を受け継ぎ、現在はポストルの機体となっている。


「だいぶこの機体にも慣れたんじゃない」


「いえ、まだまだです」


「ポストルが人工適合者専用機を操れるなんてね」


並みのパイロットは、人工適合者専用機を操縦できない。


何故なら、人工適合者専用に開発されたエグゼ・リアクターの高出力に体が耐えられないからだ。


人工適合者は、体内に流れる侵略者アントリューズの血により、人間離れした超人的な肉体を持つ。


だからこそ人工適合者専用に開発された高出力のエグゼ・リアクターに耐えることができる。


一方でポストルたちのような並のパイロットは、薬で肉体を強化しただけであり、人工適合者ほど強固な肉体ではない。


ましてやシレディア専用機は、高出力のエグゼ・リアクター2基を搭載し、並列稼働させた機体。


ポストルが以前操縦していた機体とは、比べ物にならない負荷が彼の肉体を襲う。


また、システム等もシレディアの能力に合わせている為、彼女以外は機体性能を十分に引き出せない。


しかし、ポストルは人工適合者専用機を問題なく操縦でき、シレディアには劣るものの機体性能を引き出している。


操縦時の副作用等もなく、どうして彼が人工適合者専用機を問題なく操縦できるのか現在のところ不明。


ガルディアン内ではそのことが七不思議となり、原因を解明する為、研究員たちがポストルに注目している。


「早くこの機体を使いこなさないと」


「焦ることないわ。お姉さんがじっくり教えてあげるから」


ニコルは、自身の唇に右手の人差し指を当て、悪戯な表情でポストルを見つめる。


「お、お手柔らかにお願いします」


ポストルは、少し頬を赤く染め、苦笑いで言葉を返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ