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失命編ー3


3


ガルディアン第3支部基地内ー第1格納庫。


シレディアは、辛うじて自身の機体が待つ第1格納庫まで辿り着いた。


途中までユノと行動を共にしていたが、途中でクリミネルの歩兵部隊と対峙してしまう。


歩兵部隊の動きから狙いがシレディアだと見抜いたユノは、1人で敵の足止めを引き受け、シレディアを第1格納庫へ向かわせた。


「ここにもクリミネルが」


第1格納庫にも既にクリミネルの歩兵部隊が侵入し、整備兵と銃撃戦を繰り広げている。


戦況は一方的であり、実戦経験のないガルディアンの整備兵たちが次々と銃殺されていく。


込み上げてくる感情を必死に抑え、自身の機体に乗り込む為、歩き出そうとした時だった。


「動かないでください」


背後から何者かに銃口を向けられたシレディアは、瞬時に動きを止め、全身から嫌な汗が溢れ出す。


聴き覚えるのある声にシレディアは、恐る恐る振り返り、自身の背後にいる存在を確認する。


「っ!?」


振り返ったシレディアは驚愕し、言葉を失ってしまう。


何故なら、仲間であるはずのミソンプに銃口を向けられているからだ。


「み、ミソンプ新兵……!?」


「私はコードE……あなたと同じ人工適合者です」


ミソンプは、クリミネルがシレディアの力を再現しようと生み出した人工適合者の1体だ。


クリミネルが求める高いスペックを誇る人工適合者ではなかったが、戦力として加えられた。


実はクリミネルは、意図的に国際法を無視し、現在も人工適合者の量産を続けている。


シレディアのような強力な人工適合者を生み出し、自軍の戦力を増強するのが目的だ。


「ミソンプ新兵が人工適合者?!」


シレディアは、ミソンプが人工適合者であるという事実に驚きを隠せない。


「抵抗はしないでください」


正面から歩兵数人に銃口を向けられ、囲まれてしまったシレディアは、何も抵抗できない。


周りにいたガルディアンの整備兵は、全員銃殺され、血塗られた死体が鉄の床に転がる。


諦めたシレディアは、自身の両手を頭の後ろで組み、抵抗の意思がないことを示す。


「こちらコードE、目標っ!?」


ミソンプの言葉を遮るように突然第1格納庫全体が揺れ、壁が崩れていき、瓦礫等が雪崩れ込む。


「ポストル!?」


強引に第1格納庫内部へ侵入した新兵機のエグゼキュシオンが、シレディアに銃を向けていた歩兵数人を腕で薙ぎ払う。


薙ぎ払われた歩兵たちは、勢いよく全身を壁に叩きつけられ、そのまま気を失い、力無く地面に倒れた。


数秒後、傷ついた機体のコックピットが開き、そこから勢いよくポストルが飛び出し、シレディアの元へ向かう。


ここに来るまでアルビーナと共にクリミネルのエグゼキュシオンと戦闘し、機体はもう限界を迎えていた。


「大丈夫かシレディア!?」


「うん」


互いの手を握り合い、無事であったことに安堵しているとカチャッと銃を向けられる音がした。


「その女を渡して」


ミソンプは、無表情でポストルに銃口を向ける。


ポストルは、シレディアを自身の背後に庇い、怒りに満ちた険しい表情でミソンプを睨む。


「嫌だ!シレディアは俺の……俺の大切な友達だ!」


「あんたも分かってるでしょ。人工適合者には人間らしい感情なんてない。ただ戦うだけの兵器と人間が友達になれるはずがない」


ミソンプの言葉に矛盾を感じ、舌打ちをしたポストルは、拳を握り締め、怒鳴り声にも似た声で反論する。


「ならどうしてあの時、俺のことを心配して部屋まで来てくれたんだ!?」


ポストルの言葉に胸が締め付けられ、返す言葉を失ったミソンプは、銃を構えたまま黙り込む。


人工適合者は兵器であり、命令に従い戦うだけの道具だと思い込まされ、クリミネルの言葉に従ってきた。


それが間違だと知る手段が、彼女にはなかったからだ。


ある時、クリミネルからガルディアンへの潜入を命じられ、訓練兵としてガルディアンに入隊した。


そこでポストルやタージュたちと出会い、彼らと過ごしていくうちに彼女の心境は変化した。


「そんな辛そうな顔をしてまで嘘をつくなよ!」


ミソンプの頬を涙が伝い、動揺した彼女は、片手に持っていた銃を落としてしまう。


「私は……」


ポストルは、涙を流すミソンプに手を伸ばす。


「ポストル……」


ミソンプは、彼から差し伸べられた手を握ろうと自身の手を伸ばす。


その時、重傷を負い、額から血を流して地面に倒れていた歩兵の1人が、ゆっくりポストルに銃口を向ける。


それに気づいたミソンプの体が、愛する人を助けるため無意識に動き出す。


「ダメ!」


1発の銃声が格納庫内に響き渡る。

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