失命編ー2
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ガルディアン第3支部基地内ー2階廊下。
銃声や爆音が常に鳴り響くガルディアン第3支部基地内。
辺りを見渡せば職員たちの血塗ぬられたグロテスクな死体が散乱している。
「くそ!何が目的でこんなこと!」
タージュは、衝撃的な光景による吐き気を必死に堪え、物陰から対人用ライフルを連射し、クリミネルの歩兵部隊に対抗する。
自分と同じ人間に対し、引き金を引くのを躊躇う暇もない。
何故なら、相手を撃たなければ自分が殺されるからだ。
「侵略者を相手してる方がマシだぜ」
タージュは、一旦壁の後ろに身を隠し、相手からの銃弾を防ぎつつ対人用ライフルに銃弾を補充する。
銃撃戦を繰り広げるタージュの隣で、対人用ライフルを両手に抱え、恐怖から震えるサラリエがいる。
彼女は、対人用ライフルを抱えて震えるだけで、タージュに加勢する気配はなく、戦力にならない。
ここに至るまで悲惨な光景を目にし、精神が擦り減ってしまい、死の恐怖に支配されてしまった。
また、相手が誰であれ同じ人間に対し、銃の引き金を引き、相手の命を奪うことができない。
「弾が限界だ」
タージュが所持するライフルの弾丸は、予備も含めて残り僅かだ。
このまま銃撃戦を続ければタージュたちが不利になるのは誰の目から見ても明らか。
「ここから脱出するしかねぇ」
弾丸が切れる前に基地からの脱出を考えたタージュは、背後で怯えるサラリエに声をかける。
「格納庫に移動するぞ!」
「死にたくない死にたくない」
次々と仲間が死んでいく状況や死の恐怖から、サラリエの精神状態は不安定だ。
「しっかりしろサラリエ!」
タージュは、血の気が失せたサラリエの右腕を強引に引っ張り、第2格納庫へ移動を開始する。
自分たちと同じく基地内にいるシレディアやユノ、ミソンプたちの安否も気になるが、今は自分たちが生き残ることで精一杯だ。
「いたぞ!」
第2格納庫まであと少しのところでタージュとサラリエは、クリミネルの歩兵数人に発見されてしまった。
しかも、最悪なことに歩兵の1人が手榴弾を取り出し、安全ピンを引き抜く。
「く、くそ!」
肝を冷やすタージュは、照準も合わせず、武装した歩兵に向け、右手に持つライフルを乱射する。
幸運にも歩兵に弾丸が命中し、致命傷を与えられたが、安全ピンの抜かれた手榴弾は、鉄の床に落ちる。
その数秒後、手榴弾は爆発し、発生した爆風が少し離れた場所にいるタージュとサラリエを後方へ吹き飛ばす。
「ぐはぁ!」
「きゃゃゃ!」
タージュは、頭部と左腕を壁に強打し、そのまま床に倒れ、激痛から顔を歪める。
「さ、サラリエ」
朦朧とする意識の中、少し離れた場所で倒れ、額から血を流して気絶するサラリエを瞳に捉える。
痛みを堪えて立ち上がり、おぼつかない足取りでサラリエへ近づいていく。
その時、爆発の影響で破損した床が抜け落ち、サラリエを乗せたまま落下を始める。
「サラリエー!」
精一杯伸ばされたタージュの手は届かず、そのままサラリエは闇の底へ沈む。