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関係編ー4


4


ガルディアン第3支部管轄内ー廃都市アイエラメント。


シレディアがガルディアン第2支部へ異動する前日というタイミングに異空間の狭間から数体の侵略者アントリューズが地球に襲来した。


そのうちの1体、コードネーム『アール』が、ガルディアン第3支部管轄内に向けて移動を開始した。


アール討伐のため、アルビーナ機とポストル機が、アールの通過予測地点である廃都市アイエラメントに大型輸送機で輸送され、廃都市アイエラメントに投下される。


ひび割れたコンクリートの地面に着地した2機は、敵を正面から待ち受ける。


(何だろう……妙な胸騒ぎがする)


これから戦闘だと言うのに根拠がない妙な胸騒ぎがポストルを襲い、コックピット内で落ち着かない様子だ。


根拠はないが、何か良からぬことが起きる前触れではないかと不安に陥る。


また、侵略者アントリューズ襲来を知らせる基地内放送が流れる前にミソンプが言いかけた『あんただけは私が』という言葉の真意も気になる。


「予想通り侵略者アントリューズが来たわよ」


「……」


ポストルからの応答がないことに疑問を抱き、アルビーナは彼の名前を通信回線で呼ぶ。


「聞こえてるポストル新兵?!」


アルビーナから強い口調で名前を呼ばれ、我に返ったポストルは、慌てて返事をする。


「あ、は、はい!」


これから命を懸けた戦闘だというにも関わらず、集中力が欠けているポストルに対し、アルビーナは上司として注意をする。


「戦闘中にぼけっとしてたら死ぬわよ」


「す、すみません」


指摘を受けたポストルは、申し訳なさそな表情で謝罪し、コックピット内で肩を落とす。


気がかりなことが多いが、根拠のないことをあれこれ考えている場合ではない。


何故なら、正面から迫り来る敵を必ず倒さなければならないのだから。


「飛行タイプだけどありがたいことに低空飛行ね」


討伐対象のアールは、腕の代わりに胴体から飛龍のような翼を生やし、鷹とプテラノドンを掛け合わせたような容姿だ。


巨大な翼を器用に羽ばたかせ、低空飛行で廃都市アイエラメントの領域に侵入する。


エグゼキュシオンに装備された地上用スラスターを使っても届かない位置で飛行していたら厄介だったが、普通に届く高さで飛行している。


地上用スラスターを使わなくても建物を踏み台にし、機体をジャンプさせれば容易に届きそうな高さだ。


飛行速度は、アルビーナやポストルが思っていた以上に遅く、エグゼキュシオンを運ぶ大型輸送機の方が速いのではないかと思う。


アールが低空飛行している理由は、豊かになった地球環境に悪影響を与える人間がいないか見張りつつ目的地であるガルディアン第3支部基地を目指しているからだ。


辺りを見渡していたアールの瞳が2機のエグゼキュシオンを捉え、自然界に害を成す人間を排除するため、鴉のような鳴き声をとどろかせ、2機を仕留めにかかる。


それを見たアルビーナは、上等だと言わんばかりの態度で舌舐めずりをし、両手に握る機体のコントロールグリップを押し込む。


「さっさと終わらせるわ!」


「あ、アルビーナ大尉!?」


正面から接近してくる敵に対し、アルビーナは、自身の機体を前進させ、真っ向から立ち向かう。


彼女の大胆かつ危険な行為に驚いたポストルは、思わず彼女の名前を呼び、未熟な立場ではあるが、危険な行為だと注意を促す。


「き、危険ですアルビーナ大尉!」


地上用スラスターが装備されているとは言え、飛行する相手の方が有利であり、前方から攻撃を仕掛けるのは危険だろう。


スラスターが地上用であることからアールの方が飛行能力に長けているのは明白であり、アルビーナの方が不利である。。


もちろん戦闘経験が豊富なアルビーナもそれを十分に理解しているが、勝つ自信があるからこその行動だ。


また、彼女の性格上、真っ向から戦いを挑まれて受けて立たない訳にはいかない。


「問題ないわ!」


幾多の戦いを乗り越えてきたアルビーナは、ポストルの注意などお構いなしに意気揚々と自身の機体を前進させる。


真っ向から接近するアルビーナ機に対し、攻撃可能範囲に入ったアールは、鷲のような足を前方に向け、アルビーナ機を鷲掴みにしようする。


しかし、相手の動きを見切ったアルビーナは、素早くコントロールグリップを手前に引く。


するとアルビーナの搭乗する機体が宙で回転し、華麗なサマーソルトキックをアールのくちばしに浴びせる。


「お見通しよ!」


思いがけない強烈な一撃を浴び、飛行バランスを崩したアールは、青々とした草木が覆う朽ちた鉄塔に背中を強打する。


「まだまだ!」


アルビーナは、間髪入れずアールに追い討ちを仕掛けるため、機体の両腕部に装備された専用武装『エグゼ・アビナソード』を展開する。


エグゼ・アビナソードは、パイロットであるアルビーナ自ら設計・考案した専用武装だ。


希少金属で製造された刀身は、任意で蛇腹状に分離可能であり、ワイヤーで鞭のようにも使用できる。


「逃がさない!」


慌てて上空へ逃れようと翼を羽ばたかせ始めたアールに対し、アルビーナ機は、エグゼ・アビナソードを蛇腹状に分離させ、アールの細い首に巻き付かせる。


首に刃を巻き付かれ、動きを封じられたアールは、アルビーナ機の腕が動く方向に振り回され、廃墟と化した建物に激突し、砂埃と瓦礫がアールを襲う。


状況を打破しようとくちばしを開き、体内で蓄積したエネルギーを球体にして口部から放つ。


「そんなもんでやられるもんですかっての!」


エネルギー弾を華麗に避け、さらには刃状に展開している右腕のエグゼ・アビナソードでエネルギー弾を切り裂く。


距離を詰められていくアールからは、焦りが見え始め、エネルギー弾を放つ間隔が短くなる。


それでも余裕なアルビーナは、好戦的な性格から戦いを楽しみ、悪戯な笑みを浮かべ、巧みに機体を操り、アールの顔面に回し蹴りを浴びせた。


「ま、まるでシレディアみたいだ」


アルビーナの素早く無駄がない華麗な操縦技術にポストルは、彼女の戦い方にシレディアと似たものを感じ取った。


シレディアとアルビーナの性格は、正反対であり、アルビーナの方が好戦的で戦い自体を楽しみ、相手を甚振る傾向にある。


一見すると共通点がないように思われるが、機体操縦の技術は、2人とも見事と言わざるを得ない技術を持ち、機体性能を最大限に活かしている。


また、シレディアとアルビーナは、互いに人工適合者であることから常人とは懸け離れた反応速度を持ち合わせ、瞬時に相手の行動に対応する。


シレディアの戦い方を間近で何度か見てきたポストルだからこそ人工適合者に共通する部分を感じ取ることができたのだろう。


「これがアルビーナ大尉の強さ」


ポストルは、機体をまるで自分の手足のように操る操縦技術と驚異的な反応速度、そして、新型機の機体性能を最大に引き出し、侵略者アントリューズを圧倒するアルビーナの力に魅了される。


「終わり!」


何度も攻撃を受けて弱ったアールに抵抗する暇を与えず、刃状に変化させたエグゼ・アビナソードでアールの頭部に串刺す。


大脳を貫かれたアールは、白目を剥いて何度か体を痙攣させ、数秒後に力尽きた。


「手応えのない敵だったわね」


呆気ない幕引きに拍子抜な表情のアルビーナは、コントロールグリップを動かし、赤い装甲に覆われた機体の右腕を動かす。


同時にアールの頭部からエグゼ・アビナソードを引き抜かれ、刃に付着した青黒い血を薙ぎ払う。

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