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偽り編ー1


1


ガルディアン第3支部基地内ー第1格納庫。


モガディシオとの戦闘を終えたシレディア機とアルビーナ機は、共にガルディアン第3支部基地へ帰還した。


整備兵たちの誘導でシレディア機が、所定の位置でアームに固定され、コックピット前にパイロットたちが乗り降りする簡易通路が設置される。


安全を確認した整備兵の合図をコックピットモニター越しに確認したシレディアは、機体のコックピットハッチを開け、外へ出る。


(どうして……)


心の中でそう呟いたシレディアは、表情に影を落とし、問いかけるかのように傷ついた自身の機体を見上げた。


正直、今回の戦闘は、アルビーナの救援がなければ長期戦かつ厳しい戦いを強いられることになっていただろう。


それを自覚しているシレディアは、込み上げる焦りや不安、悔しさという負の感情を押し殺すように胸元で拳を握った。


「シレディアー!」


聞き覚えのある呼び声に反応したシレディアは、目を見開いて我に返り、握り締めていた拳を開きながら声がした方向へ視線を移す。


そこには慌てた様子で簡易階段を駆け上がるユノがいた。


全ての簡易階段を登り切ったユノは、その勢いのままシレディアに抱きつく。


「ゆ、ユノ!?」


突然、勢いよくユノに抱きつかれ、困惑するシレディアは、戸惑いの表情を浮かべる。


「シレディアの機体が攻撃を受けたって聞いたから心配で」


ユノは、シレディアが帰還してくるのを第1格納庫で待っていた時、彼女の機体が敵から攻撃を受けたと整備兵たちが話していたのを耳にし、居ても立っても居られなかったのだ。


心から自分のことを心配したくれたユノに対し、シレディアは優しく微笑み、そっとユノの背中に両手を回す。


「心配してくれてありがとう」


互いに抱きしめ合っていると何者かが簡易階段を駆け上がってくる音が聞こえる。


「し、シレディア!」


シレディアを呼んだ声の主は、ユノと同じく彼女のことが心配で居ても立っても居られなかったポストルだ。


ポストルは、ここまで来るのに全速力で走り、一気に簡易階段を駆け上がったことで、体力を消耗し、息切れしながらシレディアに近づく。


そんな彼の様子にシレディアは、ユノに抱き締められながら再び戸惑う。


「ど、どうしたの?」


「し、シレディアが心配で」


ポストルは、自身の額から出る汗を制服の袖で拭き、シレディアからの問いに答えた。


ポストルまで自分のことを心配し、急いで様子を見に来てくれたことに嬉しさと感謝が芽生え、シレディアの表情から自然と優しい笑みが零れる。


「ポストルも心配してくれてありがとう」


「怪我とかしてなさそうで安心したよ」


ポストルとシレディアは、互いに見つめ合いながら微笑む。


それに嫉妬心を爆発させたユノは、シレディアを抱き締めたまま鋭い目つきでポストルを睨み、邪悪な殺気を放つ。


背筋が凍るような気配と鋭い視線を目の当たりにしたポストルは、額から嫌な汗を流し、表情が硬まってしまう。


「あの機体のお陰で助かった」


シレディアの言葉と視線に釣られ、ポストルとユノも新型機に視線を移す。


噂には聞いていたが、実際にその目で新型機を見るのは、今回が初めてだ。


「あれが噂の新型って訳ね」


「赤いエグゼキュシオンか」


シレディア機の隣でアームに固定された赤いエグゼキュシオンを物珍しげに眺める3人。


「でも、どうしてあの機体が第3支部に」


ポストルがふと疑問を抱いたその時、背後から幼さが残る女の子の声が聞こえる。


「見た感じ怪我とかしてなさそうで良かったわシレディア特尉」


その声に反応したシレディア、ユノ、ポストルの3人は、ほぼ同時に赤いエグゼキュシオンから視線を逸らし、背後を振り返った。


「あなたは、あの機体のパイロット」


先の戦闘で通信回線を通し、赤いエグゼキュシオンを操縦するパイロットの声を聞いていたシレディアは、真っ先に彼女が何者なのか気づいた。


「アルビーナ・フォルデーヌ、階級は大尉よ」


アルビーナは、自身の両腰に手を当て、得意気な表情を浮かべ、正面にいる3人に対し、意気揚々と自己紹介した。


初めて彼女と対面したシレディアは、直感的にあることを感じ取る。


(なんだろう……アルビーナ大尉からわたしと似た何かを感じる)


その感覚は、アルビーナも同じく感じ取っていた。


(顔を合わせるのは初めてだけどシレディア特尉に何故か親近感みたいなのを感じるわ)


シレディアとアルビーナの共通点と言えば、互いに人工適合者であり、偶然にも同じ研究所で生まれた者同士という点だ。


シレディアもアルビーナも互いに人工適合者だということは知っているが、同じ研究所の出身だということまでは知らない。


もしかしたら人工適合者特有の勘の鋭さからシレディアとアルビーナは、直感的に親近感に似た何かを互いに感じ取ったのかもしれない。


「よろしくシレディア特尉」


「……よろしく」


シレディアとアルビーナは、ぎこちないながらも握手を交わした。

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