赤き処刑人編ー3
3
ガルディアン第3支部管轄内ー廃都市アイエラメント。
夕焼けに染まる空の下、異空間の狭間より2体の侵略者が出現し、そのうち1体がガルディアン第3支部管轄内に向けて移動を開始した。
今回、襲来した侵略者に与えられたコードネーム『モガディシオ』。
肉体の一部が機械と一体化しており、身体中に様々な遠距離武装を兼ね備えた2速歩行の侵略者だ。
ガルディアン第3支部の戦力は、超大型との戦闘により疲弊しており、稼働可能状態なのはシレディア機のみしかないため、シレディアは単独で出撃した。
しかし、今のシレディアは、万全ではなく、自身の機体を上手く操ることができない。
「この感覚……!?」
モガディシオとの戦闘が開始したのも束の間、特訓時に感じた不快感のようなものがシレディアを襲う。
まるで自身の反応速度と機体に時差が生じているかのような不快感から彼女に隙が生まれ、そこをモガディシオに突かれる。
高い知能を持つモガディシオは、シレディアの不調具合を察し、的確な遠距離攻撃を繰り出す。
「くっ!」
次々とモガディシオから繰り出させる遠距離攻撃に苦戦するシレディアは、険しい表情で機体を操り、焦りや不安からか彼女の汗が頬を伝う。
シレディアは、経験からこの感覚が決して機体の整備不良によるものではないと確信しており、自分の能力が低下したのではないかと疑わざるを得ない。
「ど、どうして機体が……っ!?」
考える暇を与えないと言わんばかりにモガディシオの遠距離武装からミサイルや弾丸が放たれ、シレディア機に容赦なく襲い来る。
シレディアは、不調ながらも機体を操り、辛うじて全ての攻撃を避け、モガディシオの隙を窺う。
「今!」
攻撃の隙を見抜いたシレディアは、機体のマニピュレーターを動かし、その両腰に装備されたエグゼツインブレードを両手で引き抜く。
そして、地上用スラスターを吹かし、攻撃可能な距離まで一気に接近し、両手に持つエグゼツインブレードを振り下ろす。
しかし、予想外の事象により、モガディシオを切り裂くことはできなかった。
「バリア?!」
機械と融合した肉体のモガディシオは、自身の周囲に電磁バリアを発生させる能力を持つ。
エグゼツインブレードが防がれ、後方へ吹き飛ばされるも素早く体勢を立て直し、再び接近して刃を振り下ろす。
しかし、エグゼツインブレードではモガディシオのバリアを破ることはできない。
一旦、モガディシオから離れたシレディア機にモガディシオの全身に備わった遠距離武装が襲う。
攻守ともに優れたモガディシオが、一方的に不調なシレディアを追い詰めていく。
「厄介な奴」
右腕のキャノン砲から放たれたエネルギー弾を命中する寸前で避け、再びシレディア機はモガディシオへ接近する。
地上用スラスターの加速を利用し、その勢いを殺さず刃を振り下ろすが、やはりモガディシオのバリアは破れない。
「っ!?」
直感的に危険を察し、機体を後退させようとするが間に合わず、アーム型の左腕に頭部を掴まれる。
そのままシレディア機は、横に投げ飛ばされ、何度か地面を転がり、黒い装甲が砂埃で汚れた。
「ぐっ……!」
エグゼ・リアクターの出力を限界まで解除したことで、自身の能力が低下したのではないか。
戦闘中にも関わらず、そんな考えばかりがシレディアの頭から離れず、彼女から余計に集中力を奪う。
そんなシレディアにはお構いなしのモガディシオは、全身に備わった武装を一斉発射する。
エネルギー弾や棘状の小型ミサイルが、シレディア機目掛けて降り注ぐ。
「防ぎ切れない……!」
シレディアは、コントロールグリップで素早く機体を操作し、武装を駆使して防御に転じるが、全ての攻撃を防げない。
防ぎ切れなかった棘状の小型ミサイルが、機体の左肩や右足に命中し、ダメージを負ったシレディア機は、コンクリートの膝をつく。
「ぐ!」
傷ついたシレディア機は、ゆっくりと立ち上がり、エグゼツインブレードを構える。
天に向けて咆哮を轟かせるモガディシオからは、余裕すら感じられる。
「負ける訳にはいかない」
電磁バリアを突破できれば一気に仕留めることができるが、今の武装ではどうすることもできない。
モガディシオが電磁バリアを発生させてない瞬間ならダメージを与えられるだろう。
しかし、火力が低いバレットアサルトライフルを連射してもモガディシオを弱らせることはできない。
何故なら、バレットアサルトライフルの火力では侵略者に対し、有効なダメージを与えられないからだ。
つまり、電磁バリアを突破しない限り、シレディアに勝ち目はないということ。
このまま長期戦に持ち込んでも不利になるのは、シレディアであるのは明白だ。
有効な対抗手段がないと分かっていてもシレディアは、自身の機体を前進させ、モガディシオに立ち向かう。