超大型編ー3
3
ガルディアン第3支部管轄内ー廃都市ベツマデフ。
超大型相手に無傷では済まされず、シレディア機、ミソンプ機、ポストル機とも損傷が目立つ。
比較的機体の損傷が少なく、戦い慣れしたシレディアが、果敢に攻め込むが、ペラロネは一向に弱る気配を見せず、寧ろ時間が経つにつれ、凶暴性が増している。
捕獲の成功率を少しでも上げる為、ペラロネをある程度弱らせたいところだが、現実はそう上手くいかない。
「前に倒した奴より手強い」
シレディアは、素直にペラロネの強さを評価し、想像以上の手強い相手だと認めた。
「誘導は順調だけど」
苦戦を強いられているが、ユノやサラリエが待機するペラロネ捕獲地点までの誘導は順調だ。
「ぐあっ！」
「ポストル！？」
ペラロネの触手に脇腹を薙ぎ払われたポストル機は、その勢いで廃墟の建物に横から衝突し、舞い上がる砂埃と瓦礫の中に沈む。
「許さない！」
ポストル機がペラロネに攻撃され、怒りを露わにしたミソンプは、自身の機体を素早く前進させ、ポストルの代わりに反撃を試みるもペラロネの触手に腹部を薙ぎ払われ、背中から地面に落下する。
邪魔者を薙ぎ払ったペラロネは、目の前に立ち塞がるシレディア機に狙い、触手による猛攻を繰り出す。
「くっ！」
シレディアは、素早く自身の機体を後方倒立回転させ、ペラロネの攻撃を回避し、機体の片手に持つバレットアサルトライフルを連射する。
「っ！？」
真下の地面から突き出た触手が、シレディア機が持つバレットアサルトライフルに巻き付き、凄まじい力でバレットアサルトライフルを歪ませていく。
すぐさまシレディア機は、バレットアサルトライフルから手を離し、両腰に装備しているエグゼツインブレードを両手で握り、武装を切り替えた。
そして、襲い来るペラロネの触手を見事な操縦技術で避け、地上用スラスターで高く飛び上がったシレディア機は、廃ビルの上に着地する。
「いける」
朽ちた建物を踏み台にし、勢いよく飛び上がると両手に持つエグゼツインブレードでペラロネの巨大な頭部を切り裂く。
切り裂かれた激痛がペラロネを襲い、悲鳴にも似た雄叫びを上げ、周囲の空気を揺らす。
「また再生……！」
エグゼツインブレードで切り裂いた部分が瞬時に塞がり、傷跡すら残らない。
これまでシレディアが倒した侵略者の中で1番再生能力が高く、厄介な相手だ。
ペラロネは、仕返しと言わんばかりにシレディア機へ無数の触手を伸ばす。
シレディアは、コントロールグリップで自身の機体を素早く操り、アクロバティックな動きでペラロネの触手攻撃に対応する。
そこに体勢を立て直したポストル機とミソンプ機が加勢し、3機でペラロネを目標地点へ追い込む。
作戦の進行具合を確認したシレディアは、指定の場所で待機しているユノとサラリエに通信回線を通して呼びかける。
「ユノ、サラリエ新兵、そっちの準備はできてる？」
「いつでもオッケー！」
「わ、私も大丈夫です！」
拘束装置が仕掛けられた場所の側で身を潜めるユノ機とサラリエ機。
徐々に戦闘音が自分たちがいる方向へ近づく度、2人の心拍数が上昇していく。
そして、3機のエグゼキュシオンに攻撃されつつ誘導されたペラロネが、遂にそこを通過する。
しかし、ペラロネが通過したにも関わらず、自動で射出されるはずの捕獲用アンカーが射出されず、何事もなくペラロネが横切る。
「う、嘘！？なんで作動しないのよ！？」
「まさかこんなタイミング悪く故障？！」
ユノは、慌てて手動に切り替え、捕獲用アンカーの射出ボタンを押すが、全く反応しない。
事前のテストでは、捕獲用アンカーが正常に作動していたのをユノたち全員が自身の目で見て知っている。
サラリエの言う通り、故障したにしてはず随分とタイミングが悪すぎるだろう。
「ど、どうして？！」
いくら考えても原因が分からず、慌てふためき、捕獲用アンカーの射出ボタンを連打するユノに対し、サラリエは焦る気持ちを落ち着かせ、冷静に状況を判断する。
「アンカーが使えないならこのまま麻酔を打ち込むしか」
サラリエの冷静な提案のお陰で我を取り戻したユノは、彼女の案に賛同し、自分たちを無視して移動するペラロネの方へ機体を向ける。
「し、仕方ないわね！いくわよサラリエ！」
「了解です！」
作戦を切り替え、動いているペラロネに麻酔を撃ち込むため、ユノ機とサラリエ機が動き出す。
背後から接近する2機の存在に早々と気付いたペラロネは、前方から迫り来る3機のエグゼキュシオンをほぼ同時に触手で薙ぎ払う。
そして、見るからに重そうな体の向きを起用に変え、背後から接近していた2機を排除しようと触手を伸ばす。
2機とも上手く攻撃を回避しつつ麻酔銃の射程距離内に入り、ほぼ同時に麻酔銃を構える。
「今よ！」
「は、はい！」
2機が手に持つ麻酔銃から放たれた麻酔弾が、ペラロネの柔らかい皮膚を突き破り、体内へ麻酔を流し込む。
