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超大型編ー2


2


ガルディアン第3支部管轄内ー廃都市ベツマデフ。


雷鳴が鳴り響き、大雨が地上へ降り注ぐ中、ポストル機、シレディア機、ミソンプ機、タージュ機の4機は、正面から強敵を待ち構える。


ユノ機、サラリエ機の2機は、捕獲用拘束装置が設置された場所の近くで待機している。


今回の作戦は、シレディアを含めた4機が、対象に攻撃を与え、弱らせつつ拘束装置が設置された場所まで誘導する。


拘束可能な範囲に対象が到達したら捕獲用アンカーで拘束し、待機していた2機が麻酔を撃ち込む作戦だ。


万が一に備え、他の支部から派遣されたパイロットが、ガルディアン第3支部基地の守りを固める。


今回の作戦に全戦力を投入し、無防備になったところをクリミネル等に攻め入られる危険性を考慮しての配慮だ。


「来た」


強大な敵の気配をいち早く感じ取ったシレディアは、機体のコントロールグリップを華奢な両手で握り締め、真剣な眼差しでコックピットモニターを見つめる。


「あ、あれが超大型の侵略者アントリューズ……!」


廃墟の建物を次々と破壊し、廃都市内を強引に進行する超大型の侵略者アントリューズを前にポストルは、超大型の侵略者アントリューズもたらす迫力と存在感に思わず恐れ慄く。


戦う前から機体のコントロールグリップを握るポストル手が小刻みに震え、硬直したまま動くことができない。


ペラロネの容姿は、まるでミミズのような無数の触手が絡み合い構成された4脚を保ち、巨大な胴体を支え、コンクリートの地面を踏み潰す。


異形の巨大な顔面には複数の青黒い不気味な眼球があり、それら不規則にうごめき、常に周囲を見渡し、周囲の状況を確認する。


その巨大な頭部からは、人間の女性の裸を思わせる上半身が生え、移動する際の振動で2つの乳房が揺れる。


これまで目にしてきた侵略者アントリューズ中でも際立って醜悪な見た目が、ポストルたちの恐怖を煽る。


「っ!?回避して!」


直感的に危険を察知し、自然と体が身震いしたシレディアは、その場にいる3機へ回避運動を取るように通信回線で指示を出した。


その瞬間、ペラロネが触手蠢く巨大な口部を開き、体内から稲妻を帯びた青黒い熱線が照射する。


熱線の出力に建物が熱を帯び、次々と融解し、熱を帯びた粘液が地面を溶かす。


シレディア機、ポストル機、ミソンプ機は何とか上手く回避できたが、タージュ機は回避が遅れてしまった。


「うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


通信回線を通し、各機体のコックピット内にタージュの声が響く。


「タージュ!」


幸いタージュ機の右腕に装備されていた盾に熱線が命中し、タージュがいるコックピットへの命中は避けられた。


しかし、熱線の威力に盾が耐えられず、跡形もなく融解したことでタージュ機の右手足が爆散し、バランスを保てなくなった機体が地面に横たわる。


熱線の照射が静まったのを見計らい、ポストルは、大破したタージュ機の元に急いで駆け寄る。


「無事かタージュ!?」


「あ、あぁ……オレは大丈夫だ」


ポストルは、タージュの声を聞き、彼の無事に安堵した表情を浮かべた。


しかし、彼が搭乗している機体は右手足を失い、戦闘の続行は不可能だ。


「ポストルは、タージュ新兵を安全な場所に移動させて。わたしとミソンプ新兵で敵の注意を引いて誘導する。


「了解!」


シレディアの指示に従い、ポストルは、自身の機体の両手で動かし、大半したタージュ機を掴み、安全な場所へ運ぶ。


その場に残ったシレディア機とミソンプ機の2機が、ペラロネとの戦闘に入る。


ペラロネは、女性の悲鳴にも似た鳴き声を上げ、周囲の空気を振動させ、立ち塞がる2機を威圧する。


そして、左前脚を構成していた触手を分離させ、シレディア機及びミソンプ機の2機に襲いかかる。


厄介なことに触手1本1本から枝分かれし、数を増やしつつ2機を迫り来る。


2機とも装備された近接格闘武装を駆使し、襲い来る触手を素早く切り裂く。


しかし、通常個体よりも再生能力が異常に高く、何度切り裂いても瞬時に再生し、再び襲ってくる。


素早く回避し、一旦ペラロネから距離を置いたシレディアは、今まで倒した侵略者アントリューズの中で1番厄介な相手だと敵ながら称賛した。


過去に単独で討伐した超大型の侵略者アントリューズとは格段に能力が高い。


「厄介……っ!?」


ペラロネの右前脚を構成していた無数の触手が分離し、コンクリートの地面に潜り込む。


敵の攻撃を察知したシレディアは、素早くコントロールグリップを動かし、真下の地面から次々と突き出てくる触手を回避する。


一方、ミソンプも見事な操縦技術を駆使し、ペラロネの攻撃を回避していくが、間髪入れず繰り出される攻撃を全て回避できず、右足と左腕を触手に貫かれ、逃げ出すことができない。


「くっ!?」


身動きできないミソンプ機に狙いを定めたペラロネは、触手がうごめく巨大な口部を開く。


既にエネルギーを溜め込み、口内で青黒い閃光が増幅する。


死を覚悟したミソンプは、力強く瞳を閉じた。


「ミソンプを離せ!」


倒壊した建物を蹴り上げ、飛び上がったポストル機は、ペラロネの広大な背中に飛び乗り、超高周波ブレードを突き刺す。


突き刺された部分から血飛沫が発生し、激痛からペラロネは悲鳴にも似た雄叫びを上げ、意図せずミソンプ機を解放した。


それを見たポストルは、反撃が来る前に自身の機体を操作し、ペラロネの背中から刃を引き抜き、地面に着地する。


「あ、ありがとうポストル」


「ミソンプが無事で良かった」


怒り狂ったペラロネは、会話する暇を与えないと言わんばかりにポストル機とミソンプ機へ触手を向かわせる。


「させない」


2機を守るように現れたシレディア機は、華麗な二刀流捌きで複数の触手を斬り刻んだ。


しかし、瞬時に切り口から再生し、しつこく襲ってくる触手に苦戦を強いられる3人は、険しい表情を浮かべ、ペラロネに挑む。


「キリがない!」


長期戦ではシレディア側が不利なのを理解している彼女は、連続で触手を切り裂き、ペラロネに距離を詰めていく。


超大型の重量から比例して動きは鈍く、接近すれば確実にダメージを負わせられるだろう。


弱らせるだけなら無理して危険な部分を狙う必要はない。


「そこ!」


シレディアは、自身の機体をジャンプさせ、そのまま空中で回転し、2本のエグゼツインブレードでペラロネの横腹を切り裂く。


切り口から青黒い血液が噴き出し、シレディア機の黒い装甲に降り注ぎ、黒い装甲を汚す。


ペラロネの皮膚は、柔らかく刃の徹りは良いが、弱らせる程のダメージには至らない。


シレディア機が与えた傷が瞬く間に再生し、反撃と言わんばかりに彼女の機体が立つ地面の真下から突き出た触手が彼女を襲う。


「っ!?」


シレディアの素早い反応速度で致命傷は避けられたが、シレディア機の頬を掠れ、装甲に切り傷ができる。


「流石は超大型」


ペラロネから一旦距離を離れたシレディアは、その圧倒的な再生能力に不本意ながらも褒め称えた。

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