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視線
愛はやがて幻想を包み込む
身ぐるみに
己の信じたかったものを
差し出せという
愛情とは
手を伸ばせば焔の暖かさ
見つめている輝く瞳
軽やかに跳ね回る足音
幻想とは
見上げる夜空の美しさ
思わず丸く大きい月
玲瓏に光り続ける星
信じたかったものとは
待ち続ける昨日
遠ざかる線路の音
蹲ったままの子ども
わたしという
散らかり続ける表情が
一点に集約する
初めて出会う誰かの
見知っている美しさに
陰影の濃い輪郭を
描いてみたい
発達した骨格の横顔
強さという個性
美しさは美しさとして独立する
それは共有する記号として
光のように真っすぐな速やかさで
波のように押し寄せる確かさで
純粋なものは空を求めない
唯その下にあって輝くもの
暴風雨の不安な夜を過ぎ
明けた光の朝のように
無感動に澄み広がる空
名前を持たず流れる雲
全てを透過して
わたしへ届く
彼方より照射された視線
連続する美が悲しく過ぎていく
瞬きする美は明るいというのに……