傷ついた心
この作品は、妄想であり、創作です。
私はどうしていいかわからなかった。
自体は至ってシンプル。
12歳年下の浩二には結婚を約束している彼女がいた。
結婚前に遠い地方で、独身最後のアバンチュール、後腐れ無さそうな年上の女と遊んでみたかった。
私には海外勤務の主人にひとり娘がいる。
のんびりバイトしてる時に若い青年と浮気をした。
彼は転勤族だからそのうちいなくなるから、またもとの生活に戻るだけ。
そう、ただ、それだけの事なのだ。
しかし、理性と感情がこんなにも別物だとは知らなかった。
それこそ、映画、ドラマ、小説に漫画、歌などで、どうしても別れられずに苦しんでいる男女のテーマってのが、大昔からはたまたこれからも永遠にあるのだろうが、自分の生活を犠牲にしてまで相手への執着ってのは何なんだろう?我儘な子供じゃないのか?と私は本当にそう思っていた。
いやいや子供なのはそんな体験をしたことがなく38年生きて来たこの私だった。
この苦しさは何だ?
彼女への嫉妬?競争心?浩二の肉体への執着?
恋?愛?独占欲?未練?浩二への憎しみ?自己憐憫に自己嫌悪。
とにかくいろんなドス黒い感情と毎日のように戦って私は認めざるを得なかった。
浩二を失いたく無い。
誰にも渡したく無い。
1番欲しいのは浩二の心なのだった。
人として求めてはいけないものなのだ。
そしてこれはまさしく、愛と言うものだろうか。
浩二の携帯が掛かって来ないように、わたしは夕方、暫くの間、自分の携帯の電源を切っておいた。
バイト先のテニスクラブも適当な理由を言って辞め、毎日悶々としていた時、友達がアウトレットにドライブがてら行こうと誘ってくれたので気晴らしに出かけた事があった。
その時かかったCDの曲が、彼女のいる人と付き合ってる歌をかっこよくまとめた歌だった。
“貴方の前で泣いたりしない。寂しいなんて言わない。会いたいなんて言わない。
だって貴方には彼女がいるんだから”
ってな歌詞だが、浩二との事が無かったら
陳腐過ぎて聞き流していた歌だった、多分。
しかし私はその歌を聞きながら不覚にもボロボロ泣いてしまった。
何も聞かない友達の優しさに甘えて泣きながら私は、自分の心の傷にまたまた唖然とするのだった。
さて、浩二の事をどうやら愛してしまったらしい私、どうやって別れますか?