次のステップ
この作品は、全て妄想であり、創作です。
私達は会うたびにお互いを貪りあった
非常に陳腐な言葉だがそれがあの頃の私達にぴったりだった。
私はそれまで自分は淡白のほうだと思っていた。好きな人とはしたいが決して体が欲するとかどうしてもしたいとかそう言う感情に疎く、それで生活に支障を覚えたことも無かったので、よく小説や漫画の中にある相手から離れなれないとか、どうしてもしないと気が済まないとかの気持ちは、ちょっと異常なんじゃないかと本当にそう思っていた。
しかし、相手が浩二だとどうだ?全身に電流が走り、失禁までしそうになる。
浩二の若い、女体への探究心が日増しに旺盛になる。
体中の本当にスミからスミまで舌や指で責められ、なぞられ、広げられ、挿入され、舐められ、吸われ、噛まれ・・・
私はそのたびに悲鳴ギリギリの悦びの声を抑える。全身が浩二を受け入れるための性器となってしまったようだった。
浩二との逢瀬の次の日は、体中が今度は疲労の悲鳴をあげていた。どこもかしこも気だるい、甘いような疼きが残っていた。
私は浩二にすっかり女の体を開発されてしまったのだろうか?。
しかしこれまた不思議なのだが、だいたい浩二とは週1のペースで会っていたが、浩二が出張だったり、私の生理やその他の用事で会えなくとも、別に性欲らしきものは全く無く、世の中でセクシーだと言われている俳優や歌手、はたまたテニスクラブの若いメンバー達の肉体美を目の前で見ても、何も感じないのだった。
どうやら、会話と同じように、性欲も浩二のみに反応するようだった。自分がよく理解できなかった。
でもこれはつまり、完全に浩二に惚れこんだって事ではないのか?
しかし浩二を自分のものだと思っている訳でもないのだった。
浩二はいずれ自分のもとから去って行ってしまう人、それもよくわかっていた。あのころの自分の気持ちは今でも良く分析できない。
とにかく、浩二との時間はまるで昔から用意されてあって、自分はやっとそこにたどり着いた、しかし次には鬼も蛇も出るからいずれここは去らなくては・・・というようなちょっと御伽噺ががっていた。
そんなある日、浩二が言った。
『祖父が亡くなったので、週末実家に帰って来ます。帰って来たら連絡しますね』
今考えると、蜜月時代は終わり・・・
その日を境に私と浩二は別れへのステップを歩き始めた。
さて、すっかり浩二との情事に骨抜きになった私ですが、どうやら暗雲広がる予感ですかな?