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誘われる

この作品は、全て妄想であり、創作です。


私達は湖の手漕ぎボートに乗った。



もう、恥ずかしいなんてもんじゃなかった。娘が小さい時1回ぐらいこれに乗せたっけ・・・

浩二が自分が漕ぐのでどうしてもあれに乗りたいとダダをごねたのだ(笑)

いや、しかし、これまた楽しかった。ボートに向き合って座った時、足が当たってくすぐったかった。

浩二は自分で言いだしっぺなのはさすがで起用にオールを操って見せた。

涼しげな風が吹いてきて、私はすっかりいい気分であった。



それから地元で話題のラーメンを食べ・・・実は私はあの当時、ラーメンがあまり好きじゃなかった。そんなに味にうるさいと自分でも思ってなかったが、自分が美味しいと思うラーメンにほとんど出会ったことがなかった。浩二は若者らしくラーメンの食べ歩きが好きで、ラーメンには人の愛と文化が詰まってると言っていた。

たぶん他の人がラーメン談義など話し始めたら、うんざりしたところだと思うが、というより、私はそもそも、食事の食べ歩きの話があまり好きじゃなかった。どうも嘘くさいと言うか、ただ自分が食い意地をはっていることを上手にグルメ気取りで話ししてるだけだろうと、そういう輩を内心低く見ていた。



が、浩二のラーメン談義を聞いて、これまたすっかり関心してしまった。関西出身の浩二はいかに関西と関東でラーメンの味の違いがあるか、本社東京に居たころと、転勤してからの地方のラーメンがどんな風に味やお客の食べ方、それぞれがひとつひとつ違うのかを語って聞かせてくれたが、私は自分でも呆れるほど熱心にその話を聞いていた。



ちなみに今現在はラーメンは大好きなのだが、これもあの頃浩二にいろいろレクチャーされたおかげだと思っている。そもそも一杯のラーメンを食べる事に対して、うまくいえないが丁寧に味わうようになったのである。


つまり、どうやら私は自分が嫌いな分野の話でもなんでも、浩二が話すと興味深くなってしまうようなのだった。


アメリカのある有名なロックグループを知ったのもそのころである。どちらかというとポップス系とかニューミュージックしか聞かなかったので浩二に知り合わなかったら絶対に聞かない系統の音楽だった。

がコピ-してくれたCDを私はどれだけ聞いたろうか?それこそ磨耗するほど聞き込んだ。

浩二のいる世界に行きたいなんて思ったことは一度もないのだが、なぜか浩二がいいと言ったもの、食べ物、本、音楽、サッカー観戦など興味を持ち始めた自分にびっくりだった。



無邪気に半日たっぷり遊んだ私に、浩二は言った。

『ホテル行ってもいいですか?』



そんな予感は確かにあった。



私が喋るときや、髪を何気にかき上げるときに瞬時に見せる浩二の目。

年上の女に憧れる目ではなく、間違いなく獲物を狙ったオスの目であった。

それに気づいてはいたが、どうも12歳年下って事実が自分を麻痺させており、でもまあ一時期の感情だろう、気まぐれ的な?と自分を勝手に納得させていた。



『正気?

私38歳の人妻の子持ちであなたと干支が一緒なんだよ?』


あれま、ついに12歳年下の子に誘われてしまった私・・・どうしますか?

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