《未来視》は今日も順調です
学校のPCから来れることを初めて知りました。あんまり更新頻度が減らなかったことにほっとしている今日この頃です。
「わかった、僕が話せそうなことを全部話すよ」
まあ、話せないことなんてほとんどないだろうけど。《未来視》を使えば、ほとんどの敵は丸裸にされたも同然だしね。
「まず、敵は集団であることかな。勿論、八魔将が集団なわけじゃなくて、取り巻きがいるってことだけど。そっちはジリアンさんたちなら全く問題ないと思うよ」
実際に、そういう未来が見えてるし。主にアルヴァさんが薙ぎ倒しまくってる。
「へえ、そいつぁありがてえ情報だな。それがわかってるだけでも楽になる」
「そうなんだ。その八魔将のことなんだけど……どう言えばいいんだろ?絵で描いたほうがいいのかな?」
クロとカトレアに言われてるから、あれは使えないしなあ………うーん、不便だ。
「あ、紙とペンでしたらこちらに」
そう言って、シルヴィアさんが探していたものを渡してくれる。優しいよねえ。
「ええっと、確か……こんな感じだったかな?」
あんまり時間をかけるわけにもいかなかったので、手早く描き上げてみた。それをみんなに渡すといきなり吹き出された。
「ユ、ユート、おま、これは………」
「画才が………」
「……ここまで来るともはや感心すらするな」
「み、皆さん、笑ったら可哀そうですよ?」
みんながなんで笑ってるのか、いまいちわからないんだけど………
「ええと、ですね、ユート様」
「うん」
「絵が、下手です」
「……ええ?そうかなあ?」
自分じゃよく描けてるほうだと思ったんだけど。
「……正直に言いますと、子供のお絵かきレベルです」
予想以上に辛口なコメントだった。カトレア、いくらなんでもひどすぎなんじゃないかと思うんだ………
「あら、私は好きだけど?よく描けてるじゃない」
あれ?アメリアさんの声がしたような………?そう思って、もう一度見返してみるといつの間にかアメリアさんが混じっていた。ただ、一つ気になるところがあって………
「アメリアさん、その腕どうしたの?何かに噛まれたみたいだけど………」
「ああ、ちょっとふらついてたら野良の魔物にやられたのよ。油断したわねー」
「そっか。無理しないでね?」
流石に魔物に噛まれれば痛いだろうしね。あ、でも、カトレアから言ってもらったほうがいいのかな?
「……な、なんて可愛いの!?」
「へ?」
声を上げたときにはもう抱きしめられていた。え?どういう状況?
「あ、あの……アメリアさん?」
「なあに?」
「どうしてユート様に抱きついているのですか?」
「可愛いからよ?」
そんな当然のことみたいに言わなくても……ほら、みんな戸惑ってるじゃない。
「は、離れてください!ユート様はまだ怪我人なんですから!」
「ああ、なるほど。大丈夫よ、こうすれば解決するから」
アメリアさんは何故かカトレアまで引きずり込んできた。見ようによっては僕が二人に抱きついてるように見える。……抱きついてるのはアメリアさんだけど。
「カトレア、大丈夫?顔赤いけど………」
「ひゃ、ひゃい!大丈夫です!?」
全然大丈夫に見えない……なるほど、これは心配されるわけだ。
「とりあえず、話を続けてえんだが……いいか?」
「駄目に決まってるでしょ?なんであなたが取り仕切ってるの?」
心底不思議そうに言わないで。ジリアンさん、困ってるから。
「アメリアさん、魔族がいると大変なことになるから。一旦、やめにしないと」
「そう?仕方ないわねえ」
……僕の言うことなら聞いてくれるんだ。いったい、何があったんだろ?
「とりあえず、どんな外見かはっきりさせとかないと……でも、僕の絵じゃ伝わらなかったみたいだし………」
「ああ、それならこれじゃ駄目なの?」
アメリアさんが渡してくれた紙には、あのボルグと名乗った魔族の絵が描いてあった。でも、これ………
「すげえな、今にも動き出しそうなんだが………」
そう、ものすごく上手いのだ。立体感や陰影のつけ方まで完璧だった。
「ありがとね、アメリアさん。助かったよ」
「ふふ、いいのよ。ユートちゃんのためならこれくらいは、ね?」
やっぱり、態度の急変に違和感が………あとで聞いてみようかな?
「それじゃあ、相手の特徴を教えていくね」
相手が物理攻撃が効かないことから始め、弱点、攻撃方法、どんな攻撃なら効くのかまで。なるべく多くの情報を与えられるように頑張った。少し間を置こうと思ったら、ジリアンさんとアルヴァさんが感心してた。
「すげえな、ユート。そこまで調べてくれてたのか。助かったぜ」
「ああ。どんな攻撃が効くかまで調べてくれたとは……頭が下がる思いだ」
「そこまで大したことしたかなあ?」
単に未来を見て、そのことをそのまま伝えただけなんだけど。
「お前なあ、これは十分褒められるべきことなんだよ。こっちは手の内を晒してないのに、むこうはほとんど筒抜け状態なんだぞ?」
「前の戦闘を考えれば、五分には持っていけるかもしれん。お前は誇ってもいいのだ」
うーん、そこまで言われるならそうなのかなあ?
「あ、でも、もう少しあるよ。まずジリアンさんたちのレベルがみんな40以上であること。それなら対抗できると思う。次に、最大攻撃のタイミングで一旦その場を離れること。辺り一面火の海になるから、回避はできないって考えてもらっても構わないよ。で、最後にだけどクロとアメリアさんを連れてくこと。これで勝てると思う」
これで与えられる情報は全部だ。むこうの趣味嗜好なんて教えても意味ないだろうし………
「よくもまあそこまで集められたもんだな、おめえ………」
「ちょっと待って、なんで私まで参加させられる感じになってるの!?」
うん、まあ言われると思ってた。
「ごめんね、でもお願いだよ。もしかしたら万が一ってこともあるし」
「うう、そんな顔で見られると………」
アメリアさんがすごい葛藤してる……しばらく頭を抱えてはいたが、ため息をつくと顔をあげた。
「仕方ないわね、今回だけよ?あいつにはちょうど用事があったし」
「うん、ありがとう。……そういえばクロは反対しないんだね」
「……我もやつには用がある。それだけだ」
「そっか。無理しないでね?」
「心得ておこう」
「んじゃ、俺らは出てくか。あんまり負担をかけてもわりいしな」
「わかった。またね」
挨拶を交わして、みんなを見送る……が、その前に。
「シルヴィアさん、ちょっといいかな?」
「はい?構いませんが………」
もう一つだけやることがあるからね。そのために、シルヴィアさんは必要なんだ。