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突然の来訪

 「……で、どうすんだ?」

 

 腕を組んだ状態で、ジリアン様が問いかけてくる。どうする、とは先程のお父様の言っていたことに対してだろう。


 「……本当はもう少し休みが必要なのはわかっています。ですが………」

 「犠牲者がもう出ているそうだからな。休んでいる間に被害は大きくなるだろう」

 「じゃあ、行くしかないってこと?」

 「いや、やめておいた方がいいぞ」


 その言葉に息をのむ。確かに、ジリアン様がお父様のことを嫌っているのは知っていた。でも、何も今ここでそれをはっきりと示すような態度をしなくても………


 「ジリアン。あんた、見捨てる気なの?被害が出てるのに」

 「そうだな。そういうことにもなるかもしれねえ」

 「なっ………!」

 「ジリアン様、お父様を嫌っているとは言っても今はそれどころでは!」

 「勘違いしてるみてえだな。そうじゃねえよ」


 その言葉に凛花様と二人、動きを止める。


 「まず第一に、だ。あのオッサンの話によれば八魔将が出た。前回の八魔将でわかったろ?今の俺たちじゃまぐれに頼らねえと誰かが倒れる」

 「それは……そうだけど」

 「もう一つ、今の疲労だ。この状態で八魔将の前にでも立ってみろ。確実に全滅だ」


 ……確かにそうだ。あのカルラと名乗った魔族にもコンディションがいい状態で挑み、辛くも勝利をもぎ取ったのだ。今の状態では恐らく、無駄死にするだけだろう。


 「それに旅慣れしてねえのが混じってんからな。道中でぶっ倒れるのがオチだ」

 

 全員が押し黙る。誰も反論できないからだ。

 そんなとき、その静寂を破る声が聞こえた。


 「なんだ?いちいちうるさいやつらが珍しく静かだな」


 開口一番にいきなり嫌味。間違えようもないこの声とは帝国で別れたはずだった。


 「……あなたこそなんですか?嫌味を言うためにわざわざここに来たんですか?それなら随分と暇なことですね?」

 「はっ、用がなければ訪ねることも許さないとは狭量なやつだな。こんな女が姫なのだからこの国の未来は哀れでしかない」

 「それは時と人に依りますよ。少なくともあなたとは好き好んで顔を合わせたくないだけです」

 「ほう。それは我もだ。貴様と同じ空間にいるだけでも虫唾が走る」

 「それなら早く帰ってください。私の精神上それがいいと思いますし」

 「ああ、ストップストップ。二人とも一旦落ち着きなさいよ」


 流石に見かねたらしく、凛花様が割って入る。勇者様を邪険に扱うことなどできないので、一旦動きを止める。とは言っても、むこうが少しでもおかしなことをしたら私も強硬手段に踏み切るのだが。


 「で、何か用?何もないなら後回しにしてほしいんだけど。今は忙しいしね」

 「どこがだ。暇を持て余してるようにしか見えんぞ」

 「あんたねえ………」


 ため息をついて、何かを言おうとする。そこにジリアン様も加わった。


 「おいおい、やめとけよ。こいつが嫌味を言わねえ相手なんざユート以外にいねえだろ。素直に諦めて用件を聞く方がいいっつの」

 「少しは聡いようだな。確かに主以外はどうでもいい」

 「ほらな?まともに聞こうとする方が時間の無駄なんだよ」


 それもそうかもしれない。ただ、放っておけば放っておいたでいつまでもグチグチと嫌味を言ってきそうだ。


 「で?早く話に入ろうぜ。どうせユートが待ってんだろ?ついてきてねえみてえだしよ」

 「それもそうだな。お前たちと悠長に話している暇はない」


 ……なら、何故いちいち口を開けばああなのだろうか。必要最低限のことだけを口にすればいいと思う。


 「嫌々ではあるが、お前たちにはこれからついてきてもらう。反論は許さん」

 「いや、許せよ。大体、俺たちはこれから行かなきゃいけねえところがあるんだぞ?」

 「そんなことはどうでもいい」

 「どうでもよくねえよ。人が死ぬかもしれねえんだからな」

 「ふん、我には関係のない話だ。そんな有象無象よりも主の方が大事なのだからな」

 「……ここまで来るといっそ清々しいな………」


 そんなことはないだろう。この世界の人々を見捨てると言ってるようなものなのだから、私としては不快にしかならなかった。


 「せめてもう少し態度を改めろよ。頼みごとをするなら、それらしい態度ってもんがあんだろ」

 「改めれば聞くと?」

 「あ?まあ、内容によるが……いや、待てよ?」


 ジリアン様があごに手を当てて何やら思考している。そして、急に真剣な声で魔物に向かって問いかけた。


 「おい、黒犬。一つ聞きたいんだが」

 「なんだ?」

 「お前の用事はすぐに済むようなものか?それと、用事が終わった後にお前の能力を使ってもらっても構わねえか?」

 「……用事はお前たちの腕にかかっているな。我の能力については内容による」

 「そうか……試してみる価値はありそうだな」

 「どういうこと?」

 「こいつの能力で現地に向かう。それなら時間にも余裕が持てる上に、疲労もなしで済む」


 その考えを聞いて、皆が声を上げる。そうだった、この魔物には転移能力があるのだ。


 「なるほど、それは試してみた方がいいかな。最悪、ユートから頼んでもらえばいいんだし」

 「ああ、消耗が少ないのならその方がいい」

 「じゃあ、無理に歩き続けなくてもいいんですね!よかったです!」


 私としても嬉しかった。まだ守れる可能性があるのだから。これは感謝しなければいけないだろう。……ユート様に。


 「んで、何を頼みたいんだ?」

 「……お前たちには主の治療と………魔族の討伐を依頼したい。これからバーホルト国へ行ってな」

投稿が遅れてすみません。ここのところ忙しいので、なかなか執筆できませんでした。加えて7月からはさらに忙しくなるので、投稿するスピードもかなり遅くなると思います。読んでいただいてる方々にはご迷惑をおかけしますが、ご理解のほどをお願いします。

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