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やっと到着したようです

三日連続で投稿できた……軽く感動しています

 「やっと着いたね」


 道中が道中だっただけに、流石に疲れた。そう、アメリアさんがいたから《テレポート》禁止を言い渡されたんだよね。勿論、クロとカトレアに。いくらなんでも説教中に出していたからばれてるんじゃない?って言ってみたけど、それならクロの能力にすればいいということにされ、結局隠すことに。楽だった道のりが一気に難易度が跳ね上がった気分だった。途中からクロの上に乗せてもらって移動することに。何というか、すごく情けないなあと思ったよ。

 それにアメリアさんの態度が全く変わらないから、さらに疲労を加速させられた。コミュニケーションを取ってくれない割には、気に入らないことがあると否定してくるんだよね。それでクロが怒るから仲裁に入る僕とカトレアが一番疲れてるんじゃないだろうか。そんなことがあっただけに、無事にこのバーホルト国に辿り着けてほっとしている。隣を見ればカトレアも胸を撫で下ろしているようだから、同じ気持ちなんだと思う。


 「そうですね。今日は疲れましたし、中に入って早めに宿を取りませんか?」

 「そうだね。それがいいかも」


 今の時間帯は昼なんだろうけど、疲れていることを考えると今日はなるべく早く休んだ方がいい。野宿じゃないだろうから見張りをする必要もないし。久々にゆっくりと眠れると思う。

 バーホルト国の中に入るためには、大きな門をくぐる必要があるみたい。で、門のところで門番にチェックを受ける必要もある。まあ、盗賊とかが入ってこないように気を付けなきゃいけないだろうしね。当然と言えば当然かな?要は身分を証明するものを提示すればいいみたい。


 「……そんなものあったっけ?僕、持ってないような気がするんだけど」

 「持ってますよ?冒険者ギルドに登録したときに、冒険者カードを渡されましたよね?」

 「ああ、そういえば貰ったね」


 あんまり使わないから意味あるのかな?って思ってた。そのことを包み隠さず伝えると、カトレアは苦笑していた。


 「使っていますよ。依頼を受けたりするときは冒険者カードが必須ですから」

 「そうなの?」

 「そうです。クロさんに預けてたからわからないだけなんじゃないですか?」

 「…………」


 無言で視線をあらぬ方向に向ける。別に言葉の通りとか、そんなんじゃないんだよ?


 「まあ、依頼は全部私が手続きしていたようなものでしたからね……無理もないです」


 少し寂しげに笑う。あのときはなんであんなに多くの依頼を受けようとしていたのかわからなくて、好きにさせてあげようと思っただけだった。けど、今は違う。どうしてお金を欲しがっていたのかも、どうしてあんなに急いでいたのかもわかる。そして想像でしかないけど、どうして今寂しげに笑っているのかも。ここで何もしないのはいけないような気がして、カトレアの頭を撫でる。少し驚いたような顔をしたけれど、別に嫌ではなかったみたいで払いのけるようなことはなかった。

 しばらくそうしていると、やけに後ろが騒がしい事に気付く。何かあったのかな?そう思っていると、いきなり肩を叩かれた。


 「おい、ちょっといいか?」


 振り返ってみると、体格ががっちりとしたおじさんがいた。鎧をつけていて、手には槍を持っている。表情はどことなく険しい気がする。何か悪いことしたかな?


 「ええっと、何かな?」

 「いや、お前さんの連れだろ?あいつら。何とかしてくれなきゃ、入れたくもないんだが」


 そう言われて後ろを恐る恐る二人で見てみると………


 「邪魔をしないでよ!あんた何なの!?」

 「貴様こそ何のつもりだ!主に危害を加えようとするなどと!」


 門番の人のチェック待ちをしている列の後方で、魔法をバンバン撃っている女の人とその女の人に向けて襲い掛かっている黒い狼がいた。言うまでもなく、アメリアさんとクロだった。


 「……なんか、ごめんなさい」


 流石に僕のせいじゃないと言えどもあれはひどい。思いっ切り人が避けている。というか、恐怖している。教えてくれた門番さんなのだろうか?その人に謝る。


 「いや、まああいつらが勝手にエスカレートしてるってのはなんとなくお前さんの表情でわかるさ。だからお咎めはしねえが……なにぶん、怪我人が出ても困るしな。早く止めてもらいたいわけだ」


 何ということでしょう。この人はいい人だ。普通だったら取り調べられるくらいされそうなのにねえ………話がわかる人が来てくれて助かったと思うべきかな。


 「わかったよ。じゃあ」


 止めてくるね、と言おうとしたときカトレアがすたすたと二人の下に向かう。あ、あれ?


 「カトレア?僕も一緒に………」

 「いえ、大丈夫です。ユート様はその場でお待ちください」

 「う、うん………」


 何故か、カトレアの言葉に従わなくちゃいけない。そんな気がした。それくらいの迫力だったのだ。でも、あれって………


 (怒ってる、よね?)


 怒り、という感情を正しく知った今ならカトレアが怒っているのはわかる。けど、なんで怒ってるんだろ………?


 「……なるほどなあ。人の恋路を邪魔したから馬に蹴られるわけか」

 「こいじ?馬に蹴られる?馬なんてどこにもいないよ?」


 辺りを見回してみるけど、見当たらない。それとも、僕に見えていないだけだろうか?


 「お前さんがそんなんだから、さっきみたいなのは珍しいわけか……まあ、そりゃ怒るわな」


 門番さんはしきりに納得した、といった顔で頷いている。だからどういうことなんだろう………?


 「何をしてるんですか、あなたたちは!」


 そんな怒声をバックに、なぜ怒っていたのかを必死に考えるのだった。

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