アメリア
ひとしきりお説教が終わり、やっと解放された。うう、今日も長かった………ちなみにクロまで巻き添えを食らっていた。なんでもわかっていたんだったら止めてください!だって。口を開いて反論しようとしていたけど、結局勢いに呑まれて僕と一緒に怒られた。うーん、理不尽だ。そして、カトレアは怒るとほんとに大変な目に合う。気を付けよう………
「……もうそろそろ話は纏まったかしら?」
声のした方を振り返ると、助けた女の人が苦笑していた。さっきのやり取りを見ていたんだろう。見ているだけなら面白いのかもしれない。怒られてる本人たちにとってはたまったものじゃないけどね………
「あ、すみません!混乱しているところに説明もせず………!」
ほんとだよね。お説教よりも先に説明した方がよかったんじゃないかな?ただそれを口にすると、さらに追加されそうだったのでやめておく。そろそろ何をしたら怒られるのかはわかってきたし。
「別に謝らなくても大丈夫よ。面白いものを見せてもらったしね」
やっぱり面白いと思われていたようだった。笑っているけど、僕はそんな気にはなれないんだって。というか、助け舟くらい出してくれてもいいと思うんだけどなあ………
「そう言ってもらえると助かります……私はカトレアと申します。それで、こちらが………」
「ユートだよ。よろしく」
「そう、私はアメリア。よろしくね」
アメリアさんと名乗ったその人とようやく向き合う。深紅のような赤い髪を腰まで伸ばし、動きやすそうな格好をしている。不用心というべきかどうなのかではあるけれど、武器の類は見つけることができない。顔立ちはかなり整っている。一つ一つのパーツだけを見れば、それほどではないのかもしれない。でもパーツが集まり、絶妙な位置に配置されているため、かなりの美人に見えちゃうんだよね。スタイルもよかった。出るべきとこは出て、引っ込むべきところは引っ込んでいる。特に、胸がすごかった。コルネリアさんよりも大きいし。これが前にジリアンさんが教えてくれた爆乳?ってものなのかな?とにかく、アメリアさんはかなりの美人だった。だからと言って何をするわけでもないんだけど。
「あら?どうしたの、そんなにじろじろと私を見て?」
どうやら見ていたのにばれたみたい。失礼だったかな?
「まあ助けてもらったことだし、少しくらいはサービスしてあげようかしら?」
そう言って、腕を組んで見せる。位置が位置だったので、胸が強調される。で、こっちを向いているわけなんだけど………
(……ええと、どう反応すればいいのかな?)
正直、首を傾げるくらいしかできることがない。何か意味のある行動なのだろうか?でも、コミュニケーション能力がジリアンさんの1/10もないであろう僕には何をすればいいのかわからない。しばらく首を傾げた状態で考え込んでいると、どうやら見かねたらしい。カトレアが助け舟を出してくれた。
「あの、アメリア様?ユート様はそういったことに無反応と言っていいくらいなんです。なので、やらなくてもいいかと………」
そう言うと、アメリアさんはびっくりしたようで目を見開いた。そして、カトレアに向けて問いかけてくる。
「え、ないってどういうこと!?男でしょ、この子!」
「は、はい………」
「じゃあ、反応ぐらいしそうなものじゃない!」
「それがまったくしないんです………」
「……どうして?」
「たぶん、そういった感情に疎いからかと………」
なんか半ば諦めたような目で僕を見てくる。……ほんとに、カトレアって僕のメイドなんだよね?
「はあ、それが真実だったとしてよ?なんで私の方をじろじろ見てたのかしら?特に胸を」
「珍しかったからだと思います。あんまりそこまで大きなものを見たことはないようですし………」
「私は珍獣扱い?腹が立つわね………」
「そんなことを言っていたら、ユート様にとってはみんな珍獣になりますよ………」
「そうなの?」
「そうなんです。どうやら目につくものすべてが珍しいようで………」
「……どんな生活してたのかしら?」
カトレアとアメリアさんの会話をただボーっと聞いていたのだけど。ここで気付いた。アメリアさん、カトレアとしか話していない。こっちに語り掛けることもあるし、僕の話も聞いてはいるようではある。でも、話をしてはいないんだよね。なんでだろ?
「ところでカトレアちゃん?あなた、私に仕えない?」
「え?」
「苦労してそうだし、その男の子よりも大変なことが減るわよ?」
「え、いや、その………」
そんな会話が耳に入ってきたので、顔を上げて二人の方に目を向ける。すると、カトレアのあごに手をかけてじりじりとアメリアさんがにじり寄っていた。
「私は獣人だからって差別はしないし、待遇もよくするわ。それに、カトレアちゃん可愛いし……私のものにしちゃいたいわ」
「あ、あの………」
カトレアがこっちを向いて、何かを訴えている。……これはどうするべきかな?
「どう?私のところに来ない?たっぷりと可愛がってあげるわよ?」
「い、いえ!結構です!別にユート様の下で働くのは嫌ではないですから!」
そう言って、僕の後ろに隠れる。アメリアさんはあらかさまに残念そうな表情を浮かべる。
「そう、残念。でも、気が変わったらいつでもいらっしゃい?歓迎するわ」
アメリアさんは微笑んでいるのだけど……後ろにいるカトレアはなんか怯えた感じになっている。何が怖いんだろう?疑問が絶えないまま、時間だけが過ぎていくのであった。




