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カルラとの決着

 「さて、と。今回はまあ戦えるといいんだがな………」

 「前も戦いましたよね?」

 「いや、どちらかというと遊ばれてるの方が正しかっただろうな。それに、今回は前のように奇跡は起こらないものと考えていいだろう」

 「あわわわわ………」

 「ま、そんときゃやばくなる前に逃げるまでさ。退路だけは塞がれねえようにしとけよ?」

 「なんで私に言うんだか………」


 前回、八魔将に負けた場所。私たちはその近くまで来ていた。勿論、魔族を討つために。ただ………


 「少しは緊張感を持っていただきたいのですが………」

 「つっても、緊張感でガチガチになってたらまともに動けもしねえだろうからなあ」

 「そこまで持てとは言ってませんよ………」


 緊張を和らげるために言っているのだろうけど、あまり緊張していないのもどうなんだろう?そんな風に頭を悩ませる。


 「っと。どうやらお出ましのようだぜ?」

 「……どこだ?」

 「あっちの茂みだ。たぶん前と同じカラクリだろうよ」

 「そうか」


 アルヴァ様が端的に返事をして、発砲する。放たれた銃弾は空中で停止し、それまで見えなかった敵の姿が見えるようになる。


 「おいおい、またばれたのかよ?どうやって見抜いたんだァ?」

 「だから答えるわきゃねえだろ?馬鹿なのか、お前?」

 「ああ?調子に乗るなよ?前に散々やられてたじゃねェかよ」

 「ま、そりゃそうだ」


 ジリアン様が肩をすくめる。あまりにもいつも通りの姿を見てどこかほっとする。


 「では、手筈通りに頼むぞ」

 「シルヴィア、コルネリア。よろしく」


 アルヴァ様が先行し、少し遅れて凛花様が続く。二人が目指すのは八魔将。私たちがするのは二人の支援だ。


 「ったく、俺の名前はねえのかよ。あいつらしいと言やあ、あいつらしいが」


 ジリアン様も二人に遅れてついて行く。あの人がするのは中衛。前衛と後衛のサポートを一人でやるらしい。いくらなんでも無茶苦茶ではないかと思ったが、彼以上に器用な人はいない。実際に上手くサポートしてくれている。


 「ええっと、怪我してる人は……いないみたいですね」


 コルネリア様はいざというときに備えて、回復魔法をいつでも使えるように待機している。私の役目は魔法で魔物たちへの攻撃、牽制だ。そして凛花様が魔族、魔物の牽制。アルヴァ様が魔族への攻撃を行う。

 この短期間でレベルを上げることと同時に、連携を練習してきた。もっと時間をかければあるいは勝てたのかもしれないが、それでは時間がかかり過ぎる。そのため、足りないであろう実力差は1対1で戦わないことによって補うことにした。


 「これだけやらねえと互角に戦えねえっつうのが問題なんだけどな………」

 「ぼやいてる暇あったら一匹でも多く魔物を倒しなさい!」

 「へいへい。人使いが荒いことで」


 軽口を言っているが、油断しているわけではない。それどころか、前にも後ろにもちゃんと気を配っているのだから素直にすごいと思う。

 そう、連携によって実力差不足を補うことを提案したのはジリアン様だった。彼の所持している《集団戦闘》スキルで驚くべき速さで集団戦ができるようになったのだ。前の戦いでは集団戦というよりも個人個人が思い通りに戦っていたような気がする。この戦い方になってからは個人では時間がかかるような相手もすぐに倒せてしまうものだから呆気にとられたものだ。その成果は今互角の戦いを演じているという形で表れている。


 (けれど、まだ互角……何か、ほんの少しでもあの魔族を崩せる一手があれば………)


 迫りくる魔物たちを魔法で薙ぎ払い、吹き飛ばす。だが、これはこれ以上不利にならないためにしていることだ。例え敵が魔族一体となってしまっても油断することができない。それほどの相手だから。


 (一体どうすれば………?)


 そのときだった。たった少しの集中力の途切れだったのだろう。凛花様が魔族から注意をそらしてしまった。だが、それは魔族にとっては大きな隙だった。


 「馬鹿が!」


 アルヴァ様に四肢で対抗しているが、まだ翼が残っている。その翼で攻撃するつもりなのだ!


 「しまっ………!」

 「凛花様!」

 「凛花さん!」


 翼が当たる!そう思った瞬間。


 「あ?」


 凛花様が消えた。何の兆候もなく、唐突に。


 「一体どこに………っ!?」


 そして、魔族にもまた異変が訪れていた。いきなり膝をついたのだ。今まではそんなそぶりも見せなかったのに。その隙に連続で発砲音が鳴り響く。アルヴァ様が隙を見逃さず、攻撃を仕掛けたのだ。攻撃はすべて当たり、傷を作る。


 「がっ!?」

 「何が起こったのかは知らんが、隙を見せてくれて助かったぞ」

 「……私も何が起こったのかわからないけどね………」

 「凛花様!?ご無事だったのですか?」

 「うん。なんかいきなりあの魔族の背中側にいてさ。前に話してくれた奇跡に似てたかも」

 「凛花さん……よかったです、本当に………」

 「コルネリア、心配し過ぎ。大丈夫だって」

 「それよりアルヴァ様の支援はいいのでしょうか………?」

 「問題ねえよ、あの様子じゃな」


 確認してみると、ジリアン様の言う通りもう勝負は決まっていた。銃で撃ち抜かれ、魔族は動かなくなる。残った魔物も魔族が死んだのを見ると散り散りになって逃げていく。


 「終わったぞ」

 「おう、お疲れさん。やっと一体目、だな」

 「はい、本当に……よかった」


 皆大きな傷もなく終わらせることができた。それが本当に嬉しい。


 「ま、そっちの暴力女に何があったのかは後で聞くか。落ち着くところまで行こうぜ」

 「そうだね、今回ばかりは賛成。ただ……あんた、あとで覚えてなさいよ?」

 「マジかよ………」


 その場に止まり、辺りを見回す。凛花様は奇跡のようだ、と言っていたけれど………


 (まさか、ですよね………?)


 「シルヴィア?行くよ?」

 「あ、すみません。今行きます」


 考え過ぎかと浮かんだ考えを追い出し、勇者様たちの後を追いかけた。


※               ※               ※

 「ふう、無事でよかった………」

 「お疲れ様です。もう一つはこれだったんですね」

 「うん。『未来視』で凛花さんが大怪我してるとこが見えたからさ」


 もう一つの行きたい場所はみんなが魔族と戦う場所のことだった。なんだか嫌な予感がして、みんなに未来を見たんだよね。そしたら凛花さんがここで大怪我している未来が見えたから何とかしようと思ったんだ。お世話になったしね。そして、攻撃されそうになった凛花さんを『テレポート』で魔族の背中に飛ばした。そこに飛ばせば決着がつく未来が見えたから。


 「じゃあ、今度こそ行こうか。用事は済んだしね」

 「はい」


 みんなにばれないうちに転移で飛んだ。シルヴィアが見回すころにはもう、その場には誰も残っていなかった。 

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