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しばしの別れ

 「……ええっと。なんかごめんね?」


 ジリアンさんがみんなを呼びに行ってから5分後。二人をすぐ起こせたのはよかったんだけど……そこからが大変だったんだよね。カトレアは怒るし、シルヴィアさんはひたすらに体に異常がないか確認してくるし。少なくとも体を起こすくらいは大丈夫だ、ってことを見せてみると二人して泣き出しちゃったし。もう何が何だかわからないからとりあえず謝っておいたよ。たぶん心配してたんだろうけど。


 「……もうこれ以降は無理をしないでください。絶対に」

 

 カトレアにそう言われたんだけど……うーん、そんなことできるんだろうか?正直無茶してばっかだし、クロに聞いてもおおよそ同じ答えが返ってくるんじゃないかと思う。


 「……ユート様?」


 カトレアに睨まれました。なんでばれたんだろ?おかしいなあ………


 「今度無理をしようとしたら流石に止めますからね?」

 「ええ?大丈夫なの?」


 それって、下手したら死ぬかもしれなくない?


 「何と言われても、です!いいですね!?」

 「う、うん………」


 なんかカトレアには一生頭上がらないような気がする……情けないような?でもどっかの本で男は嫁の尻に敷かれるものだ、って書いてあった気もするし、みんなこんな感じなんだろうか?そう考えるとなんだか安心できるような気が……全くしないや。困った事態は何も解決していないじゃない。どうしたものかと考えを巡らしていると………グーッと音がした。


 「……あ。そうだった」


 いろいろあったから忘れてた。そういえば、お腹空いたから起こしたんだよね。お腹が鳴るまで気付かない辺り、いつも通りに活動できてるってことなのかな?


 「あ、すみません!気付けなくて………」

 「え?それは無理じゃない?」


 いくらなんでも僕自身のことなんだし、そんなことできるかなあ?って思うんだけど………


 「え?できますよ?」

 「え?」

 「え?」

 「いや、だって僕の感覚でしょ?カトレアがわかるわけないんじゃ?」

 「そう、ですよね。それに、ユート様はお世辞にも表情が豊かな方とは言いづらいですし………」

 「……あれ?なんで私わかるんでしょう?」

 「うん。僕が聞きたいかなあ」


 みんな揃ってはてなマークを浮かべながら、持ってきてもらった果物を食べたのだった。


※               ※               ※

 「すっかり良くなったみたいだね」

 「うん。今は元気だよ」


 起きてから1日は静養しろ、とみんなから(特にカトレアとクロとシルヴィアさんから)言われたので、渋々布団で寝てたもののそれがよかったらしい。もう一人でも歩けるレベルまで回復したし、食事もちゃんとしたものを食べれるようになった。昨日はまあ、少なくとも歩き回るまでは無理だったんじゃないかな?ちゃんと休むのって大事なんだねえ、としみじみそう思ったよ。

 昨日のあの後はみんなで不思議がっていたんだけど、クロが解決したんだよね。なんでも僕のことをよく見てるからじゃないか、だって。そんなものなの?って聞いてみたんだけど、クロ曰く。


 「それだけなわけがなかろう。要はこいつが主にほ………」

 「わー!わああぁぁぁぁぁ!」

 「???」


 クロが何か言おうとしたんだけど、カトレアが急に叫び出して聞き取れなかった。何言おうとしてたんだろ?顔を真っ赤にしてたのが印象的だった。あと、なんか凛花さんたちが笑いをこらえる感じだったのも。アルヴァさんも?な感じだったから、僕だけが気付いてないわけじゃないよね?まあ気になったから聞こうとしたのだけど、凛花さんたちは本人が言いたいだろうから私たちは黙っているって言われちゃった。何なんだろう、本当に………?

 で、話を元に戻すけれど。やっぱりあそこに魔族が、それも八魔将の一体がいるっていうのはまずいみたい。そもそも、あの魔族をどうこうしないことには王国にも戻れないようだし。だけど、今の自分たちじゃどうしても敵わない。だから凛花さんたちはもっと力を付けてどうにかしよう、って考えてるみたい。それで、僕が全快するのを待って出発するらしかったんだ。今はもう回復してるし、今日出発するんだって。急だなあって思ったけど、魔族がどう動くかわからない以上早めに動いた方がいいみたい。言われてみれば納得できたよ。それなら僕もついてった方がいいんじゃ?と言ったものの、却下されちゃった。なんでもカトレアのことがあるからだそうな。他にも理由はありそうだったけど………


 「んじゃ、元気でな。またどっかでばったり会うかもしんねえがよ」

 「うん、ありがとうジリアンさん」


 いろいろとお世話になったみたいだし、お礼を言う。向こう側ではカトレアと凛花さん、コルネリアさんが何やら話をしてた。


 「カトレア。ユートは鈍感っぽいし、伝えるなら早めの方がいいかもよ?」

 「え、いや、あの、そんなんじゃ………」

 「気付いてないのは本人くらいだって。あんまりゆっくりしてると誰かにとられちゃうかもしれないし」

 「あ、あう………」

 「頑張ってください、カトレアさん!応援してますよ!」


 ……何のことだろう?ガールズトークにはついていけないなあ………


 「ユート様。帝国は人間至上主義の国です。くれぐれもお気を付けください」

 「どういうこと?」

 「カトレアさんから離れてしまえば、何をされるかわからないということです。最悪、奴隷にされる可能性も………」

 「そう、なんだ。ありがとう。教えてくれて助かったよ」

 「いえ、こんなことしかできず申し訳ありません………」

 「大丈夫だよ。シルヴィアさんにも助けてもらってるし」

 「は、はい………」


 凛花さんたちの話も終わったらしく、こちらに戻ってくる。


 「じゃあ、またね。気を付けて」

 「おう、またな。おめえこそ気を付けろよ?」

 「無理しそうになったらちゃんと止めてあげてね?」

 「あ、はい!」

 「そんなに信用ないのかなあ………?」

 「ユート君がいろいろやらかしてるからですよ………」

 「うう………」

 「ユート様。またどこかで。元気な姿で会えるといいですね」

 「うん、シルヴィアさんも無理しないようにね」


 そんな言葉を交わしながら、みんなと別れた。残ったのは僕とカトレア。そしてクロだけ。姿が見えなくなるまで見送った後、カトレアが口を開く。


 「……ユート様。部屋に戻りませんか?」

 「そうだね。これからのことについても話し合った方がいいだろうし」

 「はい。そのことについて……話があるんです」


 それを聞いて、遂に話すのか。そう思った。 

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