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散策してみよう

 不規則な生活も慣れてくると段々と楽になってくるもので。今日も今日とて寝ている間に目的地に着いたらしいのだけれど………


 「……あれ?町がある?」

 「そうですよ。帝国までの中間地点、といったところです」

 「もうそんなところまで着いたんだねえ………なんだかあっという間だったような」

 「そうですね。特にユート様は寝てばかりでしたから………」


 なんだかため息をつかれた。……ひどいなあ。


 「とりあえず宿を取りましょうか。今日はゆっくりと休みたいでしょうし」

 「うん、わかったよ」


 馬車を指示されたところに止めて、宿を探し始める。幸い、そんなに時間をかけることなく宿を見つけることができた。


 「無事に取れてよかったね」

 「本当にそう思います。取れなかったらどうしようかと思ってしまいましたし」

 「そうなってたらどうなってたの?」

 「……野宿でしょうか?」

 「なんだかそれは嫌だなあ………」


 せっかく人が住んでるところまで来たんだからベッドで寝たいよね。野宿は背中とかが痛くなるし………

 宿に泊まれるのは立地上の問題みたい。あまり人が来るわけじゃないから、お客さんは多ければ多い方がいいんだって。だからカトレアみたいな獣人でも、お金さえちゃんと払ってくれるなら泊めてくれるみたい。そう包み隠さず話すあたり、さばさばした人なのかな?単純な人とも言えるんだろうけど。でもそう言ったら、カトレアとクロにお前が言うなって言われちゃった。ひどいよね。


 「ここにはどれくらい泊まるの?」

 「食料の補給をして、売るものもあるようなので……1週間ほど滞在すると聞きました。状況によっては少し前後することもあるようですが」

 「1週間くらいかあ……何して過ごそうか?」

 「……どうしましょうか?」


 言っちゃ悪いのかもしれないけど、ここって何にもないんだよね。王都とかだったらまだ何かあったんだけど………


 「とりあえず明日は町を見て回りましょうか。もしかしたら何かあるかもしれませんし」

 「そうだね。そうしようか」


 そういう結論に落ち着き、眠った……んだけど、最近カトレアって一緒に寝ることにごねなくなってきたよね。別にいいんだけど。


※               ※               ※

 「ええっと、どこから回ろうか?あんまり広くはないだろうから1日で回れそうだけど」

 「あまり深く考えなくてもいいと思いますよ?1日で回れそうなんですから」

 「そっか。それもそうだね。じゃあ、行こっか」

 「あ、ちょっと待ってください!」

 「?何?」


 そう言ったら、手を繋がれた。強制的にだったけど………


 「ユート様はすぐにはぐれてしまいますから。こうしてないと不安です」

 「……そんなことはないよ?」

 「お祭りのときの前科がありますよね?それに方向音痴ですから」

 「そんなことはないよ?向こうが動いてるだけだよ?」

 「……そんなに多くのものが動いていたら地図なんてものはなくなってますよ………」

 「まあ、はぐれそうだからそうするという理由もあるだろうがそれだけではなさそうだな」

 「え?そうなの?」

 「く、クロさん!?」

 「カトレアが手を繋ぎたがっているという理由も………」

 「ゆ、ユート様!?早く行きましょう!」

 「え、うん………?」


 なんか若干引きずられ気味ではあったけど、町の散策が始まった。でもその前に言っとかなきゃなんだけど。


 「カトレア?別に手を繋ぎたいんだったらいつでも繋いでもいいんだけど……?」

 「そ、そういうのはなんだか甘えちゃいそうだから駄目です!」

 「え?でも………」

 「駄目なものは駄目です!」

 「うん………?」


 女の子ってよくわからないものだねえ………

 そんなことを考えながら歩いて(?)、いたんだけど。ここで気付いてしまった。


 「……畑ばっかだね」

 「……ですね」

 「……場所、変える?」

 「……はい………」


※               ※               ※

 うん。あれからいろいろ回ったのはいいんだけれど。


 「結局市場と冒険者ギルドくらいしか行くところないね」

 「ないですね……市場は早い時間に終わってしまいますし………」


 そうなんだよね。いろいろなものが並ぶから市場は時間をつぶせるところではあったんだけど、お昼をちょっと過ぎたら大体売り切れて閉まっちゃうんだよね。だからお昼を過ぎてからが一番の悩みどころなんだけど。


 「依頼とか見てみる?なんかできるものがあるかもしれないし」

 「そうですね、それしかなさそうですし………」


 流石にカトレアも困り気味だった。不幸中の幸いだったのは冒険者ギルドがあることくらいかな?かなり小さめの建物だったけど。まあ、人があんまり訪れないからこんなに小さくても大丈夫なのかもしれないけど。


 「これは……その、何と言いますか………」

 「ぼろぼろ?あ、でも掃除してあるからまだ綺麗に見えなくもないかな?」

 「……ユート様。そういうことは思っていても口にしてはいけませんよ?」

 「そうなの?わかった」

 「はい……本当にわかっていてくれると嬉しいんですが………」

 「?どういうこと?」

 「なんでもありません。とりあえず今ある依頼を確認しましょうか」

 

 そう言って、依頼が貼ってあるボードを見てみたんだけどやっぱり文字が読めないから意味ないよね。習った方がいいのかなあ?


 「どう?何かありそう?」

 「いえ……あまりいいものはないようです。どうやら村の人の手伝いがほとんどのようですね」

 「そうなんだ。例えば?」

 「……畑仕事だったり、荷物の積み込みだったりです」

 「畑仕事とかならできそうだけど………」

 「無理です。絶対に無理です」

 「そうかな?」

 「そうです」

 「じゃあ仕方ないか。どうしようか?」


 二人揃って首をひねっていると………


 「……ユート様?」

 「何?」

 

 僕の名前を呼ばれた気がするので振り返ってみる。するとそこにいたのは………


 「シルヴィアさん?どうしてここに?」

 「ユート様こそ何故ここに?」


 二人してそんな声を出したのだった。

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