野宿をしよう
なかなか執筆が進まない……
「つまり君は魔法が使えて、尚且つこの魔物の主人ということなんだね?」
「主人、っていうのはちょっと違うかな?それはクロが勝手に言ってるだけで、僕は友達だと思ってるよ」
「そうか。君はどうやら優しい子のようだね」
「そう、かな?」
「そうだね。君たちのところに来る前に、他の二組にも挨拶をしに行ったんだけれど酷い対応でね。それでアーネストがむくれているのさ」
「……別にむくれてなんかない」
「ふふ、そうかい。まあ、私たちは女のみのメンバーだからね。下に見られるのも無理はないのかもしれない。そういうことがあったからこそ、こうしてちゃんと対応してくれることはこちらとしても嬉しい」
「そっか、それはよかったよ」
「ところで失礼かもしれないが、君はどうしてその子と旅を?」
「うーんとね……追い出されたから、かな。偶々カトレアも一緒に追い出されたから、そのまま一緒にって感じかな」
「なるほど、どこをとは聞かないでおこう。カトレアさんもそれで間違いないのかな?もし違うというのであれば、素直に言ってもらえると助かるのだけれど」
「いえ、先程の説明で合っていますよ。勿論、無理矢理言わされているわけでもないです。むしろ獣人だから迷惑を掛けてばかりだと思います………」
「え?そんなことないけど?それを言うなら僕の方が迷惑を掛けてるんじゃないかなあ?」
「どうやら私が疑い過ぎだったようだね。すまない」
「いや、別にいいんだけど……何を疑ってたの?」
「ユート様……もうわかってはいましたけど………すみません、私が後で説明しておきます」
「いやいや、人を純粋に信じられているのは凄いことだと思うよ。その気持ちを忘れないでくれると嬉しいしね」
「ところでこの後どうしようか?護衛なんだから見張りをするんだよね?」
「そうですね、ではここは………」
「僕がやるよ。あんまり眠くないし」
「ええ!?大丈夫なんですか!?」
「……酷くない、その反応?それにクロも一緒にしてくれるみたいだし」
「まあ、それなら………」
カトレアが酷い。全く僕を信じてくれない。
「なら、私たちも手伝おう。二組でやった方が効率もいいだろうからね」
「いいの?ありがとう」
「先程の発言のこともあるしいいさ。二人とも、構わないかな」
「別にいいけど」
「私も構わないですよ」
「では、よろしく頼む。順番はいつもの通りアーネスト、アリス、私の順だ。そちらはどうするのかな?」
「僕がやって、カトレアが寝るのでいいんじゃないかな?」
「それは……大丈夫なのかい?」
「だってここに来るまでに結構寝ちゃってたし、カトレアに悪いなって思うし。明日、また馬車の中で寝てれば大丈夫だと思うよ?」
「ええっと……無理そうでしたら起こしてくださいね、クロさん」
「いいだろう」
「……僕ってそんなに信用ないのかな?」
これだけ否定されると悲しくなっちゃう。少しは信じてくれてもいいのに。
「二人は本当に仲がいいんだね」
「そうかなあ?どう考えてもからかってるだけだと思うんだけど」
「いやいや、普通はそんな風にふざけ合えないものさ。特に大人になるにつれてね。それに加えて、こう言っては何だが彼女は獣人だ。尚更そんな仲ではいられないものなんだよ」
「そうなんだ。大人って面倒なんだねえ」
「ああ、本当にそう思うよ。さて、後のこともあるし私とアリスは寝させてもらおう。頼んでもいいかなユート君、アーネスト?」
「うん、任せて」
「わかった」
「そうか、ではおやすみ」
「ユート様、休ませていただきます」
「うん、ゆっくり休んでね」
「はい、わかりました」
僕とアーネストさん以外皆寝ちゃった。早いものでシンシアさんとアリスさんに至ってはもう寝息を立てている。
「……あんた、どういうつもり?」
「え?何が?」
見張りに集中しようとしたらアーネストさんに話しかけられちゃった。それにしても何のことなんだろう?
「惚けないで。あんたがどんな目的を持ってるかわからないけど、不審過ぎるのよ」
「って言うと?」
「あたしたちは女だけで構成されたパーティーだから舐められることが多い。大体どいつもこいつも『女だから』って付けるわけ。たまにそうじゃないやつもいるけどそいつらだってろくなやつはいない。あんただってそうなんでしょ?何を企んでるの?」
静かだけど有無を言わせないような口調。それにしても困ったなあ。どう説明したらいいものなんだろ?
「うーんとね、別に何も企んではいないよ?」
「嘘をつかないで。男なんて全員………」
「だって企むも何も記憶がないんだからどうしようもないんだよ」
「え?それってどういう………」
「記憶喪失でさ、昔のこと何も思い出せないんだ。それに頭がいいわけでもないし、運動ができるわけでもないから追い出されちゃったんだ。もういらないから出てけ、ってさ」
「ちょっと待ちなさい。なんでそれで平気でいられるの?それが本当だとすれば怒るところでしょ」
「怒るっていうのがどういうことかもわからないんだ。カトレアが前に言ってたけど迷子みたいなんだって、僕。もしかしたら記憶をなくす前はこんなんじゃなかったのかもしれないけど」
そう言うとそれっきりアーネストさんは黙り込んでしまった。何か変なこと言っちゃったのかなと首をひねりながら、アリスさんが起きるまで静寂の中で見張りを続けるのだった。
誠に勝手ながらしばらく休止させていただきます。たぶんその間もう一つの作品を進めているので興味を持たれた方は読んでいただけると幸いです。